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寝ている間の状況変化

俺はギルやニアとともに歩く。


「それでなんのため呼び出しょうかね。」


俺は答えがわかった上で聞いてみた。


「自分の胸に聞いてみなさい。」


やっぱり、解雇命令か.........。


「でもアルフ先生が無事で本当良かったですよ。」


「まああなたのせいで仕事がまた増えましたがね。優秀な生徒を助けてくれたことは感謝しましょう。」


イヨのことは一応認めてくれているらしい。


とりあえず謝っておくか。


「すいませんでしたね、色々と。」


しかし、本当に疲れた。


ブレスレットはあいつが外してくれていたらしい。


今度あったらお礼をしないとな。


ひとつ気がかりだったのはたまにすれ違う生徒を見ても何事もなかったかのように振舞っていたことだ。


あんなことがあったのに何でみんな普通にしてられるんだ?


まるでこんなことが普段から起きているような感じだ。


俺たちは学園長専用の部屋に向かってるらしい。


窓の外に目をやるとあんなにボロボロだった寮が元に戻っていた。


学園長の魔法、か。


思い返せば学園長とやらに俺は一度もあったことがなかった。


だから性別や容姿なんかも全くわからない。


少し怖いな。


しばらく歩いているギルとニアが急に足を止める。


俺はそれに気付かずに少し止まるのが遅れギルにぶつかる。


「ここですよ。そういえば、あなたは入るのが初めてでしたね。」


俺は静かにニアに耳打ちする。


「学園長ってどんなやつなんだ?」


「普通の人よ。」


「普通の人があの魔法を......?」


「それはあくまでも容姿の話よ。なんか昔は国王の補佐官とかやっていたらしいけど。」


「まじかよ。」


なら変な口は聞けないということか。


「ここからは私語は慎むように。」


ギルがドアノブに手をかけ、そう則してきた。


「はいはい。」


俺が答えるのと同時に扉は開かれた。


「失礼します。学園長、お連れしました。」


「ご苦労さま。」


驚いたことに学園長は女性だった。それもかなり若く見える。


こんな男尊女卑がひどい世界での女の学園長とは....。


そしてその隣には副学園長もいた。


「あなたが新任のアルフ先生ね。」


「はい。それで今回はどういったご用件で?農作業ならお教えできますよ、学園長殿。」


どーせ何言ったってクビはクビだ。


この際、好き放題やってやる。


案の定俺の言葉に副学園長は噛み付く。


「おい、貴様!口の利き方に」


「まあ、よい。ギルよ。なかなか面白い教師が入ってきたな。」


「ええ。少し問題もありますがね。」


「それで君への用件だかな、二つほどある。」


「二つ?」


ひとつじゃないのか?


てっきり俺は解雇通知をされて終わりだと思っていたが。


「一つ目は私の結界を破った、男の魔術師を知らないか?」


あー俺のことだな、それは。ここはシラを切ろう。


もしかしたらもうバレてるかも。


「いいえ。まったく。」


「そうか。次に2つ目だが.....。」


結構あっさり終わるな。ということはバレてないのか?


まあ次のは大体察しがつく。


「私の娘に魔法を教えてやってくれないかな?」


「・・・・・・・・は?」


俺は言われた言葉を理解するのに数秒の時間を要した。


「が、学園長!!こんな不届きな輩にご自身の娘さんを託すおつもりですか!?ここは確実に解雇処分が妥当でしょう。」


すかさず副学園長が声を荒らげて主張する。


「彼女のとった行動は確かに多くの生徒を危険に晒したかもしれないが、その代わりにAランクの生徒が助かったではないか。」


「Aランク!?彼女はFランクの問題児ですよ!?」


「ついさっき彼女のランク改訂が行われたのだよ。彼女の魔法力は極めて優れたものだった。なあギルよ?」


「はい。とても悔しいですが、彼女はうちのクラスでは1番魔法的素質があると言えるでしょう。」


あいつがAランク......?


情報の濁流に俺は飲み込まれていた。


俺が寝ている間にそんなことが?


「とにかく、どうだアルフ先生。受けてくれるかね。」


「はい、俺でよければ。」


「だそうだ。入ってきなさい。ニーナよ。」


するとガチャり、と扉が開く音がする。


俺は振り向き、固まる。


「どーも。初めまして。ニーナ=リードです。」



初めましてと挨拶しているのはさっきまで一緒にいた生徒会の書記と名乗っていたあの女生徒だった。


「お、お前.....。」


「今は初めて会ったということにしておいて下さい。さっきのことがバレてしまいますよ。」


耳元で囁いた彼女はどこかいたずらっぽく笑った後すぐに真面目な顔に戻す。


「これからその子に授業が終わってからで構わないから、魔法を教えてやってくれ。もちろん報酬は出そう。」


「は、はい。」


俺の脳の処理速度はまったく追いつかない。


返事だけが口から零れていく。


どういうことだ?あの子は学園長の娘なのか?


ならなぜ結界を破ったことを自分の母親に申告しない?


周りの時間は俺が理解するのを待ってくれない。


「アルフ先生。アルフ先生!」


「???」


目の前には不思議そうにこちらをのぞき込むニアがいた。


「いつまで立ってるのよ。もう行きましょ。」


「さっきの子は?」


「さっきのってあの書記の人?あの子ならもうとっくに部屋を出てどこかに行っちゃったわよ。」


「そ、そうか。」


教え子がまた一人増えてしまった。


俺は眼前の疑問を解消できないまま、寮へと帰った。



♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢





はぁ。あの子は一体何者で何が目的なのだろう。


雲谷のような不安は心を濁し続けていた。


分からないことが多すぎる。


そしてさらに気になるものが目の前に置かれていることに気づくのに遅れたのもその不安のせいかもしれない。


「おい、レーネ。なんで全部スッポン料理なんだ?それに飲み物だってなんか毒々しい色してるし。」


ゴミ箱には『滋養強壮 精力増強』と商品の歌文句がそのまま書かれた空き瓶が大量に詰まっていた。


「特に深い意味はございません。」


「いや、むしろ深い意味以外に何があんだよ!」


「大丈夫です。私は今日危険日なので。」


「全然、大丈夫じゃねえよ、ていうか聞いてねぇし!」


レーネは料理を無理矢理にでも俺に食べさせるらしい。


「あーーーん。」


無表情のまま、口にスプーンを押し付ける。


まあせっかく作ってくれたわけだし食うか。


それに今は女になってるせいで全然そういう気持ちにもならないしね?だから獣姦などという恐ろしい言葉が出てくる心配もないのだ。


一口、また一口と料理を口へと運ぶ。


味は見た目に反してとても美味しかった。


「おい、分かってると思うがいくら食べさせてもお前が期待してるようなことは何も起きないぞ。なにせ今俺は女だからな!」


レーネは少しここ緩ませる。


「ふふふ。あのブレスレットをお忘れですか?」


「あ」


俺は記憶を辿る。


確かあれはあの事件以来、イヨに返すタイミングがなくてずっと保管していたんだった。


まさかあれを使うつもりじゃ......。


「あれを付ければ、あれも付きますよね?」


可愛い顔してとんでもないことを言いよる....このメイドは。


「絶対に俺は付けないぞ?付けられるものなら付けてみろってもんだ。」


「ご主人様が女体の時は力関係が反転することを失念されてるようですね。」


「え?.....................アッーーーー!」


俺は次の瞬間、拘束魔法で体を椅子に縛り付けられていた。


「ふっふっふ。」


ジリジリとブレスレットを持ってにじり寄ってくるレーネはいつでも殺せる獲物を見つめている猫そのものだった。


「おい、よせ!今すぐ拘束を解くんだ!!」


「さあ、ひとつになりましょう!!」


そしてレーネは俺の手を掴む。


ゆっくりと手の感触と体温が伝わってくる。


やばい。凄まじいデジャブを感じる。


このままでは俺の腹の中のスッポンが暴れだしてついでに別のものも暴れ出させてしまう。


犯される............!!!!


そこで文字通り救いの鐘が鳴る。


それはインターホンだ。


インターホンは一度押されたあと、応答がないことを確認して激しく連打される。


一回目は気にも止めず、レーネは行動し続けていたが2回目以降は流石に痺れを切らし、扉の前までいく。


その手には包丁らしきものが握られていた。


スポンの血と思われるものが床に滴り落ちる。


「ちょっと待って!!悲しみの向こうへ行きそうだからやめて!!それを置いて。」


「私たちの性の行為を邪魔するものを私が許すとでも?」


「いや、性の行為ってなんだよ!てかその言い方やめろ!」


そこまで辛うじてまだいってねーよ!!!



「ヤメロォォォォォォォォォォォォォオ!!!!」


レーネは俺の言葉など毛ほども気にせず、扉を開ける



そこにはニーナが笑顔で立っていた。




読んでいただきありがとうございました!

感想等頂けると嬉しいです。

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