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また戦いは始まる

あれから俺はニーナと一言も会話せずに大会の日を迎えてしまっていた。


ニーナのやつ、大丈夫だろうか。


俺はニーナの試合を観戦すべく、モニタールームへと向かった。


歩いていると数名の教師達も試合を見るようでその部屋に向かっていることがわかった。


その部屋の手前でニアが待っていた。


こちらに気づくと光のような笑顔をこちらに向けて、手を振り駆けてくる。


俺もそれに合わせて手を挙げた。


「もう始まっちゃったか?」


「まだ。でももうすぐみたいだから早く!」


俺はニアに急かされ、部屋に入る。


中には学園長を中心に5、6人が半円を描き、何かを覗いていた。


彼らの円の中心には石の大きな器のようなものに水が入れられたものがあり、全体的に祭壇のような造りをしていた。


学園長以外の職員は皆こちらを煙たそうに睨む。


そして学園長は口を開く。


「本来なら私以外、女性の立ち入りが禁止されている場所なのですが、娘があなたには大変尽力していただいた、との申し出があったので許可しました。ところで、ニア先生はなぜ?」


「わ、わたしは......そのー.....」


ニアの目が泳ぐ。


「彼女は私のサポートを色々してくれました。ここに入る権利はあると思います。」


するとすかさず、他の教職員が口をはさむ。


「権利どうこうはあなたが決めるものではない。あくまで学園長が」


「いいでしょう。今回は特別に認めます。」


「しかし.......っ!」


「ありがとうございます」


俺とニアは頭を下げた。


俺たちは祭壇に歩み寄る。


そこには薄く水が張られており、中には魔力を送ると光を放つ単純な魔道具が設置させれていた。


「これでどうやって試合観戦を?」


「ここに千里眼系の魔法で映像投影をします。」


なるほどね。だからスクリーン替わりに水が貼ってあるのか。


「それではこれより投影魔法を使用する。」


学園長は短めの詠唱を唱えた後、水面に手をかざす。


すると水面に映像が写し出された。


そこにはニーナと仲間の姿があった。


どうやら魔法は成功したようだ。


「対戦相手は?」


俺はそっとニアに耳打ちする。


「名門ね。過去何度か優勝経験があるわ。」


「まじか......。」


会場内は薄暗く、ドーム状になっていてフィールドを中心に周りには観客席があった。


そして軍が統括しているとあって、武装した軍人らしき人々が定位置に配置されていた。


そこで気になったのは観客席に座っているのがみな男性というところだった。


「なんで男しかいないんだ?」


「それは.......こういう正式な場では王族以外は女性禁制なのよ。」


「は?」


こんな所までにもそんな縛りがあるのよかよ...。


「今回、ニーナさんが出れたのだって信じられないことなんだから。ま、学園長の娘さんだから何だろうけどね。」


言っちゃ悪いが、コネ、みたいなものか。


ニーナは緊張しているようで終始ぎこちなく動いていた。


その様子がなんだか新鮮だった。


あれから、脳内構築魔法を習得できたのだろうか。俺はそのことが頭が離れていなかった。


いくら基礎を教えたからと言ってあの短期間でできるようになったとは思えんが.......。


それからしばらくしてから開会式を行った後、第一試合が始まろうとしていた。


この試合でニーナのチームが対戦する。


「こっちまで緊張してくるなぁ.......。」


俺がそわそわしていると選手がフィールドに入場し始めた。


どうやら3人1組で対戦するらしい。


ニーナの他のふたりはどちらも眼鏡をかけており、魔導書を片手に持つという古風な風貌をしていた。


対する相手は三人ともガタイが良く、魔道具もなしという非常に好戦的な様子が伺えた。


今更だがこれに明確なルールとかあるのだろうか。


「なあ、これってルールとかあるのか?」


「あるわよ。ただ本当に基本的なことね。殺傷能力の高い魔法とかは当然禁止だし。不正行為が発覚した場合も即失格。」


まあ概ね予想ができるルールだな....。


そうこうしているうちに対戦が始まった。


相手は試合が始まるや否や二人が特攻、一人が詠唱を唱えるという構図をとっていた。


大してこちらはニーナが二人をサポートとしつつ、魔導書を使用する隙を作るというスタンスをとっていた。


基本的に魔導書は使うまでの隙がでかく、サポートが重要になってくるが、それをニーナ一人に任せるのは些か無茶な気がした。


ニーナ一人の能力を大幅に超えている。


そんな不安がよぎる中、さっそくそれが的中する。


魔導書を持っていた二人のうち一人が突然その場に倒れ込んだのだ。


「これは一体.....。」


部屋の中はざわつく。


「どうやら、敵には幻術系統の魔法を操れる者がいるらしいですね。」


学園長が冷静に見抜く。


「幻術!?」


一同騒然とする。


確かに注視すると魔法によるエフェクトのようなものが微かに見える。


「厄介だな......。」


幻術系の魔法は主に脳や皮膚などの感覚神経に影響を及ぼすように作られたもので本来、使うのなら相当な時間がかかるはずなんだが......。


そして息つく間もなく先に飛び出てきた二人が攻撃魔法を仕掛ける。


どうやら、使うのは身体能力を強化する魔法らしい。


ニーナのチームの魔導書を持つ二人のうち一人は既に戦闘不能に近い状態だった。


そのため、ニーナはもう一人を守るのに全力を注ぐ。


強化された拳の連打がニーナを襲う。


打ち出される拳も単なる力技ではなく、前にイヨが使ったような強化魔法で包まれたものだった。


ニーナは近距離で二人を相手しつつ、同時に奥に待機しているもう一人にも気を配るという普通なら考えらないことをやってのけていた。


「素晴らしい立ち回りですね。やはり学園長の娘さんだけの事はある。」


「・・・・・・。」


半ば、接待じみたそんな言葉に学園長は無反応だった。


ただ水面を見下ろすのみ。


その目には冷たい何かが宿っているような気がした。


それからもしばらく、相手の猛攻は続いた。


ニーナは仲間に魔導書を使う隙を与えつつも、攻撃をかわし、さらに奥にいる敵の詠唱魔法の妨害も忘れていなかった。


まさに完璧なまでの対応。


しかし、俺は何故か無性に胸騒ぎがしていた。


悪寒のようなものが体を走り抜ける。


なぜだろうか。


どこかがおかしい気がした。


一見して、ニーナが猛攻に耐えながらも相手に攻撃を仕掛け、結果的に戦いが拮抗しているように見えるが.......。


ならなぜ、試合が始まってすぐに一人に幻術をかけることに成功しているんだろうか。そんな隙がどこに...。


相手の方が何枚も上手だったということか?


俺はそんな掴みどころのない不安を押し殺しつつ、試合観戦を続けた。


膠着状態が続いていた中でようやく試合に動きが出た。


相手のチームの一人が魔力欠乏を起こしているような素振りを一瞬見せたのだ。


目の焦点が合わず、ふらつく様なそんな素振り。


それは誤魔化そうとしても見る人から見れば、一目瞭然だった。


こうなれば、不利な状態も打破ができるかもしれない。


そんな光が見えた時だった。


突如、会場内が暗転した。


俺が状況を認識しようとする間にすぐさま、こちらの水面の映像も消えた。


「これはいったい.......。」


そんな声がどこからか上がった。







読んでいただきありがとうございました!

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