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ザ☆旅行記Ⅷ 愚劣かつ下劣な話  作者: 小宮登志子
第4章 「アイアンホース~左から5匹目」
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アイアンホースの業績

 次の日からは、しばらくの間、宿舎のホテルと市庁舎を往復する日々が続いた。目的は、もちろん商談。できるだけ高値で、かつ、こちらの危険が少ない方法で、宝石を売りつけてやろう。市庁舎で出迎えてくれるのは、アイアンホースではなく、常にジンクだった。「市長は仕事が忙しくて顔を見せる時間もない」らしい。でも、忙しいのは仕事ではなく、選挙ではないか。政治家にとって、一番の仕事は選挙かもしれないが……


 現職、しかもバイソン市の絶対的な支配者であるアイアンホースが負けるとは思えないけど、この前の「ルイス・マンフレッド・アイアンホースを励ます会」でパトリシアから妙なことを聞かされたので、なんだか気がかり

「ジンクさん、ところで、選挙はどんな按配でしょうか」

「今回も勝てると思いますよ。これまでの実績を市民が正しく評価してくれるでしょう」

 ジンクによれば、アイアンホースが市長に当選する前は、バイソン市は今ほど発展していなかったらしい。一応、船舶や隊商の通行が多い大河の畔に位置していることから、通行税の収入を当てにすることができたが、他に目立った産業がなく、どこかうらぶれた感のある地方都市だったとのこと。そのせいか、町は、多少誇張して言えば、ハードボイルドが似合うくらいに荒れていて、麻薬がはびこり、強盗が跋扈するくらい、非常にバイオレンスだったとか。また、古くからの伝統として、周辺都市との関税同盟(「五色の牛」同盟)が締結されていたが、それもほとんど名ばかりで、実質的には意味がなかったとのこと。

「これはまた、なんとも……」

「ええ、その当時は、言ってみれば、本当にどうしようもない町だったのです。しかし、アイアンホース市長が当選した後に、町はすっかり変わりました」

 ジンクはグッと手に力を込めた。

「今のバイソン市の繁栄は、すべて、アイアンホース市長の手腕によるものなのです」

 アイアンホースは市長に当選すると、大胆に予算を組み替えて大規模な投資を行い、高付加価値の製品を産み出す産業の育成に力を注いだ。さらに、「安全・安心の町」をスローガンとして、治安の維持・強化に努め、犯罪者には厳罰をもって臨んだ。その結果、1期目の任期が終わる頃には、町は見違えるくらいに住みよくなっていたという。

 そして、2期目には、有名無実となっていた「五色の牛」同盟を、現実に機能するよう再生させ、域内経済の連携強化にも成功したとのこと。それにより、バイソン市が対外的に「五色の牛」同盟の盟主と見なされるようになるなど、市の国際的地位の向上にも大いに貢献したという。

 ジンクの話を鵜呑みにするわけにいかないが、多少割り引いて考えるとしても、アイアンホースという男、ひとかどの人物なのだろう。ブタが服を着て歩いているような外見からは、全然、そのように感じられないとしても……


 それはさておき、

「ところで、肝心な話はどうなったのかしら?」

「肝心な話? ああ、商談の最中でしたな。これは、失礼いたしました」

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