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ザ☆旅行記Ⅷ 愚劣かつ下劣な話  作者: 小宮登志子
第8章 ○○○に△△△を×××
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商品名「ムッフッフ」

 その翌日(の午後)、

「カトリーナ様、ただいま戻りました。値は張りましたが、どうにか手に入れました」

 買い物から戻ったパターソンが言った。目当ては、もちろん、強力な媚薬。ガイウスやクラウディアに世話になってばかりはいられないので、今朝からパターソンに買いに行かせたものだ。

 パターソンは、ふところに手を突っ込んで、怪しげな液体の入った小ビンを取り出し、

「これです。商品名『ムッフッフ』、現在市販されている媚薬の中では、最も強力と言われています。余りにも効果が強すぎるので、劇物に指定され、現在では、一応、製造中止となっています」

「へえ、そうなの。でも、そんな、製造中止になるようなもの、よく手に入ったわね。」

「ええ、正規のルートでは、入手不可能です。なので、裏のルートで、その分、かなり割高です」

 パターソンが示した請求書を見てビックリ、これだけのお金があれば、帝都で立派な家が建つのではないか。ただ、それだけに、効果は絶大。経口投与により体内に取り込まれれば、神経系に作用し、性欲が異常に増進、見境なく襲いかかるらしい(ただし、ノーマルな人をアブノーマルにするまでの効果は期待できないとのこと)。


 薬を持って「開かずの間」を通り、地下室に行ってみると、ガイウス、クラウディアを始め、ダーク・エルフたちが、バタバタとあわただしく歩き回り、準備をしている最中だった。

 クラウディアは、わたしの姿を認めると、作業を中断し、

「まあ、カトリーナさん!」

 と、わたしのもとに駆け寄りって手を握った。

 ガイウスは、作業を続けながら、

「もうすぐ準備完了だよ。モンスターでも破れないような、頑丈な檻を用意した」

 この檻に入るのは、もちろん、ツンドラ候。とりあえず適当に檻に押し込もう。そのままにしておいても(つまり、エサをやらなくても)、少しの間なら、大丈夫だろう。


 そして、この日の夕方、応接間でくつろいでいると、

「うぉ~い、俺様だ! 今日もまた、来てやったぞぉーーー!!」

 にわかに玄関先が騒がしくなった。誰かは言うまでもないだろう。

 パターソンはニヤリとして、

「ようやく、おいでになったようですね」

 わたしは、右手にプチドラを抱き、左手に伝説のエルブンボウと媚薬「ムッフッフ」の入った風呂敷包を持って、立ち上がった。

 パターソンも同様にソファから立ち上がり、ひと言、

「成功をお祈りしています」

 これからの段取りとしては、わたしが応対に出て、「再会を祝して」及び「これまでの音信不通のお詫び」という名目で、ツンドラ候をゲテモン屋に誘うことになっている。その途中で賊(つまり、ダーク・エルフ)に誘拐されるという、ありきたりの展開。通常の判断力があれば、不自然なことに気付くかもしれない。でも、ツンドラ候だから……

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