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独り身の俺も女の子と同居できたけど相手はギャルだった  作者: 原作/秋華(twitter/@ashuuka)、イラスト/上崎よつば(twitter/@yotuba_mokoh )
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1話 叶えたい夢を見つけた

挿絵(By みてみん)


誰にだって偏見ってものはある。


俺にとっての理想のヒロインは黒い髪のサラサラロングヘアで、限りなくすっぴんに近いナチュラルメイクで、童顔で、細くてたまに縞パンが見えちゃうような…


「あー!!!そんなのもうやり尽くしたんだよ…

 何か斬新なネタがないと、絵師が溢れかえる世の中で生き残っていけねぇよ…」


俺は

絵師として同人活動をしている。

名前はおくま。


「あんまり俺は好きじゃねーけど、ヤンキー路線のヒロイン出してくかなー」



電話がくる


大手壁サークルの先輩からだった。


「あーもしもし、お前今暇か?少し飲みに付き合えよ!!!おごってやるからさ!!!」


「は、はぁ…」


部屋に引きこもっていても仕方ないと思い、俺は外出することにした。


先輩と駅で待ち合わせをする。


「おー!!!!おくま!!!こっちこっち!!!」


そうして駅から少し歩いた飲み屋街へ。


キャバクラに連れてこられた。


「キャバクラって…!!!

 俺のイメージだとギャルの聖地!!!

 ここなら俺の求めていたキャラに近い人材が!!?」


って…あれ?


店を見てみると、黒髪や焦げ茶ぐらいの茶髪ばかり。

髪の毛はいじってる…のか?

一応あれは巻き髪?

…といっても、OLとかがしてそうなゆる巻きの部類で、あれって、キャバ嬢の思い描いてたイメージとちょっと違う…ような


「なんか俺のイメージしてたキャバ嬢と違う方が多い気がするんですが先輩…」


「なーにいってんだよ!お前、まさか髪の毛巻き巻きのコッテコテの金髪ギャル?あんなのいると思ってたか!!?

 あんなの時代遅れだっつの!!!

 最近のキャバクラは、流行りは清楚系だって謳い文句だぜ?」


「へー…そうなんすね…」


なんだー。ネタ探しにはならねーかな。

まあ、奢りならいいか。


…ん?


「あっ、待ってください…

 先輩、あの子は…?」


金髪ロングヘア。

巻き髪。

濃いアイメイク。

胸を強調したドレス。

色が付いた長い爪。

いかにもって感じのギャルが一人居た…。



「あー…あいつね。

 あいつは例外。一人だけコテコテ貫いてるらいけど、本当礼儀もないし、面倒な客ばっかり押し付けられてる噂だぜー。

 まぁ一応ナンバー2らしいけど、客を選んでないぶん数が多いだけなんだろうなー。まぁフリーで入ってもあいつなら話せると思うぜ?」


「ふーん」


なんだかんだで先輩の言う通り、フリーで入った。

「はじめまして。りんかです。先生がお友達を連れてくるなんて珍しいですね。」


先輩の指名しているりんかさん。

黒髪で、ゆる巻きロングヘア。

メイクは一応してるけど、ナチュラルメイクの美人さんだった。

あぁー。これでナンバー1。これなら、座っているだけでも絵になるなー。

お金を出したい男がいくら居ても納得と言うんだろうか。


「りんかちゃんはなー現役大学生で、学費が払えなくてキャバクラで働いてるんだぜ!!!

親にも仕送りしてるし、こんな真面目ないい子今時いねぇよなー」


「先生、恥ずかしいです。

私は当然のことをしているだけですよ。

そんなことより、せっかく飲みにきたんだし、今日も色々お話聞かせてくださいね。」


なんてゆうか、、、りんかさん、男のツボをついてるなぁー。

聞き上手な女の人ってモテるもんな…。


俺の横にも代わる代わる女の子が席に座った。

うーん、これがキャバクラかー。

でも、みんなうんうんって聞くばっかりでつまんねぇー。

自己紹介して、何歳ですか?

って。

こんなことに金使うのか、世の中の男は。

これなら声優のコンサートのシリアルナンバーの為にCD何枚も買った方がよくね?

まぁそんな話ここでしてもヲタクキモいって言われるんだろうから言わないけど…。


あーつまらん


「先輩、俺…」


帰っていいですか?

と言おうとした。

その時


「はじめまして!!!ゆのでーす!!!

 あれっ?おにいさんどうしたの?トイレ?」


少し低めの声だった。

見上げると、さっきの、金髪ギャル。



「あ、さっきの…」


「んっ?なに?」


「い、いや…別に」


「どしたー!?

 へんな人だなー!!!」


あれ?こいつ急にタメ口?

ほかの女の子と全然違うっつか、なんかこれってキャバクラのマナー的にはありなのか…?

まぁ、俺はタメ口でも別に気にしないけど…。


「ねー、なまえなんてゆーの?

 アタシに名乗らせときながら無言ってー!!!

 アタシ喉乾いちゃったーあ」


ゆのと名乗る女はどかっと椅子に持たれかかる。

あ、あのー。

目の前のりんかさん、ものすごーく姿勢正して敬語で話してるのに…


なんかこの、ゆのって子、こわい…www



「おにーさん、飲みにきてんだからさーなんかしゃべったらぁ?」


そのギャルはグイッと顔を近づける。


ってゆうか距離近いし!!!

目元の化粧ケバ!!!

なんだよこれまつげ何枚重ねてんだよ!!!

目の色が灰色だし!!!


でも意外とこいつ、元は悪くない?

肌は綺麗だし、口元と鼻が整ってる…


い…いや、目元はどのみち、原型なんてどうなってるのかわからないぐらいに色々てんこ盛りになってますが…


挿絵(By みてみん)


ってゆうか服も露出しすぎでしょ…

目のやり場に困ります…


「お、俺の名前は、おくま…

 えっと、職業は漫画…、」


を、目指してる絵師。

なーんて話しても、このタイプの子にはわからんだろうなとここで口をふさぐ。

というか、俺のせめてものプライドもあり、言えなかった。


「漫画家?!

 へー!すごいんじゃん?

 じゃあアタシ、先生って呼ぶー。

 アタシのことはゆのちんとか、ゆのでいーよ!」


先生って言われた。

俺、一応同人では食い繋いでるし、先生って言われてるけど、セミプロレベルなのになー、、、


なんか騙してるようで申し訳ない気持ち。


「ゆのちゃん、いきなり飲ませてくれなんて、失礼でしょ。

でもゆのちゃんも喉が渇いたって言ってるし、いただいてもいい?」


りんかさんが口を開いた。


「まぁー、りんかちゃんがそう言うなら、仕方ねぇなー

 ゆのも一緒にいいぞー」


そして先輩からの許し。


「やったー!ありがとー!」


な、なんて図々しい…

でもこのゆのって子、人気なんだな、一応。


「信じられない、こんなガサツなギャルが」


思わず言葉に出てしまった。

ゆのは、ゲラゲラと笑う。


「はははっ!言われ慣れてるけどさー。

 先生、なんか面白いね!!!

 アタシ先生のこと気に入った!」


なんだこれ。

よくあるキャバ嬢の色恋営業ってやつ?

それにしても色気を微塵も感じないんだが…


「先生!アタシもっと先生と話したいしさー、またよかったらアタシのこと呼んでね!

これ連絡先!

アタシ今日は忙しくって少ししかフリーの人と話せないからさー!

じゃーね!」


あっ…

飲むだけ飲んでどっか行きやがった…

なんだあの子…


って…エッッ!!?


ゆのが戻って行くお客さんの方を見ると、ヤクザのような人の隣にゆのが座っている…


やっぱりああいう世界なのか…

あの手の子は、枕営業とかしてるのかなー…

なんかこわくなってきたよ、俺…


でも、あの子と話してるお客さんはみんな楽しそうだ。

俺は少し興味があった。


「先輩、俺、自分で金払うんで、指名ってのやってみていいですか?」


「いいけどお前、もう時間終わるぞー」


先輩から言われたけど、気にせずゆのを指名した。


「先生!指名ありがとー!

 ヘヘッ先生みたいな人久しぶりだし、うれしいなー」


ゆのは、ずっと笑ってる。

本心なのかなー。


「別に。お前のお客さんってこわそうな人多いのに、お前と話してる時はすげー楽しそうだなって思ったから。

 俺も少し、お前と関わると楽しめるのかなーって。」


「はははっよく言われるよ、厄介者の回しモンって!!!

 まぁ、アタシのこと気にいるなんてモノ好きだしねっ!!!

 アタシも自分のこと気に入ってくれる奴のことは好きだよ!みんな同じ度合いにねっ!!!」


みんな同じ度合いって…キャバ嬢って、あなたが一番だよとかお世辞でも言うもんだろ…

何言ってんだこいつ…


「ねぇ!先生、タバコ吸っていい?」


おいっ!!!

自由人か!!!


「ゆの…ちゃんだっけ」


「ゆのでいーよ!!!」


「ゆの…は、将来のこととか考えてないの?」


「えっ?将来???

 なーに言ってんの!今を楽しむしかないでしょー。

 学歴とかースキル???とかー。

 そーゆーの全然持ち合わせてないアタシでも、稼げる業界で、稼げるのは今の若い頃だけなんだし。

 将来なんて、今は考えられないよ」


「えっと、いくつなの?学歴って、高卒でしょ。高卒でも就職ぐらいできたんじゃないの。」


「18だよ?中卒だし、高校いってない。」


はっ!?

18でタバコと酒…

なんだって!!!?

これが噂のDQNってやつなのか!?

高校行ってないとかマジかよ…考えられねぇ…


「あっ!先生がいい人そうだし、思わず本当のこと言っちゃったよー。

 アタシ店ではハタチって言ってるし、内緒だよー!

 はははっ!」


笑い事じゃねぇ…


「アタシにそんなこと言いながらさー、先生だって、まだプロの漫画家じゃないんでしょ?」


ギクッ

バレてたのか…


「えっと、よくわからないけど、下積み時代ってやつ???

 当たりじゃない!?」


「まぁ、そんなとこかな。

 金持ってないのかなって、ガッカリした?」


なんとなーく、興味本位で聞いてみた。


「ううん、アタシのお客さん、売れないバンドマンとか、出世したくてもなかなかできないフツーのサラリーマンとか、ギリギリの経営でバーやってる人とか、いっぱい居るよ。

 男の人はそーゆー下積みって誰でも人生で一度はしてるからさ。

 アタシは無価値だと思わないよ。

 そんな状態でもアタシが働いてる姿、見に来てくれるのは嬉しいよ」


営業トークなのかなって思いつつ、なんか嬉しくなってしまった。


いかんいかん。

相手はプロのキャバ嬢だし、騙されるなと。

まーこいつは頭もそんなによくなさそうだしあんまり考えて話してなさそうではある。


「まー先生みたいなヲタクは初めてかも!しゃべるの!

 ホラー。アタシ、ヲタクには嫌われやすいんだよねー。

 クソビッチって言われるしさー。

 言われ慣れてるから気にしてないけどさ」


たしかに俺の絵師仲間に君のこと見せたらクソビッチって言うかもしれない、、、

って心の中でつぶやいておいた。


「まもなくお時間になります」


黒服がお会計にくる。


「ゆのちゃん、そろそろ先生達送るからね。」


「ハーイ、りんかさん。

 先生、いつでも連絡して!

 アタシ昼には起きてるからねーっ!!!」


見送りをされて、その日は終わった。


帰りは先輩と途中まで帰り道は一緒だったので、二人でタクシーで帰った。

タクシーの中で携帯を見ると、ゆのからメッセージがきていた。


『おくま先生、今日はありがとう!先生にまた会えたら嬉しいな。


 アタシの知らない世界をたくさんこれから教えてほしいです。』


「ふーん。あいつ、漫画に興味でもあるのかな。」


俺はポロっと言葉を零した。


すると隣に居る先輩は、ニヤニヤ笑いながら携帯を覗いてきた。


「お前なー。こんなもん、営業トークに決まってんだろ!!!

 本気にしてどうするんだよ。

 それにあのゆのってギャルはな、枕営業の噂とかひどいからハマるのはやめておけ。

 痛い目見るのは目に見えるな。」


そうか。

たしかに営業トークと言われたら、そうかもしれない。


「あいつはあんなチャラチャラ見た目でも一応ナンバー入りした人気キャバ嬢なんだ。

 騙されないように気をつけろよ。」


「は、はぁ…」


先輩があまりゆののことを良く言ってないので俺はその場でゆののメッセージに返事はしなかった。

そして帰ったらそのまま寝てしまった。


ーーーーーー


朝起きて、早朝から仕事へ行く。

そして夕方には仕事を終えて原稿を描く。

これが俺の平日だ。


ゆのからはあれから毎日メッセージが来た。

まぁ、キャバ嬢のコピペ営業みたいなもんだろう。

そう思ってた。


でもそんなある日、作業中にゆのから電話がかかってきた。

俺がなかなかお客さんにならなくてしびれを切らしたのかな?

と思った。

また先輩に連れて行かれた時に自腹で指名してやろうぐらいには思ってたけど、ずっと無視は向こうも気にしてしまったんだろうか。いきなり電話なんて、どうしたんだろう?と思い、電話に出てみることにした。


「もしもし」


「あー!先生!電話出てくれた!

ずっと無視されてて、アタシ不安になったしー。

やっぱり馴れ馴れしくしすぎたかってー。」


俺が電話に出るとゆのは少し拗ねた言い方で答えた。


「あーごめん。先輩にまた連れて行ってもらったら指名しようかな、ぐらいに思ってた。

 キャバ嬢って、金使わないのに連絡されるの嫌だろうなと思って。」


てきとーな言い訳も付け加えておいた。


「なにそれー!アタシ、先生のこと気に入ったって話したじゃん!!!

 アタシって信用ないんだねー!」


「キャバ嬢って時点で信用されるのは難しい問題だろ。」


あっ、しまった!先輩にゆのの悪い話を聞かされて煽られたのもあり、つい本音が出てしまった。


「はぁー?」


「ごめん。ところで何か用?」


「先生、今何してんの???」


「今新しい漫画のネタ考えてたところ。」


「へぇー!でも電話に出れるってことは暇なんだ???」


えー…

まぁ、たしかにアイデア出しにかなり今悩んでたけど…

暇って言ってしまうと俺のプライドが。


「ははっ!図星かな!

 先生、アタシね、今日同伴予定だったけどなんかドタキャンされちゃったのー。

 先生よかったらご飯でも連れて行ってよ!アタシ出勤まで暇になっちゃった!」


「えー、俺、作業中なのに」


せめてもの抵抗をしてみたが、ゆのはお構いなしだった。


「もう!どうせ電話出れるぐらい暇なんだし、作業進まないんなら部屋から出てきなって!

 じゃあ!!!18時に●●駅の噴水前で待ち合わせね!」


「アッー!」


プッと、一方的に電話を切られてしまった。

勝手だなー。と思いつつも、俺が行かなかったらずっと一人で外で待ってるのかな。

と思うと可哀想に思えてきて、俺は待ち合わせ場所に向かうことにした。


着替えて準備をして駅にむかう。

そういえば、絵師仲間以外と飯に行くのなんて久々かも。


そして駅前。

ゆのは目立つ格好をしていたので人ゴミに紛れていてもすぐにわかった。


「先生ー!!!」


むこうも俺に気づき手を振ってきた。


胸元の開いた服に、ミニスカート。

細身のコートを着て、高いヒールを履いている。

出勤前とのことで髪型はストレートヘアだが、金髪なので目立つことには変わりなかった。


俺も絵師仲間以外と飯に行くのは久々とは言ったが、まぁ絵師仲間の飲み会にも女の子がチラホラ居ることはよくある。

女性絵師とか居るし。

だから女の子と飯に行くことに慣れていないわけではない。

だけどこんな派手な見た目の女の子を横に並べて歩くのは初めてなので、正直周りの目は気にならないわけではない。

カモみたいに思われてるのかなってのが本音だ。


「先生!どこ行く???」


あっ、そうか。

こいつはキャバ嬢ってことは普段からいいもんばっか食わせてもらってんのかな…

どうしよう、俺、絵師仲間と行ってる焼肉屋とか居酒屋ぐらいしかわかんねーよ…


「あーごめん。俺、普通の焼肉屋か居酒屋ぐらいしか普段行かないんだけど…」


「あっ!いいよいいよ!

 アタシ居酒屋大好き!いこいこ!」


あっ、よかった。


じゃない!こいつ未成年だし居酒屋はまずいだろう。


「いや、焼肉屋にしよう」


ということで焼肉屋に連れて行った。

席に座ってゆのがコートをかける。

上着を脱ぐと余計に露出の激しさが強調されて目のやり場に困った。


「アタシビールとー」


「おい、お前未成年だろうが。

20歳になるまでは酒は禁止。」


お酒を頼もうとしたゆのに、気付いて止める。


「はぁー?」


そしてゆのはタバコに火をつけた。


「はぁー?じゃない。タバコも禁止だぞ」


「はぁー?先生のケチ!!!」


「ケチじゃない。守らないと今日は奢らないし、店行ってやらんからな」


俺がそう言うとゆのは目をパチクリさせた。


「えっ?今日先生のおごりなんだ…?

しかも同伴してくれるんだ?」


「えっ?そのつもりで俺を呼んだんじゃないのか」


「意外ー、てっきり割り勘かと思ったし、ご飯終わったら一人で出勤のつもりだったよー」


えー…。

俺も男としてカッコつけたいから、こんな年下の女の子と飯行って割り勘なんてカッコ悪いことできないし、それにキャバ嬢って割り切ってたし。

他の客にドタキャンされた話聞かされた時点で代わりに来てくれよっておねだりとしか思えなかったんだが。


「まぁでも、先生がそう言ってくれてうれしい!ありがとう!」


「だからお前はウーロン茶な」


「はぁー!!!?」


「はぁー!?じゃない」


顔を膨らませながら渋々ゆのはタバコの火を消す。

意外と素直なんだな。

まぁプロのキャバ嬢なんだし、俺と距離感を近くする為に俺に合わせてるだけなのかも。

俺が見てないところで飲酒喫煙やっちゃうのかなとか色々考えると少し寂しい気持ちになった。


キャバ仲間にあとあと、あのにわか漫画家うざいとか…色々言われるのかな。

隠れてヤニって俺の悪口を言ってるゆのを想像したらヤンキーそのもので少しこわいんだけど、まぁ失礼ながらイメージピッタリっちゃピッタリだ。


注文をして焼肉を食いながら色々話した。


「先生、このお店よくくるの?

 そこまで高くない割においしいね!!!」


こ、こいつ…

そこまで高くないのはあながち間違ってないが、一言余計な奴だ。


「あぁ、絵師仲間と一緒にな。コミマの打ち上げとかによく来るよ。

 人気絵師は焼肉に行くのがデフォだから、人気絵師が一人居ると焼肉屋行こうって流れになるんだよ」


「へぇー。そうなんだ!

 先生も人気絵師になって漫画家にもなるんだ?」


「イラストレーターとしても漫画家としても活躍したいなって思う」


「いいね、先生の夢叶うといいいな。

 アタシ夢とかなかったから。

 先生の夢が叶うことがアタシの夢ってことにしようかな今日からー」


ゆのが楽しそうに話してて、営業トークなんだろうなって思いつつも嬉しかった。


俺が『絵師として漫画家として有名になる夢』を話したのも久々だった。

話したところで否定から入られたりバカにされることが多かったから。

誰かに応援されることって久しぶりかもしれない。


そうして食事が終わると一緒に店に向かった。


「先生、アタシヘアメイクと着替えしてくるから待っててね。」


俺を席に残してゆのじゃない他の女の子が繋ぎで来た。

こういうのをヘルプって言うらしい。

まぁ、初めてキャバに来た時みたいに正直会話はつまんなかった。

ヘルプに来る子ってそんなに美人とか可愛いタイプでもないし。

やっぱりそう考えるとゆのは見た目は可愛い部類だから人気なんだろうなって思った。

俺は好みではないけど。

いや、俺も人のことをとやかく言えるような優れた見た目ではないが。


「先生は漫画家さんなんですか???」


ヘルプの子が俺に聞いて来た。

正直、ゆの以外に漫画の話したい気分じゃないなって思ってしまった。

ゆののことはプロのキャバ嬢って割り切ってるから、営業トークってわかってるけど、さっきの食事で久々に誰かに自分の夢を応援してもらえたから。

だから他の子に聞かれても、土足で入り込まれる気分だった。


「先生!おまたせ!新人の子泣かせてない?!

 先生無愛想だしさー!」


巻き髪になったゆのがタイミングよく戻ってきた。

俺は内心ホッとした。


「あっ!!!

 先生、ありがとうございました。失礼します」


ヘルプの子が戻って行く。


「おかえり、早かったな」


「ただいま!!!

 なんの話してたの???」


「いや、大した話じゃないよ。

 漫画家なんですかって聞かれただけ。

 ただ…」


俺が言いかけてやめると、ゆのがまた顔を近づけてきた。

なんだこいつ、いちいち顔近いな。

でも距離が近いってことは男に抵抗がないってことだよな。

やっぱり枕営業の噂は本当なのかな。


「なに?何かあった?」


俺が色々考えてたらゆのがおかまいなしに聞いてきた。


「いや、今、お前以外に漫画の話したくないって思っただけ。

自分の夢を応援してくれたのはお前が久々だったから。

だから漫画家なんですかって他の子に聞かれて、黙り込んでやり過ごそうって思ってた。

そしたらいいタイミングでお前が現れたから…」


本音を話した。


「ははっ!!!

 先生、アタシが言ったこと営業だって思ってるよね?

 先生が本音で話してくれるからアタシも本音で話そうって思ったんだよ。

 アタシのことは信じていいんだよ。

 こんな、男に酒を作ってお金稼いでるアタシのことを信じろって無理があるかもしれないけどさ」


ゆのは笑顔で話してたけど、どこか寂しそうな様子だった。


「先生、新しい漫画って、どんなものなの?漫画のヒロイン?だっけ。

 どんな女の子?

 やっぱりアタシみたいなチャラチャラした見た目じゃなく、黒髪で二つ結びとかなの?」


「いや、今回の漫画はヤンキー系のギャルをテーマにしようとしてる。

 ちょうど…」


お前みたいな。


言おうとしてまた止める。


「ちょうど?」


「いやなんでもない」


「先生、アタシ、先生の夢が叶うことがアタシの夢って言ったじゃん?

 それに追加したいお願いみたいなことがあるんだけどいい?」


「なに」


「先生がアタシの夢を一緒に探してくれることがアタシのお願い」


…。


あーなるほど。


俺は目が覚めた。

これはキャバ嬢のよくある、私と一緒に夢を見つけてくださいと言い、夢のために必要な資金がー

とか言い出して貢がされるやつだ!!!

絶対そうだ!!!

完全に騙された。

やっぱりこいつは見た目通りのクソだな…

だめだ、もう真剣に話した自分がバカみたいに思えてきた。


「帰る」


そして俺は黒服を呼び会計を済ます。

とっさに立って出口へ向かう


「えっ?!先生、どうかした?

 アタシ何か先生が嫌がること言った?」


ゆのが慌ててついてくるがおかまいなしに俺は帰った。


俺は帰りのタクシーの中で色々思い出して少し泣いてしまった。

なんだか楽しそうにしてた自分がバカみたいだなって思えた。


「早く帰って寝て忘れよう」


そして俺は速攻で寝た。

こんなことで泣くなんて馬鹿らしいかもしれない。

でも自分の夢を侮辱されたような気分で頭がいっぱいいっぱいで、泣かずにはいられなかった。



翌朝


起き上がるのがつらかった。

頭が痛い。

頭だけじゃなく手足の関節も痛かった。


なんだかおかしい。


そう思い体温計で熱を測ると39度も熱があった。


「今日は有給取って休もう」


会社に電話して休むことにした。

さすがに病院に行こうと思い、財布を漁った。


「あれ?保険証ない…」


財布の中に保険証がなかった。

どこかに落としたんだろうか。


「仕方ない、今日は寝ておくか…」


そう思い布団に入ろうとしたその時


『ピンポーン』


誰か来客か?

今日は宅配便の予定はない。


「先生!あけてよー!先生ー!」


!!!?


びっくりした。

ドアの向こうでゆのの声がした。


「なんであいつが!?」


俺は気だるい身体をなんとか起こして玄関へ向かい、扉を開けた。


「先生!この前ぶり!」


「お前、何しにきたんだよ、なんで俺の家を知ってるんだよ」


冷たく言い放った。


「先生、この前これ、お店に落として行ったじゃん?

 大事なものテキトーに財布に入れちゃだめじゃん。

 財布の中ちゃんと整理しないとー。

 お札取った時に落としたんでしょ!

 なんか考え事でもしてたからきづかなかったんでしょー」


保険証を店に忘れていたらしく、ゆのが保険証の住所を見て届けにきてくれたらしい。


「あー」


「それにしても、こんな平日に家にいるとか、先生ってば絵を書いてる以外は仕事してないの???」


笑いながらゆのが言う。


「今日は熱が出てるんだ。俺は普段漫画を描いてる以外は会社員として働いてる。

 用が済んだなら帰れ」


昨日のこともあって少しゆのに苛立って冷たく当たった。


「あっ!先生!大丈夫!?」


途端に俺は気づかないうちに足が崩れて倒れ込んで意識がなくなっていた。



目がさめると病院のベッドで点滴を打たれていた。


「あ、気がつきました?」


看護婦さんが俺に声をかける。


「風邪をひいたみたいですよ。

 点滴をしておいたので、薬を飲めば治ると思います、若い女の子がタクシーで連れてきてくださったんですよ」


あ、俺。倒れたのか。

ゆのが運んでくれたんだ。

あいつ、こんな時まで同情買うようなことしやがって。

俺は騙されないぞ。

それにしても、知恵熱かな。

もうなんか漫画に対するスランプもあったし、キャバ嬢に騙されそうになるし、色々とついてない。


「先生!目ー覚めた?

 よかったー!風邪ひいたんだね。

 倒れちゃってびっくりしたよー」


ゆのがかけよってきた。


「こらこら、おしゃべりしてもいいけど病院では静かにね」


看護婦はそう言ってカーテンを閉めて俺とゆのを二人きりにした。


俺はゆのの顔を見ると涙が出てきた。

俺の方がこんなやつよりもずっと年上なのに。

カッコ悪すぎる。


「先生、大丈夫?

 アタシ、先生に嫌われるようなことしたかな。

 ごめんね」


「俺はお前が信じられない。

 俺はお前にとってただの客かもしれないけど、俺はお前が俺の夢を応援してくれたことが嬉しかったから、悲しかった」


「先生、アタシのことが信じられない?」


「信じられない、枕営業してる噂だってあるんだろ、お前は男を食い物にしてるんだ」


「アタシ、そんなことしてない」


挿絵(By みてみん)


ゆのは悲しそうな顔をしながら話す。


「先生、アタシの夢を一緒に探してほしいって昨日話したの覚えてる?」


「あぁ。あれでハッキリしたよ。こいつに騙されたって」


「何か誤解してるならごめん。

 アタシ、先生の側で、先生の新しい漫画のヒロインのモデルになりたいって思ったんだ。だから先生と一緒に暮らしたい。

 だめかな」


「はっ?」


な、何を言ってるんだこいつ。

男と一緒に住むってことがどんなことかわかってるのか


「先生、ヤンキーのギャル描きたいって言ってたじゃん、正直先生が調べた程度の知識じゃ、周りの態度は変わらないと思った。

だからアタシと一緒に居ればその漫画は流行るんじゃないのかなって。

あたしがリアルな被写体として先生と一緒に居たいんだ」


いや、お前、一緒に住むって、俺も男なんだぞ。

お前に手を出すとか考えないのか。


「えっと、なんか急にごめん。

 アタシ今、家ないの。

 店の寮に他の女の子と一緒に住んでたんだけど…その子とそりが合わなくなっちゃって。

 出てきたの」


あー。なるほど。

えっとこれは俗に言うヒモになりたいってやつなのか。

ヒモなんて女の子に向けて使う言葉じゃないかもしれないけども。


でも、こいつと一緒なら俺はもしかすると本当に今求めているヒロインが描けるかもしれない。


「わかった」


そうして俺はゆのが一緒にいることを承諾した。


「ほんと!!?

 うれしい!!!

 あっ!家賃とかはちゃんと半分払うから!」


「いや家賃はいいや、そのかわり条件がある」


「えっ?なに?」


「お前をモデルにして漫画を描く。俺はそれを絶対流行らせるから。

 そして漫画をアニメ化まで絶対持っていく。

 だからお前、そうしたらヒロインの声優やれ。

 お前をモデルにして出来上がったヒロインなんだから、中の人まで本物なら絶対面白いってなるから。

 お前、その見た目で誤解されたり中傷されることが多いって言ってたろ。世の中を二人で見返してやろう。

 だから家賃とか払わなくていい。

 お前も俺も売れた時に、お前は出世払いしてくれ」


「えっ?アタシにできるの…?

 アタシ金髪だし、メイクだってこんなんだよ???

 声優さんって黒髪でほとんどすっぴんの人ばっかりじゃん!!!」


「そのまんまのキャラを描くからそれでいいんだよ。

 とにかく新しいことをやり遂げたいから、協力してくれ」


「わ、わかった。がんばってみる」


「あとお前のことは好みじゃないから手を出す心配はしなくていい」


「はぁー?!先生ひどくね!」


点滴が終わると病院を出て、タクシーを拾って帰った。

点滴もして大分楽にはなったが、念のため布団に入った。


「先生、これからよろしくね」


挿絵(By みてみん)


ゆのが急に布団に入ってきた。


「おい!お前なにしてんだ!あと風邪うつるから!」


胸当たってるし。


「平気だよーバカは風邪を引かないって言うし」


まぁあれだ。

こうして俺とこのヒモギャルとの同居生活は始まった。


今後この女が俺の人生を変えるような存在になることを、この時の俺は考えもしなかった。


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