表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅷ 愚劣かつ下劣な話  作者: 小宮登志子
第3章 市長アイアンホース
18/82

ブヨブヨした両手で

 わたしはアイアンホースに勧められ、あまり気乗りはしないけれど、(玉座と勘違いしたみたいな)けばけばしい椅子に腰掛けた。

 その時、入り口のドアが開き、「失礼いたします」と、初老の男が部屋に入ってきた。それを見たアイアンホースは、

「おお、ジンク、来たか。あとは頼むぞ」

 と、その男の肩をポンとたたいて、わたしの方に向き直り、

「伯爵様、誠に申し訳ないのですが、私もこのところは多忙でございまして、直接お話をする時間がないのです。そこで、副市長で私の秘書も務めております、この、ダニエル・P・ジンクと具体的な話を詰めていただければと思うのですが、いかがでしょうか。有能で非常にキチッとした、つまり間違いのない男でございますが」

 すると、ジンクと呼ばれた初老の男は、無言で頭を下げた。見た感じ、気難しくて融通が利かなさそうだ。でも、アイアンホースが選挙で忙しいなら、仕方がない。副市長で秘書兼務ということだから、それなりに仕事もできるだろう。「OK」の旨を伝えると、アイアンホースはホッとしたように、

「恐れ入ります。これで私は選挙運動……、いや、その、何ですな、そのことはともかく、伯爵様、宿所などは、既に決めておられるのでしょうか」

「いえ、まだだけど」

「それでしたら、私どもの方で手配した宿がありますので、詳細はジンクにお尋ね下さい。それと、もうひとつ、今晩、市長公邸でパーティーを催すことになっておるのです。よろしければ、伯爵様にも、ぜひ、御出席いただければと思うのですが、いかがでございましょうか」

「パーティーに出席? いいわよ」

「おお! それはありがたいことで!!」

 アイアンホースは、いきなりブヨブヨした両手を差し出し、わたしの両手を握りしめた。

 突然のアクシデント! わたしは、思わず「ギャッ」と悲鳴を上げるところだった。とにかくキモイ。アイアンホースはわたしの手を握ったまま何度も繰り返し頭を下げ、ようやく手を離すと、上機嫌で市長室を出た。


 わたしが青白い顔をこわばらせていると(アイアンホースとの握手は、ほとんど拷問に近い)、

「伯爵様、よろしゅうございますか?」

 ダニエル・P・ジンクは、資料を示しながら、バイソン市側の要望について説明を始めた。でも、今は、そんなことはどうでもいい。とにかく早く手を洗いたい。

 一方、ジンクは、話がわたしの耳に入っていないのを察したのか、

「伯爵様は、お疲れのようですな。いかがでございましょう。本日は、顔合わせということで、具体的な話は、この次ということでは?」

「是非、そうして頂戴」

「承知いたしました。では、宿所まで御案内いたします」

 ジンクは再び深々と頭を下げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ