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ザ☆旅行記Ⅷ 愚劣かつ下劣な話  作者: 小宮登志子
第4章 「アイアンホース~左から5匹目」
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落選の理由

 パトリシアは自信たっぷりだ。でも、今回も「カレ」の話の受け売りだろうか。

「忠告ありがとう。でも、その『命運は尽きた』って、具体的には、どういう意味?」

「まあまあ、まずは、お掛けなさいよ。夜は長いわ。話をする時間くらい、いくらでもあるから」

 パトリシアは質問に答えず、わたしに椅子を勧めた。わたしは言われるがまま、椅子に腰掛け、プチドラを机の上に降ろす。そして、パトリシアが反対側の椅子に座り、パンパンと手を叩くと、料理が次々と運ばれてきた。


「あっ、それで…… え~っと、なんだったっけ……」

 パトリシアは、もどかしげに天を仰いだ。何か思い出そうとしているような様子(……って、今言ったばかりだろう)。

「お父様の『命運は尽きた』の意味を伺いたいのよ」

「ああ、そうだったわね。ごめんなさい」

 パトリシアは恥ずかしそうに、頭を軽く叩いた。見たところ、心ここにあらずといった感じだけど、一体、何を舞い上がっているのだろう。

「あのブタ……、いえ、父のことね、つい、うっかり…… でも、分かるでしょう。次の選挙では、父はきっと落選するわ」

「その話は前にも聞いたわ。どうして落選するのか、その理由を知りたいのよ」

「理由? そんなの、説明がいらないくらい、ハッキリとしているわ」

 これでは前回と同じだ。理由にならない理由で、結局は「カレが言ったから」で終わるのだろうか。

「有権者の支持が得られなければ、落選するに決まってるわ。バイソン市のお金持ちたちは、今や、父を見放しつつあるの。投票日には、きっと、ブライアン氏に投票するわ」

 パトリシアは、得意げに言った。バイソン市で選挙権を有するのは高額納税者のみで、彼らの支持が結果に直結する。彼女の話が本当なら、市庁舎でアイアンホースが荒れていたのは、このためだろう。ただ、なぜ、今になって、もともと貧困層から支持されていたブライアン氏に対し、富裕層が支持を始めたのか、疑問が残る(アイアンホースに飽きてきたということも、理由のひとつかもしれないが)。

 ところが、パトリシアにそのことをきいても、帰ってくる答えは、

「知らないわ。カレがそう言ってたんだから」

 やはり、最後には、「カレが言った」ことが、真理の「最終的確定規則」になってしまった。

「落選すれば、父も、お終いよ。今までの悪政に対して、正義の裁きが下されるわ」

 パトリシアは楽しそうに言った。自分の父親を云々という儒教的道徳は別にしても、落選を機に任期中の犯罪が暴かれて父親が処罰されるようなことがあれば、悪くすれば全財産没収。その場合には、パトリシア自身も無事には済まないはずだ。

「あのね、お父様が犯罪者にされるということは……」

「いいの。父がどうなろうと関係ないわ。それに、もうすぐ、この公邸とも、おさらばできるんだから」

「えっ!? それって、どういうこと?」

「言えないわ。だって、カレが『秘密に』って」

 やっぱり「カレ」かい……

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