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駐在武官の定期報告

 その後、どうなったかというと……

「ふわぁ~~~~~」

 わたしは、辺境の地、ウェルシーの都、ミーの町の執務室で、椅子にもたれ、大あくび。

「本当に、あのまま終わって、よかったのかな?」

 プチドラは、小さな腕を組み、「う~ん」と考え込んでいる。でも、その下半身は、金貨が一杯詰まった袋の中にもぐりこみ、「よかったのかな」と言っている割には、さほど気にかけていない様子。

 帝都でパターソンから「ツンドラ候とわたしが駆け落ちしたという噂が流れている」という話を聞かされてから、わたしは、とりあえず領地に戻り、執務室に籠もることにした。帝都にわたしだけが戻って来たことが知れれば、何かと面倒なことになりそうだから。しばらくは、辺境の地に近い田舎町に身を隠すのが賢明だろう。帝都の様子は駐在武官が報告してくれる。そのうち情勢が落ち着いた頃に、(用があれば)帝都に出向けばよい。


「カトリーナ・ママ、ただいま戻りました」

 カトリーナ学院の授業が終わったのだろう、アンジェラが執務室に顔を出した。でも、「カトリーナ・ママ」って……

「あのね、アンジェラ……」

 そう言いかけると、もう一度、ノックの音がして、執務室のドアが開き、

「カトリーナ・ママ、帝都から便りが届きました。いやぁ~、しかし……」

 今度は、猟犬隊隊長アーサー・ドーンが、厳重に封をされた巻物を持って現れた。

「ドーン、あなたでしょ、アンジェラに変なこと教えたのは」

「いえ、けっして、そのようなことは…… え~と、私は、これから所用がございまして、そのため、え~、これにて失礼をと……」

 ドーンは巻物を机に置くと、頭をかきながら、そそくさと執務室を出た。本当に、仕方がない男だ。何度注意しても直らないばかりか、アンジェラにまで、誤った知識を吹き込むなんて。

「あ、あの……」

 アンジェラは、怖々とわたしを見上げた。

「ああ、ごめん、驚いた? え~っと、あなたはいいのよ。悪いのはドーンだから。宿題を済ませてから、友達と遊んでくればいいわ」

 アンジェラはチョコンと頭を下げ、執務室を出た。

「さて、ドーンへのお仕置きは、これから考えるとして……」

 わたしは、巻物の封を開けた。帝都からの便りとは、すなわち、駐在武官の定期報告。

 プチドラは、金貨の入った袋から抜け出して、わたしの肩に飛び乗り、

「どれどれ、どんなことが書いてあるの?」

「どうかしらね。見てみましょう」

 こうして巻物を広げてみると、その内容は……

「なっ! なに、これ!?」

 と、思わず大きな声を上げるくらい、衝撃的といえば、衝撃的なものであった。

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