表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メフィストの種―悪魔に別の星へ植えられた僕、拠点を守護する聖樹に転生し、 遥か彼方のこの星を開拓していく。  作者: 上部乱


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/12

第9話 とびたつ


「何が起きているのか、見に行きたいかい?」

メフィストは何が起きているかを知っているはずだが、決して教えてはくれない。


僕は小鹿の震える足を必死に支え、

立ち上がらせようとした。


「よしてくれ。

そんな守られるだけの、

か弱い分身で行くつもりかい?」


彼は僕に歩み寄り、

苗木の傍らに片膝をつくと、

葉に止まっていた天導虫てんどうむしをつまみ上げた。


――グシャッ。


あまりに速い手際に、意識が追いつかなかった。


「……何か文句でもあるのかい?」

彼は指で僕の根元の土に穴を掘った。


「……命なんだぞ、それは!」

「私は『衆生平等しゅじょうびょうどう』なんてガラじゃない。

 シッダールタの爺さんとは反りが

 合わなくてね。」

彼は潰れた虫を穴に放り込んだ。


「だが、

 そいつは僕の命を救ってくれたんだ。」


「救っただと?

 自惚れるのもいい加減にしたまえ。

 そいつはただ腹が減っていただけだ。

 そいつが食ったアブラムシの方が、

 よほど多くの命だったろうにね。」


彼はついでに数匹のアブラムシを捻り潰し、

根元に弾き飛ばした。


立ち上がった彼は、足元の土を蹴って、

天導虫とアブラムシをまとめて埋めた。


「違う!

 アブラムシは僕を傷つける存在だ!」


「ふふっ、『汝の敵を愛せよ』……あの上にいる奴は、そう言っているはずだがね?」


「受け入れられない!

お前の口が僕より回ることは証明されたが、

僕の考えが変わったわけじゃない。」


「ふむ。では、意地を張って天導虫に変化するのを拒むのかい? 奴らは極めて優秀なスカウトになるというのに。」


「それに、変化してそいつらを喰らわなければ……次に死ぬのは君自身だよ。」


彼の表情は、まるで王手飛車取りを仕掛けた棋士のように得意げだった。

僕の決断を、愉悦に満ちた目で見守っている。


再生の苗 Lv 3

HP 196 / 200 MP 14 / 36


アブラムシたちは、僕が彼らの生存権を主張したからといって容赦はしてくれない。

同情すればするほど、奴らは凶暴に僕の血液を啜り上げる。


HP 174 / 200

HP 152 / 200

……。


本当は、

これほど長く迷う必要なんてなかったんだ。

ただ、悔しかった。

生命の価値以前に、

こうして悪魔の言いなりになることが「負け」のように思えてならなかった。


「……分かった。僕の負けだ。」

敗北を認め、僕は不本意ながらアブラムシと天導虫の死骸を分解し、吸収した。


経験値:117 / 128


「まだ私は勝ってなどいないよ。

 忘れないことだ――

『Verweile doch! du bist so schön!』

これこそが私の勝利条件なのだから。」


メフィストは、

皮肉にも僕を慰めるような言葉を吐いた。


彼は得意げに「飛車」を食らい、

「王将」を逃がしたのだ。

このゲームをより長く、より残酷に楽しむために。


僕は屈辱を感じながら、

未発達の枝を使って天導虫を孕ませた。


枝の先に透明な小さな粒……

虫の卵が結実する。


孵化までは数秒とかからず、

産まれた瞬間にはすでに成虫となっていた。


「消費したMPを見てごらん。」

メフィストが名誉挽回の機会を得たような顔で促す。


MP 13 / 36

「……たったの6ポイントか。」


「見たまえ!

 これっぽっちの魔力で産まれる命に、

衆生平等しゅじょうびょうどう』などあるはずもない!」

彼は天に向かってあざ笑うように叫んだ。


彼と命の尊厳について語り合うのは、

もう限界だった。


意識を天導虫へと移す。


驚いたことに、虫になるのにそれほど集中力は必要なかった。

この生物が複雑な意識を持っていないせいだろう。


……彼らは、

僕たちとは違う次元のことわりの中にいる。


羽を動かし、宙に浮く。


幸いなことに、昆虫の脳はほとんどが本能で制御されている。

そうでなければ、自力で飛行するなど、

どれほど練習が必要だったか分からない。


【重要イベント達成:万有引力への抵抗】


宙に留まった瞬間、メフィストの左眼がメッセージを弾き出した。


イベント経験値 +20

経験値:9 / 256


レベルアップ!


再生の苗 Lv 4

HP 250 / 250 MP 44 / 44


【新規スキルを選択してください:

 調香 Lv 1 / 成長加速Lv 1/ 結実 Lv 1 】


『人間の魂から錬成された種子……アブラムシ、天導虫、鹿へと化身可能。

この樹の下に埋められた死者は、意外な形で再生すると伝えられている。』




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


この物語を気に入っていただけましたら、

ぜひたくさんおすすめしてください。

そして、少しでも励ましの言葉をいただけたら嬉しいです。

この物語を書き続ける価値があるのだと、

実感させてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ