第15話
時間は少し遡る。
誰もいない休日の陸上部の部室で一人準備を進める女性がいた、
ブツブツと一人呟きながら。
「もう、なんで安藤先輩のお守りを私がやる羽目に……」
通常なら今日は陸上部の大会に同行する予定だった。
そのための準備もバッチリに整え、
全力でサポートする予定だったのだが
「五月ちゃんは雄一をお願いね♪」
突如雫先輩から出たお達し。
今度の日曜日に他校の生徒が安藤先輩のリハビリを手伝いにくるので、
それの対応をしてほしい。
もちろん、顧問の上田先生の了承済み。
代理顧問も立て校内で行う、と決まった内容を伝えられた。
「もう……雫先輩も急にどうしたのか……」
普通なら、ううん、
普通でなくても安藤先輩の事なら雫先輩が対応しているのに
今回に限ってなんで私が、
そんな疑問を何度も頭を巡ったのだが、
「……よし、やるかっ!」
悩んでも仕方ない、頼まれた以上はしっかりと。
なんせ、雫先輩から託されたのだから、全力でとりくまないと、
そう心に強く決意し視線を上げる。
壁に掛けられた時計の針が予定の時間を告げようとしている。
聞いた話では手伝いに来る人は安藤先輩の知り合いらしく
先に校内を案内するとかで迎えに出てもらっている。
でも、私ものんびりと構えているわけにもいかない。
手に込めた力を頬へと注入、小さく乾いた音を室内に響かせる。
それを合図に私は両手に大きめなバッグを抱え歩き出す。
ちょっと嫌な先輩とお手伝いさんをしっかりとサポートするため
早足で部室を後にした。
「お待たせしまし……あれ?」
「お、あ……なん、で……?」
俺の目の前でぱちくりと可愛い瞳が瞬く。
直後、目を細めジッと見つめながら俺の姿を検索し
「あっ……紗英のお店の常連さん」
ポンと手を打つ姿がまた可愛く
「って!違うどうしてっ!どういう事だ雄一っ!」
振り返った先には今までに見たことがない雄一の顔があった。
慌てふためく俺をからかうような笑顔、
それを見て俺はすぐさま理解する。
『こいつっ!まさか知ってたのかっ!』
その事実を確かめようと雄一の胸ぐらを掴み詰め寄る。
しかし、雄一は楽しそうな顔を崩すことなく視線を空へと馳せながら
「さーどうしてかなー」
ワザとらしくヘラヘラした口調で俺をおちょくるのだった。
最近暑さに負けてすぐ横になってしまう作者です。
この時期の暑さだけは本当に苦手で、やる気も減退……
でも連載はちょこちょこ書いて、い……います、うん(笑)
早く暑い日々終わらないかなー
ここまでお読み頂きありがとうございます。