衝撃の結末
わたしはガックリとして、巻物をポイと放り投げた。内容は、ひと言で言えば、そのようなもの。つまり、簡単に表現すれば、今回の努力はすべて無駄になったということ。
プチドラは、小さな手でわたしの頭を撫で、
「まあまあ、時にはこういうことも……、と言うか、悪銭身につかず?」
「えっ? プチドラ、今、何か言った?」
「いや、何も……」
なんだか気になる表現だけど……、まあ、いいか。
これはどういうことかというと、バイソン市にて政変が発生し、アイアンホースが拘束されたということ。新政権は、アイアンホース時代の「負の遺産」の精算を発表し、これにより、せっかく苦労して締結した宝石の継続的取引契約も、白紙に戻されてしまった。
政変のそもそもの原因は、パークの逮捕にあった。アイアンホースは、パトリシアとパークの仲を裂くため、まず、パークを住居侵入容疑で逮捕し、自ら取調べに当たった。取調べは苛烈を極めたらしく、パークは拘留中に死亡。そのことを聞きつけたパトリシアの怒りが爆発し、アイアンホースをボコボコにして出奔、消息を絶った。その後、大河の畔に浮かぶパトリシアによく似た女性の遺体が発見されたとのこと(事故か他殺か自殺か等々は不明)。
その日から、アイアンホースは、体力的なことはさておき、パトリシアを失ったショックで、これまでより一層、市政に身が入らなくなった。命令や指示はムチャクチャで、言葉としてもほとんど意味をなさない状態になったとか。権力を一手に握る独裁者だっただけに、トップがコケると、あとは、ボロボロ。誇張ではなく、一夜にしてバイソン市はアナーキーに陥ったらしい。
そんな中、今までの鬱積していた不満が爆発したのか、市民有志(なお、その中にブライアンは含まれていない)が結束して、政変に至ったという。
わたしは、椅子の背にもたれ、「あぁ~」と、大きくため息。
プチドラは、わたしの顔をのぞきこみ、
「マスター、これからどうするの?」
「どうすると言われてもね。『パークを逮捕』なんて……、結局は藪蛇になっちゃったのね。最後に余計なことを言わなければよかったわ」
わたしは、もう一度、「はぁ~」と、ため息をついた。契約書は手元にあるし、新政権側の一方的な宣言が認められるはずもないから、帝国法務院に訴訟を提起すれば、多分、勝てるだろう。
でも、そこまで手間をかけるのも面倒だし、ツキがないときには、往々にして、何もしない方がマシということもある。しばらくは、田舎にこもることにしよう。
というわけで、今回は何も得ることなく、疲労感だけが残った。でも、仕方がない。とりあえず、この話は幕にしよう。そのうちに、何か良いこともあるだろう。




