表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*妖しく薔薇は咲き乱れる*  作者: ミケ~またバラ
2/6

*02話 薔薇の誕生



 「見つかってよかったあ。」


 ピンクのブリブリ(注・フリフリではない)のドレスを着た女性は、嬉しそうに微笑むと玉座の方に近づいてきた。


 「王妃さま……」


 後ろを振り返って呟くと、跪づいていた銀髪の青年は立ち上がった。玉座の青年に女性の姿が見えるように体を横向きにしてずらした。


 「なぜ、まだいるのだ?そなたにはとっくに王宮から出るように申しつけたはずだが……」


 「えーっ、だって一人じゃ困るんだもの。鍵を開けてくれないと宝物庫から宝を持ち出せないし、宝を運んでくれる人が必要だし、色々世話してくれる人がいないとね。みんな、わたしの事が好きだったでしょ。一緒に逃げましょうよ」


 眉根を寄せて訝しげに尋ねた金髪の青年に、桃色髪の女性は肩をすくめて答えると、青年達に大きな声で誘いかけた。


 「みんなー、宝物庫に一緒に来てー」


 「宝石類はたくさん持っていたはずだ。それでは足りず、宝物庫から金目の物を持ち出そうとしているのか。まだ、余らを利用できると思っているのか」


 女性のすぐ後に金髪の青年が声を荒げてそう言うと、女性は首を傾げて不思議そうな顔をした。


 「何か怒ってるの?だって、みんなで仲良く暮らすためにはお金がいるでしょ。わたしの言うこと聞いてくれるよね?わたしといたいよね?わたしの事が好きなんだよね?」


 「好きじゃありませんよ。。あなたに皆がチヤホヤしたのは、少し怖いところもありましたが、とても優秀な私の姉と陛下の婚約を破棄するためですから。国のためにならない人に王妃になって欲しかったんです」


 金髪の青年が答える前に、黄髪の青年が立ち上がって桃色髪の女性にキッパリと言い放つ。


 「好きなわけがない。あの方はあなたと違って、美しく聡明でおまけに陛下を本当に愛していた。国のためになる賢い王妃はいらなかったから、あなたを利用しただけだ。愚かな王妃を迎えただけで、ここまで国を腐らせる事が出来るとは驚いたが」


 黒髪の青年も立ち上がって桃色髪の女性に冷たい視線を浴びせた。


 「好きなわけないよね。きみ、自分がものすご~く愚か者の自覚ないよね。国がダメになるバカな王妃がほしかったから、別にいいんだけどね」


 玉座の傍らに立つ青髪の青年がそう言って、呆れたように肩をすくめてみせた。


 「好きなわけがなかろう。国の事をまるで考えない愚か者で、湯水のように税金を使い国庫すら空にさせるような金遣いの荒い浪費家で、誰にでも足を開く尻軽女を誰が好きになるか。……まあ、陛下と我らに兄弟の繋がりを持たせてはくれたがな」


 青髪の青年の逆側に立つ赤髪の青年も、そう言って桃色髪の女性に蔑んだ視線を向けた。


 「「えっ?!」」


 桃色髪の女性と銀髪の青年の口から、同時に驚いたような声が上がった。


 「ど……」

 「どういう事でしょうか?それは私だけ兄弟になっていないと言う事でしょうか」


 桃色髪の女性が何か言う前に、銀髪の青年が振り返って其々の青年の顔を順番に見つめていく。


 金髪の青年は無言で目を閉じ、他の青年はサッと目を反らす。


 「まっ、まあ、いいでしょう。私の立場では難しいと思われたんでしょうからね。でも、一言いって下されば、陛下と繋がりを持つためなら雌犬でも雌猫でも雌豚でも禁忌を犯す覚悟をつけましたのに……」


 「いや、そこまでする必要はないだろう……」


 銀髪の青年の恨みがましい声に、金髪の青年は目を閉じたまま静かに答えた。


 「ちょっとー!何、無視してるのよー!わたしの事が好きじゃないってどういう事よー!」


 桃色髪の女性の怒鳴り声が響くと、銀髪の青年は一つ頷いて見せた。


 「まあ、いいでしょう。今となってはこだわっても仕方ありません」


 そう言うと桃色髪の女性の方を向いた。


 「あなたに理解できるか分かりませんが、この国の成り立ちから一応ご説明いたしましょう。王妃として当然知っているべき事ですが、あなたは何も学ばないし、下級貴族の庶子から成り上がった方ですから、ご存じないでしょうからね」


 「はあ?何い……」


 「まあ、静かにお聞きなさい。あなたの事が好きではない事の説明ですから」


 首を傾げて何か言おうとした桃色髪の女性を右手を振って制止すると、前に出て銀髪の青年は話し始めた。


 「さすがにこれは知ってると思いますが、この国で祀られているのは『薔薇神ローゼズテス』様です。元は薔薇の精霊であった方ですが、強大なお力があり、この国では守護神として神格化されています。なぜ、ローゼズテス様がこの国の守護をなさっているかと言うと、初代王と関わりがあったからですね。初代王は少年の頃、ローゼズテス様に出会いました。金の髪に瑠璃色の目のそれはそれは美しい少年だったそうです」


 そこまで語ると銀髪の青年は、振り返って玉座に座る金髪の青年をチラリと見た。納得したように頷くと、また前に向き直る。


 「ローゼズテス様は美しい少年に一目惚れしました。手元におき、可愛がったそうです。そう、あ~んな事やそ~んな事をしたい放題!欲望に任せて少年の肢体を組伏せ、恥ずかしがる少年にうらやまけしからん事をアレコレ……アダッ」


 何かがガッと頭の後ろに当たり、銀髪の青年は後ろを振り返った。みんな能面のような無表情で前を見ていた。

 一回りみんなの顔を見渡した後、銀髪の青年は前を向いて咳払いをした。


 「コホッ、まあ、少年はローゼズテス様から深いご寵愛をいただき、仲睦まじく暮らしたそうです。でも月日がたち、二人の別れの時がやってきました。少年は成長し、立派な青年になりました。ローゼズテス様は少年がお好きな方ですので、大人になった少年は趣味嗜好からはずれ、愛でる事は出来なくなりました。そう、育っていない体が好きなので、大人の育ちきった立派なチ……アガーッ」


 ガッガッガッガッと4つ何かが銀髪の青年の後ろ頭に当たり、銀髪の青年は頭を押さえて背後を振り返った。みんな石像のように微動だにせず前を見ていた。

 みんなの顔に順番に視線を走らせた後、銀髪の青年は再び前を向いて咳払いをした。


 「コホン、まあ、少年……いえ、もう青年ですね。青年との別れの時、ローゼズテス様は国を一つ授けました。もう、愛でる事は出来なくなったが、愛しているのは本当である。愛の証に青年の血をひく子孫までずっと青年の国を守護しようとお誓いなさいました。そうして青年に愛の力を込めた金の薔薇と守護の力を込めた5色の薔薇をお与えなさいました。その際、青年にも幾つかの事を誓約させました。その一つに国王となる者は決して同性と交わってはならないと言うものがあります」


 そこまで言うと、銀髪の青年は深くため息をついた。


「ハアッ、誓約を破ると金の薔薇は枯れて、命を失ってしまうんです。ローゼズテス様は青年の子孫さえ他の男に抱かせたくないと嫉妬深い執着を持つ方でした。迷惑ですよねえ。もう、何百年も経ってるのにねえ」


「金の薔薇?ねえ、何が言いたいの?分からないんだけど」


 ため息をつく銀髪の青年に、黙っているのが我慢できなくなった桃色髪の女性の声がかかった。


 「ですよね。まあ、分かりやすく言うと、私達が愛してるのは陛下ただおひとりであなたの事など、全く好きではないと言う事です。あなたに好意的だったのは陛下を自由にするためにした演技です。ただの振りです」


 「そうだ。陛下のためにおまえのような女を好きな振りをしただけだ。陛下のためなら、『色ボケ』にだってなれたのだ」


 赤髪の青年が銀髪の青年の言葉に続けて口を開いた。


 「そう、陛下のためなら、君を好きな『バカ男』の振りだって出来た。思ってたよりもずっと愚かで、予想より早い国の滅びを迎えた事は感謝してもいいけどね」


 青髪の青年も、そう言って桃色髪の女性を見つめた。


 「そうですね。陛下のためなら、あなたの事が好きな振りをして『カラッポ頭』と呼ばれても我慢できた。狙い通り、陛下の言葉も私達の諫言も無視して、あなたに媚を売って私腹を肥やすような奴等に実権を握らせる事が出来ていたようですしね」


 黄髪の青年も桃色髪の女性に視線を向けた。


 「内から腐り、民衆の心が離れたこの国には、もう『薔薇神』の加護はなくなった。民がいなければ、もう国ではないからな。他国の攻撃を受けても薔薇の守護者は現れない。あなたを好きな振りをして『股間に脳ミソのある男』の汚名を受けた甲斐があったというものだ」


 黒髪の青年も皮肉げに口元を持ち上げて桃色髪の女性を見つめた。


 「色々、誓約があったんです。国を守らなければいけない立場でしたので、私達自らが国を滅ぼすような、はっきりした動きは出来なかったんです。でも、愚かな王妃を迎える事にも王妃がやる事にも縛りはありませんでした。思った以上にあなたはやってくださいました……。神の加護はなくなりました。実質、この国は滅びたと言えるでしょう。誓約がなくなれば陛下を愛する事は自由に出来ます。そう、陛下のためなら『変態』と呼ばれてもかまいません。陛下の花のような薄紅の唇、ほんのり薄紅の胸元、美味しそうな白饅頭が2つ、匂い立つような花の蕾……ああ、舐めまわして食べ……ウガガガガガッ」


 ガガガガガッと5回、銀髪の青年の後ろ頭に何かが当たった。銀髪の青年は頭を抱えてしゃがみこむ。

 銀髪の青年が頭を抱えたまま後ろを振り返ると、みんな氷漬けのマンモスのようにピシリと固まったまま前を見ていた。銀髪の青年はこのメンバーで『だるまさんが転んだ』の勝者にはなれない自分を悟った。


 「なあに?!なによ!それってわたしを利用して騙したってことなの!わたしの心を弄ぶなんて! なんてひどい人達なの!」


 「ひどいのはそなたであろう」


 逆上して怒鳴った桃色髪の女性に、金髪の青年は責めるような視線を向けた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ