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雫から始まる物語  作者: あまやすずのり
11/70

第11話

 キーン、コーン、カーン、コーン。

 チャイムの音と共に静かだった教室内が喧噪に包まれる。

 ガタガタとせわしなく動く椅子を合図に

 それぞれが思い思いの放課後を過ごし始める。

 今日もやってきたこの時間、

 今日こそはちゃんと聞かなきゃと私、五十嵐五月は

 自身を奮起させる。

 手早く支度をすませ、辺りを見回すと丁度目的の彼女が

 教室を離れようとしていた。

「紗英ー!ちょっと待ってー!」

 慌てて呼び止めながら紗英の元へと急ぐ私。

 チラリとこちらへ向けられた視線はやはりいつもと違う。

 まるで拒絶するような目は私の心に突き刺さり、

「紗英、私今日部活休みだからお店手伝うよ」

 それでも親友と思ってる彼女へと今日も話しかける。

 しかし、いつも通り悲しげに微笑みながら

 紗英は今日も私を遠ざける。

「ありがとう、でも大丈夫だから」

 私が言葉を紡ぐより早く背を向け

 スタスタと下駄箱へと向かう。

 あの日、お店の手伝いをしてからずっと続いている光景が

 今日も変わらぬ日常となっていた。


「はぁ…………」

「五月、もう5回も幸せ逃げてるよー」

 頭をテーブルに突っ伏しながら

 ため息をつく私に忠告する桜。

 心の中でうるさいなーと反感しながら睨めつける。

 だが、少しも動じることなく

 ポリポリとポテトを美味しそうに頬張っていた。

「……桜は今の紗英平気なわけ?」

「もちろん、平気なわけないよ」

 言葉とは裏腹に冷静な態度を崩さず

 ポテトを宙へ舞い上がらす。

 唐突に私たちを避けるようになった紗英、

 その日から続く桜との対策会議は一向に解決策が出ず、

 どっちかと言えば私がただ一方的に話すだけで終わっていた。

「ねぇ桜、やっぱり理由知ってるよね?」

「うーんどうかなー」

 相変わらず危機感が薄い桜に

 幾度となくぶつける疑問は

 やはり今日も見事に避けられる。

「まぁ今はまだそっとしておく方がいいよ」

 一人頷きながら結論づけてしまった。

 今日も同じ流れに私はまた盛大にため息をついていると

「あれ?五月ちゃんだー」

 聞き慣れた声に顔を上げると

 お盆を手にニコリと微笑む雫先輩、

 そして横には見慣れない制服の女性が

 同じようにこちらに視線を向けていた。

「あっ雫先輩、と?」

「あぁそっか初めて、かな?」

 彼女と顔を合わせ微笑む雫先輩。

 雫先輩よりずいぶん背が高く、

 長い髪を後ろでまとめた姿と

 凛とした表情はまるで美男子のようで

『これ制服じゃなかったらすごいカップルだなー』

 二人が談笑している姿はとても絵になっていた。

 美女、というより可愛い系の雫先輩、

 それを半歩前からリードする凛々しい彼女。

 いけない妄想が進みそうになり、

 慌てて頭をふりつつ、同時に浮かんだ悪戯を

 いつかのために頭の片隅に残す。

 そんな私の考え事の間に説明が終わったのか

 こちらに視線を戻した彼女が一言挨拶する。

「初めまして、白郷 楓です」

 想像通りの透き通った声と柔らかな微笑み。

 きっとこれで様々な女性を虜にしている。

 直感で感じた警戒を顔に出さないようにしながら

「雫先輩の後輩で五十嵐 五月です」

 その場で小さくお辞儀をしながら挨拶を交わす。

 私の言葉に笑顔を崩さぬまま視線が外される。

 その意味に気づいた私が、

 慌ててこの場にいたもう一人の存在を紹介しようとするが、

「あっ、でこっちが……」

「五月ーまた明日ー」

 対面から聞こえた声に驚愕する。

 すぐ横でポテトを貪る桜の影はなく、

 慌てて声のした方に視線をやると

 ヒラヒラと手を振りながら

 桜が出入り口を抜けていく姿が映った。

 いつもながら敏感な桜センサーで何かを関知したのだろう、

 さっさとその場を後にした彼女に唖然としていると、

 クスクスと二人から笑い声が漏れる。

「ふふ、桜ちゃんは相変わらずだね」

「ふむ、なかなかおもしろい子だな」

「すいません……」

 唐突の逃亡に私は平謝りするしかなかった。

気がつけば6月も半ば、今年も半分終わる時期になりました。

ここからだんだんと暑さが増し、ビールが美味しい……

じゃなく、出来れば今年中に完結させたいなと思うのでした。


ここまでお読み頂き、ありがとうございます。

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