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ザ☆旅行記Ⅷ 愚劣かつ下劣な話  作者: 小宮登志子
第2章 バイソン市への招待
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「五色の牛」同盟

 次の日、わたしは、プチドラを抱き、パターソンとともに馬車に乗り、バイソン市の出先機関に向かった。この日の葬儀関連行事は公爵以上(ドワーフの王、エルフの王、(例外的に)トカゲ王国の「王」を含む)限定なので、わたしは出席しなくてもよい(と言うか、出席できない)。

 パターソンは、馬車の中で資料を広げ、

「そもそもバイソン市とは、帝国の中央部を流れる大河の畔にあって、人口は……」

 と、頼んでもいないのに、いきなりレクを始めた。曰く、「交渉を有利に運ぶためにも、知っておいたほうがよい」ということで、昨日、夜を徹して資料をまとめたらしい。この男、優秀な「鞄持ち」としても重宝できそうだ。

 パターソンの話によると、バイソン市は大河の中流域(帝都から見ると下流に当たる)にある都市で、同じく大河の流域にある四つの都市(カウ、ブル、オックス、カーフ(いずれも自由市))と関税同盟(「五色の牛」同盟という)を締結し、域内で完結した経済圏を作り上げているとのこと。具体的には、域内での物の移動に関する関税はゼロとして(ただし人の移動は原則として禁止)、域外からの輸入には異常なほど高額の関税をかけ、それぞれの都市の産業を保護し、さらに、域外船籍の船舶の大河の通行に対しては高額の通行料を徴収し、事実上、域外の船舶を締め出している。また、軍隊も強力で、それぞれの都市が徴兵制を敷いており、市民が一丸となって自分の町を守るという姿勢を示しているとか。詰まるところ、「五色の牛」同盟で鎖国体制を作り上げているようなもので、帝国全土で事業を展開するマーチャント商会も、限られた範囲の貿易以外には手を出せないでいるとのこと。


 パターソンの説明が終わる頃、馬車はバイソン市の出先機関に到着した。出先機関は貴族の屋敷が立ち並ぶ区画の一番外れにあり、大きさは、わたしの屋敷とさほど違わない。敷地内に入ると、市のシンボル「黄色い牛」を描いた旗が掲げられているのが見える。

 玄関では、不思議なことに、アイアンホースが数名の部下を連れて出迎えていた。わたしが馬車を降りると、

「お待ちしておりました、カトリーナ・エマ・エリザベス・ブラッドウッド伯爵様。改めまして、ルイス・マンフレッド・アイアンホースでございます」

 アイアンホースは深々と頭を下げた。わたしが来ることが分かったのだろうか。不思議に思って首をひねっていると、パターソンがわたしの耳元でささやく。

「カトリーナ様が出先機関に出向くことについては、昨日のうちに、事務的に連絡しておきました」

「そうだったの、気が利くわね」

 今までのパターンなら、今頃、「おまえは誰だ」、「誰でもいい、市長を出せ」と、大乱闘になっていたことだろう。パターソンのソツがない仕事ぶりに感心していると、アイアンホースが頭を上げ、

「さあさあ、伯爵様、どうぞこちらへ」

 脂ぎった顔をギラギラさせながら、ニッコリと(ハッキリ言って、キモい……)わたしを招いた。

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