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雫から始まる物語  作者: あまやすずのり
45/70

第45話

「……ってな事があってね」

「何やってるんだあいつらは……」

 雄一と雫のとある昼食の光景を桜が鮮明に説明し

 進はそれに呆れるばかりだった。

『あの二人もなんだかんだ言いながらなかなか進まないもんだな』

 心の中でそう呟きながら、

 二人仲睦まじい姿だった中学時代を思い出す。

 あの頃は、まだ二人とも幼馴染の枠を超えていない感じで

 端から見ても付き合っているというよりは兄妹みたいな感じだった。

 だから、色々と問題もあったのだが。

「それで進にぃ、ちゃんと週末はこれるんだよね?」

「ん?あぁ、大丈夫だよ」

 唐突に話が切り替わったため少し躊躇するが、

 そこはしっかりと修正し桜へと答える。

「ふーん……そう……」

 なんだか端切れが悪い桜。

 いつもなら明瞭に話す部分も

 今日に限っては遠慮がちに進には聞こえていた。

『まぁ無理もないか』

 思い当たる節は、非常に沢山ある。

 沢山ありすぎて正解はどれかは分からない、

 だが、それを理解しているからこそ

『桜ちゃんには、ちゃんと話さないとな』

 そう進が思った矢先だった。

 まるで見透かしたように桜から話が切り出される。

「それで、当日はちゃんと話、するの?」

「…………」

 重い先制のジャブが進の心に突き刺さる。

 誤魔化す事も出来なくはなかった、

 だが、あまりにも突然に繰り出されたため

 進は出せる言葉が見つからず無言になってしまった。

 こうなるともうどうしようもない。

 だからこそだろう、受話器越しからため息が漏れる。

「……とりあえず、私は知ってるから」

「そっか……」

 何とかひねり出した進の言葉に力はなかった。

 それが意味する事を理解した桜は一人で話を進める。

「だから、どう転ぼうが私は進にぃを助けないし、恨む、かな」

「あぁ……」

 桜の立場から言えばそうだろう。

 少なくとも自分が大切にしている友人が既に泣かされているのだ。

 そして、それはまだこれからも起きる可能性がある。

 場合によっては桜の、3人の仲を裂く行為。

 それは進にも分かっている。

 だが、だからと言って進もそのままでいるわけにはいかなかった。


「俺も……諦めきれないから」

「……そう、だね……」

 それは桜にとってとても重い言葉だった。

 何も言わず、何も起こさず終わらせる事が正しいとは

 また桜も思ってはいなかった。

 自ら経験した進への思いが正にそれだったから。

 だから、桜は言った。

 どうなるかはわからない、

 だけど進が自分と同じ道を歩まぬように。

 敬愛する、もう一人の兄に向けて、

 精一杯の強がりで応援した。

「なら、ちゃんとけじめつけて、そして、頑張って進にぃ」

「……あぁ、ありがとう、桜ちゃん」

 受話器越しに聞こえた進の声はとてもしっかりしていた。

 いつもの、否、いつも以上に頼もしくそれは聞こえた。

 ふと進の笑顔が頭に浮かぶ。

 それは桜が知っている大好きな進の笑顔だった。

『あぁ、きっと今の進にぃはかっこいいんだろうなぁ……』

 きっと電話先でそんな笑顔を桜に向けてくれている。

 そう思えるだけで嬉しかった。

 胸が、詰まらされた。

 だから体を九の字に曲げ必死に心を整える。

 本能が起こす後悔の念を

 理性で必死に正そうと抗った。

 そして、桜は気付く、

 いつの間にか頬には小さな雫が溜まっていることに。

 それはきっと自身の体に残っていた最後の思い

 そう感じた桜は躊躇することなく指で一気に払った。

 吹っ切るように、吹っ切れるように。

 瞬間、どことなく軽くなった体には

 桜が無言によって心配する進の声が響く。

 それがなぜかあまりにも可笑しく感じ、

 桜は自然に笑いながら進へと応えていた。

「なんでもない……なんでもないよ、進にぃ」

 その言葉に進の安堵する声が聞こえる。

 それだけで桜はもう十分だった。

 だって昔と変わらない、桜をちゃんと心配してくれる

 桜が認めた兄は変わらずにいたのが分かったから。

 だから、桜はその兄へ向けて言葉を送った。

 それは久々に本心から願う言葉だった。

「進にぃっ!いつまでも進にぃの最高の妹が応援してるから、ちゃんと格好つけて、ねっ!」

こんばんわ、作者です。


まだまだ寒さ続く季節ですが

日が当たると結構暖かく過ごしやすくなってきましたね。

休みの日なんか日向最高の部屋に居るとうつらうつらしてき……

でも日が落ちると急激に寒くなるので

うたた寝も程々に。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

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