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ザ☆旅行記Ⅷ 愚劣かつ下劣な話  作者: 小宮登志子
第7章 パトリシアとアイアンホース
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馬車の行き先

 もう一度「ふぅー」とため息を漏らしながら、プチドラを抱いて席に腰掛けると、馬車は静かに動き出した。パトリシアに振り回され選挙対策に手が回らないという状況では、アイアンホースの敗北は濃厚だろう。わたしに直接の損害はないにせよ、逸失利益や機会利益を計算してみると、それなりの額に上りそうだ。

 馬車は、市長公邸の灰色の壁の前を過ぎ、清潔な通りをゆっくりと進んでいく。いつもと同じような風景に、同じような建物が並んでいる。でも、なんだかちょっと、違和感があるような……

 しばらく進んだところで、プチドラがピョンとわたしの肩に飛び乗り、いつもよりもさらに小さな声で、

「マスター、なんだか少しおかしいよ」

「『おかしい』って、どこが?」

 プチドラは、一瞬、大きくと口を開け、

「気がつかないの? この辺りには、今まで来たことがないんだけど」

 なるほど、言われてみれば、あまり見覚えのない光景のような「気」もする。ただ、方向音痴のせいか、「具体的にどこがどう違うのか説明せよ」と言われると困るけど。

 それに、「おかしい」といえば、この御者もそうだ。わたしが乗り込むと、行き先も聞かず、いきなり馬車を出した。

「もしかすると、この御者はボクたちを誘拐する気かも……」

「そうね。でも、その時……いざという時には、お願いするわ。大抵のことは、大丈夫よね」

 プチドラは「任せて」というふうに、わたしの肩の上に立ち上がり、小さな手で小さな胸をたたいたが、その時、馬車が少し速度を上げたため、プチドラはバランスを崩し、落っこちそうになった。本当に大丈夫かね……


 馬車は速度を上げながら、人があまりいない通りを疾走していく。

「ねえ、もう少しスピードを落としなさいよ。いろいろな意味で危ないと思うけど」

 しかし、御者は前を向いたまま、馬に鞭を当て、

「心配いりません。もうしばらくすれば着きますから、それまで、どうか、ご辛抱を」

 御者の目的は分からないが、わたしをどこかへ連れて行こうとしているのは確か。だとすると、この御者も本当の御者ではなく、誘拐団か強盗団の一味かもしれない。今この場でやっつけるのは簡単だけど、それではなんだか味気ない。何々団でも構わないが、そのリーダーに会ってみたい気もしないではない。

 しばらくすると、馬車は徐々にスピードを緩めていった。そして、通りに面した門をくぐり、大きくて白っぽい建物の前で停まった。御者は馬車のドアを開け、

「着きました。さあ、降りてください。パークさんが待ってますよ」

 パーク? なんのことだかよく分からないが、とりあえず行ってみれば分かるだろう。御者に案内され、その建物の中に入ってみると、そこには、白い衣服の上に白いマントをなびかせ、白い羽根帽子に白いアイマスクという、いつもの「白い羽根帽子」が一列に整列していた。

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