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雫から始まる物語  作者: あまやすずのり
19/70

第19話

「いらっしゃいま……どうしたの?」

 日曜の夕暮れ時、外は少しずつ暗闇が差し

 閑静な住宅内にある店には

 より一層の静けさが満たされていく。

 今日は部活の関係で進も来ない。

 明日からの日常に向けこの時間には

 既に帰路についた人がほとんど。

 一人締めの仕事を片付け

 閉店までの時間を弄んでいたところに

 お客様用のドアに取り付けたベルが鳴り、

 反射的に来客を招く言葉を発した紗英。

 しかし、そこには見覚えある、

 いや、見間違うことなき笑顔で立つ友人がおり、

 心の中で小さくため息をつきながら、

 いつもの口調で桜へと話しかけていた。

「やっほ、こうやってまともにしゃべってくれるのは久しぶりだね」

 まともに、それは一方的に桜がそう思っているだけなのでは、

 そう考えた紗英、だが自身も久しぶりに感じていた。

「この時間に桜が来るのも珍しいわね」

 だから、それを勘ぐられないようにおしゃべりに徹する。

 昔から桜はこちらの感情を読み取ることに長けている。

 ちょっとの変化からすぐに全てを悟り桜のペースに乗せられる。

 それを防ぐためにこちらが先手を打ったつもりだったが

「そうだねー、珍しいからこそ、紗英なら分かるよね?」

 ニッコリ、と桜には似つかわしくない微笑ましい笑顔で誘われる。

 どうやらしゃべりたくないことまで覚悟しなければならないようだ。

 その事を嫌でも自覚させられた紗英は、

 今度は桜にも分かるように小さく吐息を漏らし

 店の奥にいるダディに店番を頼むと

 桜と共に日が落ちた町へと歩き出した。


 ほぼ沈んだ太陽に負けない光となるため

 街灯達がちらほらとちらつき始める頃、

 一人の男が未だ賑わう駅前通りを抜け駅へと入っていく。

 少し早足で階段を駆け上がりホームへ到着。

 そのまま一人電車を待ちながら遠藤 進は、

 先程交わされた会話を脳内で整理していた。

「まぁやるだけやってみるしか、ないか……」

 一人呟きながら店の前で別れた五月を思い出す。

 笑顔ながらどこか空元気な姿で、

 クルリ、と揺れた髪はどこか寂しげで、

 その足取りはどこか重く辿々しくて、

「……っと、やばいやばい」

 いつの間にか落ちた視線を上げると、

 開け放たれた電車が鎮座しており、

 進の横を訝しげに見つめる視線が過ぎていく。

 気づけば既に発車間近のアナウンスが流れており、

 慌てて家路へと続く電車へ飛び乗る。

 休みの日もあってか乗員はまばら、

 だが、席は既に満員となっており、

 仕方なく反対側のドアへと歩みを進め

 そのまま体を預ける。

 薄暗くなり始めた景色を少し眺め、

 ふと、携帯を取り出し時間を確認する。

「もう、閉まってるか……」

 目的地に着く頃にはとっくに閉店時間は過ぎている。

 でも、相談されたからには放ってはおけないし、

 出来ることなら早めに対処もしたい。

 あんな姿の五月をいつまでも放ってはおけない。

 好き、だから、だけじゃなく、純粋に救いたいと思っていた。

 手助けしたいと思っていた。

 彼女の泣いていた姿を鮮明に覚えているからこそ、

 烏滸がましいかもしれないがあの姿をもう

「出来れば見たくないもん、なぁ……」

 一人呟きながら進は相談された内容を再度呼び起こしていた。

ご無沙汰しております、作者です。

皆様、お休みは満喫出来たでしょうか?

私は本日を覗いて、今週から長期休暇を堪能しております。

なので、休みのうちに少しでも書きためておきたいと思っていたり。

なんせ休み明け初日から忙しさが加速しそうなので……。

今週からは今までの週一ペースを崩さず投稿出来るように

また精進しますので、よろしくお願いします。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

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