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ザ☆旅行記Ⅷ 愚劣かつ下劣な話  作者: 小宮登志子
第3章 市長アイアンホース
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趣味の悪い黄金の像

 馬車が市庁舎に到着するまで、アイアンホースは憤懣やる方ない様子だった。「許可を受けないで集会を開いてはいかんのです」、「そもそも、あのような趣味の悪い集団は、合法的な結社として認められてない」、「市民としての義務を果さずに権利だけを主張する不届き者だ」、「大衆にとって耳ざわりのいいことをだけを言って、人気を取ろうとしているデマゴーグに過ぎない」など、散々に悪口を言っている。

 でも、白い羽根帽子集団が対立候補の応援団だとすれば(彼ら自身が立候補しているわけではないだろうから)、その元締(ブライアンだっけ?)を選挙関係法規違反で逮捕すればよさそうなものだ。

 その点を質問すると、アイアンホースは苦りきった顔で、

「それができれば苦労しないのです。どういうことかと言いますと、証拠がない。あの連中のうち、一人でもいいから、何らかの犯罪現場を押さえるなどして取り調べることができれば、対応の仕方もあるのですが」

「証拠なら、逮捕する時でなくても、後からでも適当にでっち上げれば……」

 すると、アイアンホースは目を丸くして、

「そんなバカな! そんなことは有り得ない!! 我が国は法治国家ですぞ!!!」

 なんだか、妙なところでもキッチリとしている(キッチリし過ぎではないか?)。わたし的には納得がいかないところもあるが、ここはそういうところなのだろう。

 やがて馬車は、市庁舎の門をくぐった。


 市庁舎の建物は、石とレンガの重厚な造りだった。その入口で、アイアンホースはブスッとして馬車を降りた。まだ、怒りが治まらないようだ。

 市庁舎の広いエントランスには、赤い絨毯が敷かれ、両側には職員が整列している。そして、その奥には、アイアンホースの巨大な(しかし、ハッキリ言うと醜い)黄金の像が、市庁舎に入る者を見下ろすように置かれていた。

 アイアンホースは黄金の像の前まで来ると、急に機嫌を直し、

「ははは、あまり人に見せるものではないのですが、いかがですかね。私としては、こんな像を作るよりも、もっと予算を有効に活用したかったのですよ。しかし、市議会の議決で決まったものだから、市長としては、予算を支出しないわけにはいかなくてね」

「それはそれは……」

 わたしは適当に言葉を濁した。こんな趣味の悪い黄金像、本当に人に見せるものではないと思う。なんだか気分が悪くなってきた。

 でも、アイアンホースは、わたしの内心にかかわりなく、至極ご満悦の様子で、

「さあさあ、こちらへ。市長室はこちらでございます」

 アイアンホースに案内され、長い長い階段を登ってようやくたどり着いた市長室は、高台にある市庁舎の最上階を丸々占有していた(市庁舎の主としての特権だろうか)。四方に設けられた窓からは、町を一望のもとに見渡すことができる。でも、たかだか市長室に、市民オンブズマンもビックリ、こんなだだっ広いスペースはいらないだろう。予算の浪費としか思えない。

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