空輸(運賃はタダ)
灰色のフード付きローブに身を包んだダーク・エルフたちは、総勢10人程度。慣れているのだろう、動きは素早かった。巧みに馬車のドアを取り外してツンドラ候を外に運び出し、大きな檻に運び込んだ。
ガイウスはフードを外し、檻に鍵をかけ、
「あとは、このゴリラをバイソンの町まで運び込むだけだね」
と、右腕を上げて合図を送った。すると、数人のダーク・エルフが各々の得物にまたがって垂直上昇。その得物からは鎖が伸びていて、鎖の先端に鉤がついている。鉤は檻に引っかけられていて、そのため檻もゆっくりと宙に浮いた。
ガイウスは、何やら意味ありげに、ニヤリとして、
「ついでだから、我々が運んでいこう。ドラゴンのスピードには及ばないが、バイソン市までは5日程度かな。大丈夫だよ。それに、万が一、このゴリラがケガをするとしても、タンコブができる程度だから」
「期限内に、無事、バイソン市まで送り届けてくれるなら、お願いするわ」
投票日まで間に合うなら、わたしとしては大助かりだけど……
ただ、運んでいく間に、ツンドラ候はどんな目に遭わされるのだろうか。気にならないことはないが、「タンコブができる程度」ということだし、常人離れして頑健なツンドラ侯のことだから、問題ないだろう。
「それじゃ、我々は、先に行くよ」
「カトリーナさんも、どうか、お気をつけて」
ガイウスとクラウディアは腕を組み、その場からスッと消えた。ガイウスお得意のテレポートだろう。他のダーク・エルフたちも、ある者は空を飛び、別の者はテレポートで、全員、その場から姿を消している。
「それじゃ、ボクたちも行こうか」
プチドラは、体を象のように大きく膨らませ、巨大なコウモリの翼を左右に広げた。左目が爛々と輝く。
わたしは、伝説のエルブンボウと媚薬「ムッフッフ」の入った風呂敷包みを持って、隻眼の黒龍の背中によじ登り、
「行きましょう。いつまでも、こんなところでグズグズしていられないわ」
隻眼の黒龍は、巨大なコウモリの翼をさらに大きく広げ、空中に舞い上がった。とりあえず、帝都を早く離れよう。わたしが犯人の一味だという証拠は残していないはず。後から何か聞かれても、適当に言い抜けることにしよう。怪しまれるだろうが、少なくとも、後ろに手が回ることはないと思う。
隻眼の黒龍は、大河に沿って、「五色の牛」同盟を構成するカーフ、オックスの上空を通過、3日ほどでバイソン市に到着した。市庁舎の最上階では、なぜかアイアンホース市長が泣きそうな顔でわたしを待っていて、
「伯爵様~!!!」
いきなり腕をいっぱいに広げて抱きついてきた。わたしがとっさに身をかわすと、アイアンホースは壁に激突して鼻血を流した。何があったのか、大体、想像はつくが……




