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ザ☆旅行記Ⅷ 愚劣かつ下劣な話  作者: 小宮登志子
第4章 「アイアンホース~左から5匹目」
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公園にて

 馬車は公園の中を、ゆっくりとした速度で進む。公園にも、市街地と同様に清潔感がただよっている。でも、やはり人影はまばらで、来場している人数は、この前に来たときよりもむしろ少ないかもしれない。公園の概念に矛盾するようだけど、公園への入場資格を制限しているということも、ありそうな話だ。

 やがて、馬車は、中心部にある広場に差し掛かかった。不思議なことに(というより、むしろ御都合主義的に)、広場には人々が集まっており、人々を前に即席の演壇が設けられていた。

 演壇では、何者か知らないけど、中肉中背の中年の男が演説を行っている。

「アイアンホース市長の市政は、確かに素晴らしかった。市長のおかげで、産業が興り、治安が良くなり、人々の生活水準は向上した」

 アイアンホースへの応援演説だろうか。でも、よく見ると、広場のあちこちには衛兵が配置されている。応援演説なら、衛兵は必要ないだろう。男は身振り手振りを交え、時折、聴衆から声援を受けながら、話を続けた。

「確かに、バイソン市をここまでのし上げたのは、アイアンホース市長ひとりの功績と言ってよい。その功績は正当に評価しなければならない! しかし! しかしだ!! 諸君!!!」

 男は拳を振り上げ語気を強めた。「しかし」に力を込めるということは、今までアイアンホースを誉めていたのは単なる前置きで、本題はこれからということだろう。聴衆も、そのことを十分に承知しているようで、何かを期待するように、ざわざわと色めき立った。


 しかし、その時、不意に衛兵が乱入し、

「止め! その演説は中止だ!!」

 と、演説に聞き入っていた人々を蹴散らし、演壇を取り囲んだ。

「直ちに演説を中止せよ。もし、このまま続けるならば、公園秩序維持法に違反するおそれがあるぞ!」

 すると、男は、やれやれといった顔で演壇を降りると、無言で人々に向けて手を振った。

 衛兵は槍を構え、人々を家に帰そうとしているが、期待を裏切られた聴衆は、口々に欲求不満を表明し、

「横暴だぞ、官憲!」

「そうだそうだ! 言論を権力によって封殺するのか!!」

「てめえらに理解できないからって、いい加減な命令を出すんじゃない!」

 おそらくは、先ほどの「しかし」の後に、アイアンホースを批判する内容が(直接的か婉曲的かはともかく)続く予定だったのだろう。楽しみを奪われた聴衆は、怒りの声を上げている。


 ところが、(またもや)その時……

「そうだ! これが薄汚いアイアンホースの本性だ!!」

 突然、若い男の声が広場に響き渡った。姿は見えないが、話の流れ的には、「これ以外には有り得ないんだぜ」というくらいの必然性をもって……

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