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「割に合わないので、辞めます。」 ——元金ランクの天才魔道士、全部計算で解決したかったのに計算外の相棒ができました——  作者: わんだ


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証拠と、3ヶ月の記録

【証拠と、3ヶ月の記録】


 ヴァルディスの訪問から2日後。

 ギルドで——公聴会が開かれた。


 アウレクスの異変隠蔽に関する公式調査。ギルド長が主催。出席者は、ギルド管理部門、アウレクス代表ヴァルディスとレイゼル、そして——証人としてのあたし。


 会議室は上層のギルド本部。長いテーブル。上等な椅子。窓から差し込む光が白い。

 あたしは書類を抱えていた。3ヶ月分の記録。ノート12冊。グラフ23枚。リィナの偵察報告。シオンの掲示板データ。ゴルドの鑑定書。全部。


「イグリット=アシェンド。証言を」


 あたしは立った。テーブルの前に。ヴァルディスの正面に。


「3ヶ月と17日前。わたしはアウレクスの作戦部長レイゼルに、ダンジョン深層の魔物分布異常に関する報告書を提出しました。報告書には、過去6ヶ月間の魔物密度データ、階層間の分布変動グラフ、深層種の浅層出現頻度の加速カーブが含まれていました」


 書類を出した。報告書のコピー。アウレクスに提出したものと同一の内容を、あたしは手元にも保管していた。


「この報告書は受理されませんでした。レイゼル部長に『組織の判断』として却下されました。その2週間後、第7階で冒険者2名が深層種に殺害されました。報告書の予測通りの場所で、予測通りの時期に」


 ヴァルディスの表情は穏やかだった。だが、レイゼルの顔は——蒼い。


「わたしがアウレクスを脱退した後、3ヶ月間にわたり独自に調査を続けました。以下がそのデータです」


 グラフを並べた。


「ダンジョン各階層の魔物密度推移。街道の魔物出現頻度。護衛依頼件数の変動。素材市場の価格変動。村周辺の被害報告。——全て、フィルター劣化という1つの原因で説明できます」


 ギルド長が資料を読んでいる。


「シオン=サルヴェインの素材運搬依頼に伴う街道データ。リィナ=ヴァレスのダンジョン偵察報告。ゴルド素材店の鑑定記録。——個人と民間の協力で収集したデータですが、ギルドの公式統計と完全に一致します」


「それは——ギルドの統計を見てから合わせたのではないか」


 ヴァルディスが口を挟んだ。穏やかな声で。


「時系列で反論します。わたしのノートの最初の記録は3ヶ月と15日前。ギルドの週次データに初めてアクセスしたのは17日前。ノートの日付はインクの酸化度で検証可能です。——お疑いなら、鑑定をどうぞ」


 ヴァルディスが黙った。


「さらに。アウレクスが独自に根源エネルギーの調査を行っていた証拠があります」


 レイゼルが身じろぎした。


「ギルドの資料室で、アウレクスの内部文書を発見しました。——『根源エネルギー利用可能性に関する予備調査』。日付は1年前。アウレクスの章が押されています」


 あたしはコピーをテーブルに置いた。


「分類前の書類の山に紛れ込んでいた1部です。本来ギルドに開示されるべきでない、内部限定の文書。——これが資料室にあったこと自体は管理上の事故ですが、内容は本物です。インクの酸化度、紙質、印章——全て1年前のアウレクスの規格と一致します」


 ヴァルディスの目が、わずかに動いた。

 ばら撒いたわけではない。資料室への混入は、おそらくギルド側の処理ミス。だが、混入の経緯がどうあれ——文書の存在自体は隠せない。


「——それだけではない」


 ギルド長が口を開いた。


「ギルド独自の調査により、アウレクスの内部文書が確認された。根源エネルギーの利用可能性に関する研究計画書。日付は——1年2ヶ月前」


 ヴァルディスの穏やかな表情が——完全に消えた。


「ヴァルディス盟主。——弁明を」


 長い沈黙。


「……我々は、世界の異変に対して独自に対策を講じようとした。それは——ギルドの対応が遅いと判断したからだ」


「対策と隠蔽は異なる。報告書の握り潰しと、冒険者2名の死亡は——対策の範疇ではない」


 ギルド長の声に——初めて、怒りが混じった。


「煌盟アウレクスに対し、以下を通達する。根源エネルギーに関する全ての研究データの即時開示。今後の異変調査への全面協力。冒険者2名の死亡に関する責任調査の受け入れ。——これは通達であり、交渉ではない」


 ヴァルディスが——頷いた。

 穏やかさの仮面が剥がれた顔で。


 あたしは書類をテーブルに置いた。

 3ヶ月分の仕事が——ようやく、意味を持った。


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