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*妖しく薔薇は咲き乱れる*  作者: ミケ~またバラ
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*01話 薔薇の憂い

今、一度ご確認を……これはがっつりBL(たぶん)です。大丈夫でしょうか?


 この話は1話目の前半は、難しそうな漢字を使い、文節を繋ぎ、一行を長めにし、独自の表現方法を用い、読み手に『えっ?耽美?これ耽美かもしれないの?!』と混乱と錯覚を与える耽美な雰囲気を出す事に挑戦しております。後半になると、そんな事をするのも疲れてきて、だいぶ簡単な読みやすい文になってきます。また、なんでこんなものを書いてしまったのか……。大丈夫な方はお読みください。ダメだった方は最初に謝っておきます。こんな話で m(_ _)m

 



 精妙巧緻な薔薇の模様の刻まれた、重厚な木製の両開きの扉。黒光りする木の艶と金の薔薇の細工飾りの付いた金の取っ手の輝きが、古い歴史を感じさせ、この扉の向こうには頭を垂れるべき至高の存在が居ることを示していた。


 扉の中には薔薇の花の彫刻が彫り込まれた、白い石ぬの円柱が左右に並んだ奥行きのある広間があった。


 トランポリンで跳ねなければ、頭をぶつける事が出来ない高い天井には、ガラス製の花びらを何層も重ねた大きな薔薇の花のような豪華なシャンデリアが取り付けられていて、そのまわりには細い鎖で六角水晶のようなガラスがぐるりとぶら下がり、下を通る者に落下時の惨事を想像させる威圧を放っていた。

今はシャンデリアの銀環には明かりが灯されていない。


 壁の両側の高い位置に、窓枠に金の蔓薔薇の細工がある釣鐘型の小窓が並び、そこから差し込んだ光が、柱の後ろに誰の気配もない支柱の静謐(せいひつ)な影を、贅沢な絨毯の敷かれた床に映していた。


 最奥には高齢者への配慮はされていない五段の階段があり、その上には四隅を太い円柱で囲われた、うっかり動脈を切って鮮血で染めたような赤い絨毯の敷かれた場所があった。


 絨毯の上には背凭れと座面に赤いビロードが張られ、枠や肘掛けに様々な宝石が埋め込まれ薔薇の金細工のある、国民の血税が注ぎ込まれたに違いない豪奢(ごうしゃ)な椅子が一台置かれていた。


 椅子の背後の壁には、薔薇の模様のある金の金具と金糸で編まれたタッセルで止められた、厚手の赤いビロードのカーテンが左右に下がっており、中央に大きなタペストリーが飾られていた。


 タペストリーには何色もの薔薇で(たてがみ)を飾り、口に金の薔薇を一輪咥えた勇猛なはずの獅子の姿が織り込まれていた。


 扉から椅子の前まで、赤い絨毯が細長い道のように敷かれていた。


 扉を開けて一人の青年が広間に入って来ると、慣れた足取りで赤い絨毯の上を歩いて階段上の豪奢な椅子に腰かけた。疲れたように背凭れに体重を預けて、暗い面もちで肘掛けに手をかけたのは、天上の美貌を持つ青年だった。


 陶器のように滑らかな白い肌。高貴な印象を与える描かれたような形のよい眉と真っ直ぐ筋の通ったすっきりとした鼻梁。長い睫毛に縁取られた宝石のような青紫色の目は、見るものを魅了する煌めきを宿し、薄紅の瑞々しい唇は魅惑的な線を描いて、人を惹き付ける艶があった。光を散りばめたような細目の金の髪は、肩までの長さがあり、優美さと豪華さをあわせ持ち、青年の花顔を引き立てていた。


 優美さのあるしなやかな体には、袖口に繊細なレースのある白いドレスシャツを(まと)い、首もとにはよだれかけのような白いレースのクラバットをつけていた。足には綺麗な折り目の入った黒タイツではなく、トラウザーを穿()いていた。


 誰も隠れていない広間で、金髪の青年の口から小さな呟きが漏れた。


 「……これは罪だとしても……それでも……」


 苦しそうに顔を歪ませたところで、ハッとしたように扉の方に顔を向けた。


 廊下を走る足音が、近づいてくると、扉から赤髪の青年が現れた。


 広間の奥の階段上に視線を向けると、ホッとしたように息を吐く。


 金の薔薇の飾りボタンの付いた、金の蔓薔薇の模様の入った、臀部を隠す丈のかっちりした臙脂(えんじ)の上衣。太股に貼り付くような白の下衣。足下には金の薔薇の飾りが付いた焦茶のブーツ。羽織った長い深紅のマントは、右肩で金の薔薇の形のブローチで止められていた。腰には焦茶の革の剣帯が巻かれ、柄頭に金の薔薇で縁取られた大粒の瑠璃の飾りが付いた、宝石の散りばめられた華美な鞘に入った豪華な剣が下げられていた。

 現れたのは、剣技の手抜きは許されても、顔の手抜きは許されない、宮廷騎士団の格好をした美青年だった。


 「陛下、こちらにおられたのですね」


 そう叫ぶと足早に、階段上の椅子に座る青年の方に歩き始めた。若さを感じさせる勢いで階段を昇りきると、椅子に座る青年の前に跪いた。


 「ご報告させていただきます。民衆の内乱を後押しした帝国軍が、反乱軍と合流しました。城門まで進軍してくるのも、時間の問題かと思われます」


 「そうか……」


 赤髪の青年の報告に金髪の青年は、静かに相づちを打った。


 「他のみんなはどうしているだろうか」


 金髪の青年の言葉に、赤髪の青年が口を開こうとしたところで、扉付近にバタバタと複数の足音が響いた。


 「陛下、やはり玉座の間におられたのですね」


 最初に広間に入ってきた青髪の青年は、階段上の金髪の青年を見て、安堵の表情を浮かべると、階段上まで一気に飛んだ。

 

 ほっそりとした体を、金の蔓薔薇の模様が金糸で縫い込まれた上質な紺青色(こんじょういろ)のローブで包み、小さな金の薔薇で縁取られた大粒の瑠璃のペンダントを胸元で揺らしながら、本当に飛んだ青年は、宮廷魔術師の美青年だった。


 「無事なご様子に、ホッといたしました」


 赤髪の青年は立ち上がると玉座の脇に移動して、そう言いながら近づいてくる青髪の青年に場所を譲った。


 青髪の青年は玉座の前まで来ると、跪いて金髪の青年の顔を真剣な表情で見つめた。


 「申し上げます。帝国軍は多数の魔術師を動員したようです。一斉に攻撃を受けた場合は、王城の結界はさほど長く持たないのではないかと思われます。半刻持つかどうか……」


 「そうか……」


 青髪の青年の言葉に金髪の青年は、諦念を感じさせる声音で返答した。


 「陛下、ああ、陛下」


 ハアハアと息を切らせながら、階段を走り昇って黄髪の青年が現れると、青髪の青年も立ち上がって、空いた方の玉座の脇に移動して黄髪の青年に玉座の前を譲った。


 金の薔薇の飾りボタンに、縁に金の蔓薔薇の模様がある山吹色のジュストコール。小さめの金の薔薇の飾りボタンが付いた白茶のウエストコート。足には白のキュロットと、金の薔薇の飾りが付いた茶のブーツ。首もとには小さな金の薔薇で縁取られた大粒の瑠璃のブローチで止められた白いクラバット。

 そんな格好で慌てた様子で現れたのは、王の補佐をする文官の美青年だった。

 

 「お姿が見えなかったので、心配いたしました」


 黄髪の青年は肩で息をしながら、倒れこむように金髪の青年の前に跪いた。何度か深呼吸して息を整えると、表情を引き締めて金髪の青年の方に顔を向けた。


 「お伝え申し上げます。宰相をはじめ、主だった重臣、上級職の者達は城内の金品を漁り、真っ先に城から逃走いたしました。城内に残っていた下級職の者や、使用人達には当座の資金を持たせ、地下通路から脱出するように勧告いたしました。今は全員の脱出が完了した頃合いかと思われます」


 「そうか……。高位貴族の方が浅ましいとは、この国が如何に腐り果てていたか、分かると言うものだな」


 黄髪の青年の伝えてきた内容に、金髪の青年は侮蔑を込めた声音でそう言うと、皮肉げに口の端を持ち上げた。


 「陛下、何事もなかったようで、安心いたしました」


 そう言いながら、後からホッと息をつく黒髪の青年が現れると、黄髪の青年は体を横の方にずらして、金髪の青年の前を譲った。


 黒髪の青年は、金の薔薇の模様が表面に彫られた丸ボタンの付いた、縁に金の蔓薔薇模様の入った、呂色(ろいろ)の膝下丈の立て襟のロングコートと同色の下衣を身につけていた。細い金鎖に小さな薔薇の飾りがついた鈍色(にびいろ)のブーツを履き、腰には金の薔薇の花の真ん中に瑠璃が嵌め込まれたバックルの付いた金鎖の付いた革ベルトを巻いており、装飾の少ない細身の剣を差していた。

 王の命令で裏情報を集めたり、秘密裏に動く、王直属の臣下の美青年だった。


 黒髪の青年は玉座の前に跪くと頭を垂れた。顔を上げるとはっきりした声で話し始める。


 「ご報告申し上げます。帝国軍は皇帝自らが出陣し、前線の指揮を取り始めました。傍らに金髪の縦ロールの女性の姿も確認されております。もう、城内から避難なされた方がよろしいかと存じます」


 「そうか……来たのか……」


 黒髪の青年の言葉が終わると、一瞬金髪の青年の目に喜色が浮かんだが、すぐに暗い面もちで顔を伏せた。


 「帝国軍は出陣しない王に呆れているだろうな。私欲に走り、国を滅ぼす余はなんと罪深い人間なのだろうか……」


 「陛下、顔をお上げください。あなたの美しいお顔を曇らせないで下さい」


 ゆっくりと階段を昇り、今度は銀髪の青年が姿を見せると、黒髪の青年も黄髪の青年とは逆の方に体をずらし、玉座の前を空けた。


 「あなたが戦いに赴く必要はありません。どうせ我が国の軍はまともに機能しておりません。もう、今頃はみんな戦わずに逃げ出しているのではないでしょうか。この王城の結界が保っているのはそこの者の魔力と私の神力のおかげですし……」


 そう言いながら、玉座の脇に立つ青髪の青年を指差した後、金髪の青年の前に立った。


 腰まである長い真っ直ぐな銀の髪をした青年は、月白色(げっぱくいろ)のカーテンを長四角に切り、頭と足がでるように縫い合わせたような長い衣装を着ていた。

 首もとは禁欲的な詰襟風で、裾の方はカーテンのドレープを生かしたように、少しゆったりとしていた。衣装の前面には金の薔薇の刺繍が縦並びにほどこされ、てるてる坊主とは違う豪華でお洒落な味を出していた。寸胴にならないように、腰には金の光沢を見せる高そうな布を巻き、肩にはちょっと長めの金色の高級手拭いのような物を掛けていた。

 各部の名称は分からなくても、一目で聖職者と分かる衣装だった。


 「罪深いと言うのなら、この私こそが一番罪深い人間でしょう。あなたを諌め、民を導き、救わなければいけない立場の私が、欲にまみれ、国よりもあなたの愛を望んでしまった……。どうかそのお心の重荷を私にください。神よりもあなたを選んだ私をお責めください。決して王家に媚びてはならない、神以外には跪いてはならないと定められた戒律を、今破りましょう」


 銀髪の青年は、そう言うと静かに膝をつき、金髪の青年に恭しく頭を下げた。


 金髪の青年が大きく目を見開き、銀髪の青年に声をかけようとしたところで、かん高い鼻にかかった声が広間にキンキンと響いた。


 「あーっ!みんなこんな所にいたのね。もう、捜しちゃったじゃないのー!」


 現れたのは、桃色の髪の女性だった。






    〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇



 誰にももう、読まれてなさそうなので、ここにこっそり、その後のお話を書こうと思いまーす。主人公はレオン少年。そう、彼は……。


 

*01 蕾のため息



「何でお前なんだよ!この私生児が!」


 教室に怒り狂った少年の声が響く。

 窓枠に腰かけて、校庭を眺めていたレオンは、視線を怒っている少年の方に向けた。


「おまえみたいな父親も分からない貧乏人が、何で選ばれるんだ!」


 小柄で痩せた少年に向かって、ふくよかで大柄な少年が怒鳴っている。痩せた少年は俯いて何も言わない。

 放課後の教室には、レオン以外にも数人の少年がいたが、誰も怒る少年を諫める者はいない。黙って立ち去る者もいる。


「どんな汚い手を使ったんだ!辞退しろ!」


 激昂する少年の言葉にレオンは、ハアとため息をついた。


「マルコが汚い手を使うわけないだろ」


 口を出したくなかったが、こんな言いがかりで、懸命に頑張った少年が、万が一にも上級学校の進級を辞退するはめになったりしたら、可哀想だ。


 王都の上級学校への特別枠は、この学校では二人──申請して選ばれたのはレオンとマルコだった。

 選ばれると上級学校の学費などは無料になるし、生活面でも優遇される。何より優秀な学徒として、大変な名誉になる。

 片親で貧しくても、勉強したかった少年は頑張ったのだ。太った少年のように、付随してくる名誉目当てではない。

 レオンもそんなものを目当てにしたわけではなく、学年首席の成績で、学校側から勧められての申請だった。


「不正しようとして、ダメだったのはお前の方だろ。ちゃんと試験を受けて入学しろよ。商人の子なら、金持ちなんだろ。ま、受けても落ちそうだけどな」


「何だと!」


 太った少年は痩せた少年から離れると、レオンの方にやってくる。


「僕が辞退してあげてもいいけど、枠が空いても君は絶対に選ばれないよ?」


 側に立つ、顔を真っ赤にしている少年に向かって嘲笑する。


「フフ、君が選ばれるんなら、特別枠の生徒は優秀じゃなくなっちゃうよ」


 太った少年が、特別枠に申し込むほど、勉強ができるのは知っていたが、金にあかせて、家庭教師をつけた結果だというのも知っている。ここは一人でコツコツ頑張ってきた少年を、庇ってやりたい。太った少年の怒気を代わりに浴びてやる覚悟をした。


「僕やマルコよりバカだって、自覚がないの? 文句なんてつけてたら恥をかくだけだよね」


「この!バカにしやがって!」


──!!あっ……


 嘲りの言葉を口にしたとたん、叫び声とともにドンと突き飛ばされる衝撃を体に感じた。


 ここは三階──窓枠に腰かけていた体が下に落ちていく。


 落ちたとたん、キラキラと黄金の光が降り注ぎ体を包む。


──あー、やっちゃった。


 背に翼の生えた黄金の獅子が現れて、レオンの背中の服を口に咥えると、ゆっくりと地上に降り立つ。

 レオンが無事に地面に立ったのを確認すると、黄金の獅子はキラキラと光を振り撒きながら、空中に溶け込むように姿を消した。


 校庭にいた人達が、こちらを指差して何かを叫んでいる。校舎の方も、放課後なのにこんなに人がいたのかと、窓から身をのり出すようにして、人が鈴なりだ。


「守護獣だ!」

「金色の聖獣だぞ!」

「貴族だ!」


 人々の叫ぶように言っている言葉がレオンの耳に入ってくる。


──これだけ目撃者がいたら、もう、ごまかせないよね。


 ぐるりと回りを見渡して、レオンは青くなった。


 この国では、貴族の男性全員が持っているわけではないが、守護獣がいるのは貴族と呼ばれる階級の男性達だけだ。守護獣は貴族の(あかし)──。


 市井の平民に守護獣持ちが現れたらどうなるか……一代限りの男爵位を貰って、貴族として生きることを強要される。


 守護獣持ちは特別だから、表だっては迫害されたりしないが、うっかり流出した貴族の血をやんわりと絶やす目的での授爵だとレオンは思っている。


 貴族として暮らせるように、国からお金はたっぷり貰えるけど、領地とかはない。結婚は貴族どうしにしか許されないから、そんな元庶民の一代限りの男爵に、貴族女性は嫁いでこない。


 世間一般では、名誉なことで幸運なことになってるし、そんなのでも喜ぶ人もいるらしいが、レオンは貴族になることを望んでいない。レオンの家族もまるで望んでいない。


──ああ、お母さんやお父さん達に怒られる。どうしよう……。


 レオンは今日、二度めになるため息を肩を落として、ハアと深くついた。

 


 この話は1話4000文字前後で6話で完結の話です。


臙脂色えんじいろ……黒味を帯びた深く艶やかな紅色

★真紅、深紅しんく……深みのある真っ赤な紅色

紺青色こんじょういろ……紫色を帯びた暗い上品な青色

山吹色やまぶきいろ……山吹の花のような鮮やかな赤みを帯びた黄色

白茶色はくちゃいろ……薄くて明るい感じの茶色

呂色ろいろ……漆黒のぬれたような深く美しい黒色

鈍色にびいろ……無彩色系の鈍いねずみ色のこと

月白色げっぱくいろ……月の光を思わせる薄い青みを含んだ白色のこと

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