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ザ☆旅行記Ⅷ 愚劣かつ下劣な話  作者: 小宮登志子
第2章 バイソン市への招待
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パターソンの知恵

 理由はよく分からないけど、交渉相手がいなくなったのでは仕方がない。わたしたちは、再び馬車に乗り、屋敷までの帰途についた。

 商談の件は、話としては分かったが、実行するとなると結構大変だと思う。アーサー・ドーン及びG&Pブラザーズ株式会社の隊商を差し向けるにしても、宝石の輸送だけでは効率が悪すぎるし、営業エリアを拡大してその他の物資もついでに輸送しようとすれば、マーチャント商会との間で面倒なことが持ち上がるだろう。

「カトリーナ様、先ほどから、じっと、何を考えておられるのですか?」

「アイアンホースの話よ。直接取引と言われても、簡単にいきそうにないから」

 すると、パターソンは意外そうな表情を浮かべ、

「いえ、カトリーナ様、そんなに難しく考えることはないと思いますよ」

 パターソンは、わたしの耳元でささやいた。一応、話が御者に漏れ聞こえないようにという用心だろう。なかなか抜け目のない男。

 それはともかく、彼の話によれば、帝都に駐在武官として派遣されている親衛隊の交替の際などに、親衛隊員が宝石を帝都に運び込み、帝都で取引をすれば済むとのこと。なるほど、しかも、その場合には、輸送代はかからないから、儲けも大きい。自分では気がつかなかったけど、言われてみれば、当然のことだったりする。

「パターソン、あなた、なかなかやるわね。いい考えだと思うわ」

「お役に立てれば光栄です」

 程なくして、馬車は屋敷に到着した。


 翌日以降も、葬式を構成する一連の儀式が続いた。わたしにとってはどうでもいい話なので、適当にうっちゃらかしてバイソン市まで行きたいところだけど、そうもいかない。

 パターソンは、わたしが出かける際にはいつも、

「カトリーナ様、心は既にここにあらずと見受けられますが、うっかりしていると、意外なところで足をすくわれることもありますから……」

「用心だけは怠らないようということね。分かってるわ」

 わたしは、必要最小限の儀式以外には出席せず、出席した場合でも、可能ならば出席の記帳を済ませるとすぐに戻るということを繰り返した。そのおかげもあって、一連の儀式の間、ツンドラ候にも帝国宰相にも顔を合わせていない。

 プチドラは、少々あきれたような顔で、

「マスター、徹底しているというか、いや、徹底するのはいいけど、ここまでくると、やりすぎというか……」

「構わないわ。ノルマはこなしてるから、お咎めはないでしょう」

 葬式が終われば、すぐにバイソン市に行こう。アイアンホースに落選されたら大変だ。せっかくの設け話が吹っ飛んでしまう。パターソンによれば、アイアンホースの勝ちは動かないだろうとのことだけど、選挙だから何があるか分からない。場合によっては選挙の手伝いなども……

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