気乗りがしなくても
アイアンホースは「アイタタタ」と顔を押さえ、
「伯爵様、大変なことになりました。パトリシアが、パトリシアがぁー!」
予想していたけど、やっぱり、そういうことなのね。話によれば、パトリシアが、この前(の食事の時)に大暴れしてから、口を一切きいてくれないとのこと。手違いで計画が狂い、きっと、今も市長公邸から逃げ出せずにいるのだ。その怒りが治まらないのだろう。でも、投票日までは、あと一週間くらいのはず。パトリシアに構っている余裕はないはずだけど、この人は、一体、何を考えてるんだか……
「アイアンホース市長、実は、妙案があるのですが」
「妙案というと、パトリシアとすぐに仲直りできるような、ステキにすばらしい方法なのですか?」
「いえ、そうではなく、選挙の話です。ブライアン氏を再起不能にできそうなスキャンダルです」
「ああ、選挙か。そうだな、確か、お願いしていたっけ」
アイアンホースはガッカリしたように言った。本当に、当事者意識があるのかしら、この人……
「投票日前日に、この町の公園、最初に通りがかったとき、白い羽根帽子の一団がアジテーションしていたところですが、そこに、できるだけ多くの市民を集めてほしいのです。」
「市民を集めて、どうしようというのかね?」
「ブライアン氏の、とっても恥ずかしい姿をさらすのです。彼は、きっと、外を歩けなくなりますよ」
「ふ~ん…… でも、市民を集めると言ってもなぁ……、法的根拠がなぁ……」
「大規模な災害が発生したということで、公園への避難命令を出しましょう。命令違反は、当然、死刑です。後から誤報だったということにして……とにかく、なんでもいいから、市民を公園に集めることです」
アイアンホースは「う~ん」とか「ああ~」とか言葉を濁し、なんとなく気分が乗らない様子。しかし、(途中の経緯は省略するが)無理矢理ねじ込んで、結論的には、投票日前日に避難命令を発令してもらうことになった。
その後、わたしはすぐに馬車を用意してもらい、市庁舎を出た。行き先は、もちろん、ブライアンの事務所。投票日前日にブライアンを公園まで連れてくる役目は、パークに引き受けてもらおう。この日、ブライアンは、ご都合主義的に遊説に出ていて、事務所にいなかった。パークはわたしを応接室に通すと、
「あの、アイアンホース市長の説得は、うまくいきましたでしょうか」
「ええ、バッチリよ。市長は大喜びしてたわ(ウソ)。『今回の選挙で当選できるなら、パトリシアはくれてやる。ついでに、後継者はパークだ』と言ってたわ(大ウソ)」
「そ、それは、本当ですか!!!(だから、ウソだって(以上、カッコ内は、わたしの内心の声))」
パークは大喜びし、本当の意味で自発的に、ブライアンを投票日前日に公園まで連れてくることを約束した。ちなみに、殺し文句は、「史上最大の△△△で○○○を激しく×××されますから、これまでにない最高の気分を味わえますよ」とのこと。




