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ザ☆旅行記Ⅷ 愚劣かつ下劣な話  作者: 小宮登志子
第7章 パトリシアとアイアンホース
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謎が解けて

 わたしを見た途端、驚いたのか感動したのか知らないが、白い羽根帽子の連中はどよめいた。列の真ん中にいたリーダーと思しき男は、わたしを連れてきた御者を呼び寄せ、大声で「バカヤロウー」と怒鳴る。何か手違いがあったのだろう。白い羽根帽子たちは、輪になってヒソヒソと話を始めた。一体、何を話しているのやら。

 やがて、話の輪が解け、白い羽根帽子が二人、スタスタと、わたしに向かって歩き出した。白いアイマスクのせいで表情は読み取れないが、友好的な感じはしない。

 わたしは胸の高さまでプチドラを持ち上げ、

「頼むわ。とりあえず、連中の動きを封じましょう」

 プチドラは小さくうなずき、金縛りの呪文だろう、モゴモゴと口を動かした。すると、白い羽根帽子たちは、全員ピタリと動きを止め、歩いてきた2人は慣性の法則に従って前のめりに倒れた。

「正体を見せてもらおうかしら」

 わたしは、(「バカヤロー」と大声を出した)リーダーと思しき男のところに赴き、多少背伸びしながら、白い羽根帽子と白いアイマスクをはぎ取った。

 すると、その下から出てきた素顔は……

「あら、あなたは……、でも、どちらかと言えば、やっぱりかしら?」

 その正体は、どこから見ても平凡な秘書、サイモン・パークだった。パークは目を大きく見開き、唇をプルプルと震わせている。わたしのことをどの程度知ってるのか知らないが、いきなり魔法をかけられて、かなりビビっている様子。

「え~っと、なんだかよく分からないけど、とりあえず、説明してくれる? 断ったらどうなるか、分かるわね」

 すると、パークは(可能な範囲で)何度か首を上下に動かし(何度も言うようだけど、金縛りの効力をあまり厳密に考えないように)、おののきながら話を始めた。


 彼の話によれば、結論的には、わたしがここにいるのは人違いで、本来ならパトリシアがいなければならないとのこと。パークはパトリシアと「ムフフの仲」、以前から市長公邸に何度も忍び込んで密談を重ね、彼女を公邸から連れ出す約束をしていた(ただし、これは選挙とは無関係で、純粋に「愛ゆえに」らしい)。計画では、アイアンホースが仕事中で公邸にいない間に、こっそりと市庁舎に馬車を出し、パトリシアを乗せてくるはずだった。

 しかし、アイアンホースが休暇を取って公邸にいたのがケチのつき始めで、実行を延期すればよかったものを、パトリシアが強引に「もう我慢できない、この日でなければダメ」と主張したことから、歯車が狂い始めた。その後の展開は、わたしが公邸で見たとおりで、パトリシアがいつも以上に荒れていたのは、なんとしても(計画を覚られずに)公邸から抜け出さなければならなかったから。

 さらに、致命的なのは、迎えにきた御者がパトリシアの顔を知らなかったこと。パーク自ら迎えにくればよかったのに、序列の関係で、仲間のうち一番の若手が(パトリシアの顔を知らないのに)「御者」に選ばれたという。


 ともあれ、結果的には、白い羽根帽子の連中の身柄を確保できたことにもなるわけで、しかも「未成年者誘拐」という立派な罪状もできた。さあ、どうしてくれようか……

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