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ザ☆旅行記Ⅷ 愚劣かつ下劣な話  作者: 小宮登志子
第4章 「アイアンホース~左から5匹目」
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選挙戦の行方は?

 何度となく市庁舎に出入りしているうちに、少しずつ商談もまとまってきた。完全にこちらの思うようにとはいかないが、大方は満足できる内容だ。こちらの都合、すなわち、親衛隊に宝石を運ばせ、その交代時期に合わせて宝石を納品するという段取りについては、バイソン市側にも依存はないとのこと。受渡し場所は、帝都におけるバイソン市の出先機関ということで同意。妥当なところだろう。

 気がかりなのは、ジンクが居合わせないことが多くなってきたこと。仕事の都合ということで、30分程度待たされることは珍しいことではなく、場合によっては2~3時間以上ということも……

「いい加減にしてほしいわ。わたしだって、そんなにヒマではないんだから……」

「えっ、『ヒマではない』って…… マスター、それは、本当?」

「プチドラ、本当でもウソでもいいけど、こういう場合は調子を合わせておくものよ」

 正直、今のところ、わたしはヒマだし、待たされても現実的な支障があるわけではない。でも、そうはいっても、少しばかり立腹しているところを見せておくのも、交渉のテクニックだろう。

 そこで、応対に出た市の職員には、チクリとひと言、

「『法治国家』は時間にルーズなのね」

「申し訳ございません。おっしゃることはごもっともでございます。しかし、実は、その、こればかりは、ちょっと……」

 職員は応対に困っているようだ。個人的には、非常によく分かる話だ。


 待たされている間、何気なく話を振った市の職員から、世間話のついでに、バイソン市の選挙情報を、いくつか聞き出すことができた。ただ、情報といっても大したものではなく、世間一般で言われているようなものばかりだけれど、何もないよりマシだろう。

 職員が(現職のアイアンホースを讃える言葉をはさんだうえで)話したところによると、対立候補はマイケル・F・ブライアン氏で、元々市民運動家出身、これまで、貧困層への生活扶助費給付運動、就学困難児救援事業等々で名を売ってきたとのこと。特に平均以下の生活水準の市民に絶大な人気があるらしい。

「アイアンホース市長は、今回も大丈夫でしょうか。万が一の話ですが、もしかして、ひょっとして……、みたいなことは?」

「いえ、そんなことは、断じて、有り得ないです。絶対に!」

 その職員は、自分の命が懸かってるくらいの勢いで質問を否定した。そして、さらに力をこめて、同じ答えを繰り返す。

「アイアンホース市長が負けるなんて、絶対に有り得ないことです!」

「おっしゃることは分かるのです。ただ、あまり想像したくはないのですが、貧困層を中心に、対立候補に票が流れた場合には、あるいは……」

 すると、その職員は、「はぁ?」と不思議そうな表情を浮かべ、

「いやいや、いくら貧困層の支持を受けても無意味です。この町では、選挙権を有するためには一定以上の納税額が必要とされているのですから」

 バイソン市では当然のように、財産権による制限選挙が採用されている。うっかり忘れていたけど、とりあえずは、納得。

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