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ザ☆旅行記Ⅷ 愚劣かつ下劣な話  作者: 小宮登志子
第2章 バイソン市への招待
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バイソン市の市長選

 わたしはアイアンホースから渡された地図を広げた。でも、方向音痴のわたしに地図が読めるわけがない。

 プチドラは、地図をのぞき込むと、ウンウンと2、3度うなずき、

「出先機関は、屋敷からあまり離れていないようだね。でも、屋敷が一等地だとすると、出先機関は二等地くらいかな。自由市の出先機関だから、格式からして、この程度が相場だろうけど」

「ふうん…… ところで、『自由市』って、何?」

「『自由市』というのは…… なんと言っていいか、多分、厳密な定義はないと思うけど、『貴族の身分を有する世襲領主によって治められているのではない』くらいの消極的な意味で理解しておけばいいと思うよ」

 すなわち、帝国には、公爵とか侯爵とか伯爵とか、いわゆる封建領主の支配する町のほか、自由民による自治が認められた町があり、バイソン市はその一つとのこと。バイソン市では、自由民(ただし高額納税者に限る)の選挙によって市長が選ばれ、その任期は7年。市長は市の執行機関として、立法機関である市議会(同様に高額納税自由民の選挙による)とともに町を統治しているらしい。

「あんなおデブが市長さんか。裏ではかなり、あくどいことをしてそうな感じだけど……」

「かもね。20年以上、市長をしているみたいだから。でも、マスターも……」

 プチドラは口をつぐんだ。言いたいことは、なんとなく分かる。自慢にならないと思うけど、わたしだって、あくどさにかけては負けていないつもりだ(こんなことで張り合っても仕方がない?)。


 屋敷に戻ると、パターソンが驚いた顔でわたしを迎えた。

「どうしたの、わたしの顔に何かついてる?」

「いえ、予想外に早いお帰りだったのもので、ビックリしました」

「詰まらないから途中で抜けてきたのよ。そんなことよりも、あなた、知ってる?」

 わたしはバイソン市長のアイアンホースという男に商談を持ちかけられ、出先機関までの地図を受け取らされたことを話した。

 すると、パターソンは顔をしかめ、

「それは、相当に問題のある人物に目をつけられましたね。しかも、今は、ちょっぴり微妙な時期です」

「問題がありそうなことは分かるわ。見るからに怪しかったから。でも、『微妙な時期』って、どういうこと?」

「バイソン市では、近々、選挙が行われる予定なのです。選挙には、現職のアイアンホース氏のほか、新人のブライアン氏が立候補を表明しているそうですが、市長としての立場での話なら、せっかく商談がまとまっても、選挙の結果によってはキャンセルされる可能性も無きにしも非ずということです」

「あのデブ……じゃなくて、アイアンホースが負けそうなの?」

「いえ、アイアンホース氏の勝ちは動かないだろうと言われています。でも、選挙ですから、開票が終わってみないことには、なんとも……」

 なんだかよく分からないけど、とりあえず、明日、その出先機関とやらに行ってみよう。

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