「アイアンホース~左から5匹目」
その声の主は、やはり、白い衣服の上に白いマントをなびかせ、白い羽根帽子に白いアイマスクという非常にふざけた格好の連中だった。
「我々は、アイアンホースの不正を断固糾弾するとともに、市政の刷新を強く要求する!」
白い羽根帽子集団は、2人1組になって、公園のあちこちに植えられた木の上に登り、アイアンホースを激しく非難しながら、ビラをばらまいている。
「こら! おまえたち、下りてこい!! 公園でのビラまきは禁止されている!!!」
衛兵たちは、顔を真っ赤にして怒鳴り声を上げている。しかし、単に怒鳴っているだけでは、どうにもならない。ただ、その光景が非常に滑稽だったのか、広場のあちこちから、聴衆の失笑が漏れた。
のみならず……
「あっはっは、なんだ、こりゃ!」
「バカだね~」
聴衆はビラを拾い上げると、余程面白いことが書いてあったのだろう、腹を抱えて笑い出した。
衛兵たちはビラを見るなり、顔面蒼白になって、ブルブルと全身を震わせ、
「見るんじゃない! 一般市民ども、違法ビラを拾って読むことも、同じく、法令違反だぞ!!」
と、大慌てでビラの回収を始めた。
白い羽根帽子集団は、その様子を木の上から見下ろしながら、
「我々は、けっして、アイアンホースの再選を許さないぞ!」
最後にそう言い残し、風のように去っていった。よく見ると、最初に演説をしていた中肉中背の中年男もいなくなっている。
その男が何者かは知らないが、状況的には、対立候補のブライアン氏以外に有り得ないと思う。ブライアン氏と白い羽根帽子集団は、裏でつながっているに違いない。その証拠はないが……というか、もし証拠があれば、ブライアン氏を含めて全員が逮捕され、アイアンホースは対立候補がいなくなって、今頃は左団扇だろう。
「そろそろ戻りましょうか」
ふと見ると、既に日は西に傾いている。今まで白い羽根帽子集団に気を取られていて、気がつかなかったけれど。
「そうだね。面白いものも見せてもらったし。でも、ちょっと待って」
プチドラは、馬車の窓からピョンと地面に飛び降ると、落ちていたビラを拾い、大急ぎで戻ってきた。
プチドラは、そのビラをしげしげと見つめながら、
「なるほど、これなら確かに『違法ビラ』だね」
「どれどれ…… ワッ!」
わたしはビラを見てビックリ。ビラには、旧ソ連のジョークさながらに、どこかの農場でブタに囲まれるアイアンホースの肖像とともに、デカデカと大きな字で「アイアンホース~左から5匹目」という説明文が書かれていた。




