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ザ☆旅行記Ⅷ 愚劣かつ下劣な話  作者: 小宮登志子
第7章 パトリシアとアイアンホース
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気合を入れて

 次の日、わたしはプチドラを抱いて、宿所のホテルで呼んでもらった馬車に乗り、このところは「例によって」となった市庁舎に向かった。とりあえずは昨日の結果報告と今日の段取りの説明。パークと白い羽根帽子については、事実を確認するまで(すなわち現場を押さえるまで)黙っていることにしよう。

 プチドラは先刻から腕を組み、「うーん」と難しい顔をしている。

 わたしはプチドラを抱き上げ、その耳元で、

「どうしたの? 今朝、説明したでしょ。選挙事務所でブライアンに擦り寄り、彼がその気になればそれでよし。間一髪でセーフみたいに、うまくやって頂戴。その気にならなければ、金縛りの魔法をかけて、わたしが押し倒されてる場面を演出するのよ。事務所に入って5分後には、『異変に気付いた』御者が、決定的シーンを目撃するわ」

「でも…… こればかりは、なんというか……」

 プチドラは気が進まなさそうな様子。でも、お金もお酒もダメだったし、手段としては、これ以外ないだろう。そうこうしているうちに、馬車は市庁舎に到着。


 馬車を降りると、やはりここでも「例によって」、わたしは左手で顔を覆い(右手はプチドラを抱いて)、一気に階段を駆け上がった(理由は、念のため再掲すると、アイアンホースの黄金の像)。

 市長室の一つ下の階のドアを開けると、珍しく職員がまったりとくつろいでいた。「なぜか」と尋ねてみると、職員は満面の笑みを浮かべ、

「今日は、市長が都合により、休暇を取得しました」

 なるほど。アイアンホースが職員から(口には出さないが)いかに嫌われているかが、よく分かった。なお、「ジンクも市長公邸で待機していて、今日は市庁舎に出てこないだろう」とのこと。アイアンホースは、あれだけパトリシアにボコボコにされていたのだから、回復まで時間がかかるかもしれない。でも、投票日は近いし、本来ならば気合と根性で出てくるべきところだろう。ともあれ、わたしとしては、この際、アイアンホースがどうあれ決行あるのみ。


 わたしはプチドラを抱いて階段を降り、市庁舎の正面玄関から、再び馬車に乗った。馬車は、清潔で小奇麗な通りを抜け、やがて、ブライアンの選挙事務所前に到着。

 わたしは馬車を降りると、御者を呼び寄せ、

「わたしが事務所に入ってから5分後くらいに、あなたは、『大変だぁ!』とか、適当に大声を上げながら、事務所に飛び込んできなさい」

「えっ? はい、仰せとあらば、そのようにいたしますが、それは、一体、どのような意味で??」

「あなたには、目撃者及び証人になってもらうから、そのつもりでね」

「はっ……はい。了解いたしました。しかし……」

 御者は、まだよく事情が飲み込めないらしく、首をひねっている。でも、一応、5分後には踏み込んできてくれることは間違いないだろうから、なんとかなるだろう。

 わたしはエイヤと気合を入れ直し、ブライアンの事務所の戸を叩いた。

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