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ザ☆旅行記Ⅷ 愚劣かつ下劣な話  作者: 小宮登志子
第3章 市長アイアンホース
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貧相な中年の男

 城門の向こうでは、貧相な中年の男(責任者だろう)が数名の男(部下だろう)を従えて立っていた。中年の男は、緊張した面持ちで深々と頭を下げ、

「先刻は、大変なご無礼をいたしまして、申し訳ございません。お客様だとは思いもよらず……、え~、こちらの手抜かりは、違うんです……が、ここは、ひとつ……、できましたら、その、このことは……」

 と、なんとも言いにくそうにしている。言葉としては意味不明だが、気持ちは分かる。隻眼の黒龍にも察しがついているのだろう、後方から顔を近づけ、

「『ここであったことを市長に言わないで』というお願いだよ。市長の招待客に武器を向けたということが知れたら、減給か降格か、それとも、もっと重いのか知らないけど、処分が下されるんだ」

 ここの人たちも、宮仕えの身ということで、何かと気苦労が絶えないようだ。

「分かったわ。本当に要領を得ない話し方だけど…… この城門であったことは、今すぐキレイサッパリ忘れてあげるから、アイアンホース市長のところまで、案内して頂戴」

「おお、それでは! 承知いたしましてございます」

 貧相な中年の男は狂喜して、再び深々と頭を下げた。

 隻眼の黒龍は、体を子犬サイズに縮め、わたしの腕の中に飛び込む。このような光景は初めてなのだろうか、貧相な中年の男は、まるで悪魔にでも出くわしたかのように大袈裟に驚き、おののく声で、

「あ……あの~、用意が整うまで、何もないところですが、しばらく、こちらでお待ちいただけばと……」


 わたしとプチドラは、城壁の内側にある小部屋に案内された。事務用スペースだろうか。書類が積み上げられた机が3つほど並んでいる。

 わたしが勧められた椅子に腰掛けると、貧相な中年の男は、またまた深々と頭を下げ、

「アイアンホース市長には、今、大急ぎで使者を送ったところでございます」

 本当に、頭を下げるのが好きな男だ。使者を送ったのが今なら、市長に会えるまで、多少、時間がかかりそうだ。でも、ただ単に座って待ってるのも退屈だから、

「そんなにかしこまらなくてもいいわ。アイアンホース市長って、どんな人?」

「市長ですか。え~っと、それはそれは素晴らしい。これまで連続4期、28年もの間、市長を務められ、今回は5度目の選挙に立候補しておられます。市長のおかげで、このバイソンの町も飛躍的に発展いたしまして、今や『五色の牛』同盟の盟主的な地位にあり、つまり、とにかく『すごい』としか言い様がないと言いますか……」

 貧相な中年の男は、アイアンホース市長を褒めちぎっている。本当に市長がそんな立派な政治家なのか、うっかり悪口を言うと職を失う(場合によっては命にかかわる)のか、よく分からないが(多分、後者だろう)。

 そして、約1時間後、小部屋に若い男が大急ぎで駆け込んできて、貧相な中年の男にそっと耳打ちした。すると、中年の男はあわただしく立ち上がり、

「お待たせしました。市長が自らこちらに出向かれたとのことです。さあさあ、こちらに」

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