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雫から始まる物語  作者: あまやすずのり
67/70

第67話

 瞬間、私の頬に熱い物が伝わるのが分った。

 あぁ、こんな事言うつもりではなかったのに、

 むしろ彼の言葉に心動かされ、

 とても幸福な気持ちになれたのに。

 忘れ去られた感情が蘇ったのに……。

「……それは、紗英さんのため、ですか」

「……」

 私は答えなかった。

 否、答えてはいけなかった。

 それを肯定してしまえばきっと

 紗英との関係を話してくれるだろう。

 だけど、今まであった出来事から

 私は理解してしまった。

 紗英は進先輩の事が好きだったのだろう。

 そして、その進先輩はなぜか私なんかに

 好意を寄せてくれた。

 それは私にとってとても喜ばしい事であり、

 とても悲しい事。

 私は大の親友の大好きな人を奪ってしまったから。

 きっかけは紗英の店での手伝いの時、

 あの時に気付いたのだろう、

 進先輩の私に対する態度がいつもと違った事に。

 それから紗英は色々と悩んだと思う。

 進先輩の口から直接聞くまでずっと

 私への態度と振る舞いに。

 どう接すればいいのか、きっと分らずに苦しんだのだろう。

 だから、距離を置き紗英は自身で答えを出そうとしていた。

 それなのに私は、

「私は、本当に馬鹿だよ……」

 思わず呟きが漏れた。

 紗英の苦しんでる時に私は何をしていた?

 原因の人に助けを請い、紗英との仲を取り戻してもらった。

 その優しさと走りに惹かれた。

 好きだと言ってくれたのはとてもビックリしたけど

 それと同じくらい嬉しかった。

 ドキドキした、胸が苦しくもなった。

 まるで、雫先輩に恋をしてた時のようだった。

 それらを振り返れば振り返るほど、

 紗英への贖罪が募る。

 きっと紗英はもっと前から進先輩を知っていて、

 進先輩に惹かれていた。

 なのに横から掠め取るように私が

 親友の大切な人を奪おうとしている。

 私に罪が無い、好きな気持ちは止められないから。

 そう言ってくれる人もいるかもしれない。

 だけど、私は

「だから、私は貴方とはお付き合い出来ません」

 決意を込めた表情で進の顔を見ながら

 しっかりと返事を返すのだった。


 五月さんからの否定の言葉が飛んだ。

 それはある意味当然だった。

 付き合いは長くないながらも

 彼女の優しさと大切な人を思う気持ちは

 人一倍あり、それが魅力でもあったから。

 だけど、やはり辛かった。

 否定されたことで生まれた

 負の感情が自分の心を強く握る。

「……わかり、ました」

 あまりにも物分かりが良すぎる、

 呆れても可笑しくない返事をかえす。

 しかし、俺は言葉を止めなかった。

 それは決して自分自身が楽になるためではなかった。

「なら、一つ確認したい」

「……」

 五月さんの無言を肯定と取り

 俺は疑問をぶつけた。

「なぜ、そんなに苦しそうな顔をしてるんですか」

「……」

 五月の顔が大きく変化する。

 先ほどまで見せていた決意の表情は薄れ

 顔が歪んでいく。

「そんな、事……ない……」

 絞り出すように出た言葉に覇気は無く、

 俯いた顔と同時に萎んでいく。

 その様子に俺は安堵を覚えながらも

 悔しい気持ちでいっぱいになっていた。

 この展開はある意味予想通りで

 出来れば自分で解決したかったから。

 本当はこんな手は使いたくなかった。

 だけど、きっとそうなるから、

 その時は手伝います、

 と言ってくれた人の事を思い出しながら、

『後は頼みますね』

 心の中に落とした呟きに応えるように声が響く。

 優しく吹かれた風に乗り、

 それは五月さんの心へと届けられた。

「五月」

「…さ……え……」

こんばんわ、作者です。


いよいよ大詰めであります。

というわけで、ここにきていきなりの2話分投稿です。

決して、決して前回までに話した内容を間に合わせるため、です(笑)

その辺りは次話の後書きにてまた触れたいなと思います。

次話も予想以上に長いですし、ね(笑)


ここまでお読み頂きありがとうございます。

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