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ザ☆旅行記Ⅷ 愚劣かつ下劣な話  作者: 小宮登志子
第9章 おぞましい夜
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ゴリラとイボイノシシのような

 公園では、時間が経つにつれ、何十人、何百人と、人々の数は増えていった(今まで、あまり人々の姿を見かけなかったけど、一体どこに隠れていたのだろう)。ただし、誰一人として、納得した顔でやって来る者はいない。

 集まった人々は、光の球に照らし出されたオシャレな小屋を見せつけられ、「これは、なんなんだ?」とばかりに、いぶかしげに顔を見合わせている。


 のみならず……

 ウォッ! ウォッ!

 ンガッ! ンガッ!

 そのオシャレな小屋からは、獣と獣が格闘するような不気味な声が漏れ出し、辺りに響いていたのだった。


 ガイウスは、公園の片隅でこの様子を眺めながら、

「フフフ、面白くなってきたな。でも、まだまだ、これから……」

 笑いをこらえているのか(笑いは後のお楽しみに取っておくのだろうか)、顔の筋肉がピクピクと動いている。

 獣のような声は、さらに高くなり、

 ウォッ! ウォッ! ウォッ!

 ンガッ! ンガッ! ンガッ!

「まるでゴリラとイボイノシシが交尾してるみたいね」

 クラウディアは口に手を当て、その口からは、クククと失笑が漏れた。


 集まった人たちは、「一体、これは、何事か」と、口々に喋り始めた。公園に突如現れたオシャレな小屋や、小屋の周囲に輝く光の球や、小屋から聞こえる恐ろしげな声の正体は、なんなのか、また、避難命令が出ている割に災害みたいな感じがしないのはなぜか、等々。

 そして、その間にも、

 ウォッ! ウォッ! ウォッ! グォッ!! グォッ!!!

 ンガッ! ンガッ! ンガッ! ンギャッ!! ンギャッ!!!

 獣のような声は益々高まり、公園中に響いている。人々の表情には、徐々に、不安の色が現れてきた。この小屋の中にいるのが本当に猛獣なら、そして、その猛獣が小屋から出て暴れ出したら、どういうことになろうか。公園を離れたいのはやまやまだが、その場合は、市長からどんなお咎めがあるか知れない、みたいな。

「さあ、そろそろ頃合いのようだな」

 ガイウスは、右手を挙げ、合図を送った。

 すると、オシャレな小屋は音もなく消失し、その場に現れたのは……

 恍惚とした表情を浮かべ、「グホォッ!!!」とか、「ギェェッ!!!」とか、獣とも魔物ともつかない雄叫びを上げるツンドラ候とブライアンだった。

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