第27話
「ただいま−……」
暗い廊下に明かりを付けながら発した帰宅の言葉
しかしそれに応える者はどこにもいない。
高校入学前から住み始めたマンション。
そこで五月は初めて一人暮らしを始めた。
離婚した両親が唯一五月のために用意した場所だった。
「……はぁ……」
小さく出た吐息、
それに呼応するように身体は自然と寝室へと向かう。
いつもならリビングへ向かい晩ご飯の用意をしながら
お風呂を入れ、合間に家事をこなすのが日課だった。
なのに、今日はどれもやる気は起きない。
お腹はそこそこ空いているし、汗も流したいし
残っている洗濯物も片付けたい。
やること、やらなきゃいけない事はあるのに
「あるのに、なー……」
ポスン、軽やかな音と共に部屋が真横に映る。
冷たく優しく包み込んでくれるベットの感触。
少し火照った身体にはとても心地良く
そのまま目を閉じる誘惑に駈られる。
だが、それをすんでのところで抑えながら
今一度溜まっている様々な事を思い浮かべ
「……先輩、か……」
そして、いつの間にかそれは全て書き換えられていく。
先程まで合っていた男性、遠藤先輩の事へと。
「初めて、ではないけど、会って間もないのにな……」
五月自身それは戸惑いでもあった。
まだ会って2回目、当然進の事を熟知している訳ではない、
なのにあんな相談をしてしまうなんて。
優しい人柄だからきっち紗英との仲を
取り持ってくれるだろうとは思った。
だから帰宅時にファミレスに誘った。
異性と二人で、しかもまだ仲がいい人でもないのに。
そして、ふと話をしていた時を思い出す。
五月もそうだが、進もどこか戸惑いとぎこちない感じがあったのを。
その姿はどこか可笑しく自然と顔が緩む。
安藤先輩と一緒に走っていた時とは、
「……なかなか、格好良かった、かな……」
言葉と共に今日の進の走りを思い出す。
陸上部マネージャーとして色々な人の頑張る姿を見てきた。
時に泥臭く、時に輝きに満ちた姿を。
それこそ惹かれる姿もあった。
だけど、今日の進は圧倒的だった。
何かは分からない、
しかし、確実にそれはあった。
五月の心に何か、
今までとは違う何かを与えていた。
その存在を少しでも理解したく、進と話をしたくなった。
それが今日唐突に起こした五月の行動の原因でもあった。
「でも実際分からなかった、なぁ……」
分からなかった事自体しょうがない、
そんなすぐ分かるとも思っていなかった事だから、
と、五月自身も納得出来ていた。
だがそれ以上に後悔していることはあった。
それは五月の悩みを進に託してしまった事、
本当なら五月自身でもっと解決を模索すべき事だから。
しかしそれを悔やみながらも、五月は別の考えが浮かんでいた。
いつになるかは分からない、
だが確実にまた進と話が出来る機会があること。
その事は五月に心の安らぎを与えてくれていた。
そしてその安らぎに身を任せ始めた五月は
自身の体温で暖められたベットの温もりも相まって
いつの間にかすっかり目を閉じてしまっていた。
こんばんわ、作者です。
皆様風邪などひいておりませんか?
私は見事にひきました(笑)
今はだいぶ良くなりましたが、気温の変化もだいぶあるので
油断しないように日々過ごしたいものです。
皆さんも私も同じ目に合わないようにご注意下さい(笑)
ここまでお読み頂きありがとうございます。




