第8話 マーフィーの法則め!
賭けるしかない。
そして、
この賭けには絶対に勝てると確信していた。
僕は「誘引香」と「刺激臭」を同時に発動し、選択可能なすべての生物リストにチェックを入れた。
残りのMPは2。
スキルは発動したが、
その効果は完全にランダムだ。
メフィストの左眼が表示するインターフェースは、僕のせいでノイズだらけのパニック状態に陥った。
熊がこちらへ歩いてくる。
小鹿の方へと。
近づいた熊は、僕の苗木の匂いを嗅いだ。
その興奮は、先ほどよりずっと落ち着いているように見えた。
自分がどんな匂いを放ったのか、
僕自身にも分からない。
だが、一つだけ確信している。
結末を予測不能な「運」に委ねた時、
幸運値がゼロの相手にとって、
最も望ましくない結末が必ず訪れるということを。
熊は顔を近づけると、
親愛の情を込めて小鹿を舐め回した。
体についた羊水を舐め取り、
臍の緒を噛み切ると、
そのまま横たわって乳の出そうな乳首を差し出した。
小鹿の体の中にいる僕は、
猛烈な飢餓感に突き動かされ、
その乳に飛びついて夢中で啜り始めた。
首だけになったドワーフが、
呆然とこの光景を眺めていた。
彼は眼球を上へと向けた。
「ヤハウェ! 約束が違うじゃないか、
君が手を出すなんて……おや?
今回は君じゃないのか?」
ドワーフの体が歩み寄って首を拾い上げ、
プラモデルのように自分の首の上に据え付けた。
彼は僕を、匂いを放つ苗木をじっと見つめた。
そして、近寄ってその香りを嗅いだ。
「……胎脂の匂いか。
保護本能を呼び起こしたというわけだね。」
「忌々しいマーフィーの法則め!
自分の名をこれほど呪ったことはないよ!」
小鹿は我を忘れて乳を吸い、
苗木の本体も危機を脱したことで弛緩した。
早く瞑想に入り、MPを回復させなければ。
「ふん……私をここまで手玉に取るとは、
なかなか筋がいいじゃないか。」
メフィストが満足げに僕を見た。
何が嬉しいのか分からない。
彼は敗北を味わったはずなのに。
いや、
よく考えれば、彼には何の損失もないのだ。
「不埒な生徒だ……ひっひっひ!」
メフィストが僕の葉を愛でるように撫でた。
「さっきの無茶のせいで、
私の左眼が壊れてしまっただろう?」
確かに、インターフェースの表示は文字化けしたままだ。
「システムアップデートをして、
ついでにバグも直しておこう。」
メフィストが僕の上で指を弾くと、
数億語の悪魔文字が飛び出し、
僕の意識の中に漂った。
視界に映る空も、森も、大地も、
すべてが文字で埋め尽くされる。
彼はプログラマーのように僕の傍らに座り込み、時折ぶつぶつと呟いた。
「よし、新機能を追加だ。
関連性の高いスキルを統合し、
新たなスキルを生成できるようにしよう。」
彼が両手を突き出すと、
空を覆っていた文字が凝縮され、
眼球ほどの大きさの珠となった。
「ハハハ!
これでより楽しくなるじゃないか!」
彼は左眼を再び僕へと埋め戻した。
【重要イベント達成:異種哺育】
イベント経験値 +15
経験値:100 / 128
【スキル統合:
『誘引香』と『刺激臭』が統合され、
新スキル『調香』が生成されました。
データベースに登録されたすべての気体分子を直接生成可能です。】
【新スキル習得:
調香 Lv 1/4。無毒の気体を生成可能。
レベルアップにより揮発性有機毒の生成が可能になります。】
僕はたまらず、すぐにそのスキルを試した。
葉の裏の気孔を全開にし、この悪魔に最もふさわしいと思う匂いを放つ。
彼は僕の意図を察し、
目を閉じて深くその香りを吸い込んだ。
「……ふむ、メルカプタンに硫化水素……。この配合比率は……この礼儀知らずめ!」
メフィストは、エレベーターの中で他人のおならを嗅がされたような顔をした。
その時、隣で授乳していた熊が、
警戒するようにガバッと頭を上げた。
僕の放った「屁」の匂いに驚いたのではない。
僕にも聞こえた。
……それは、人間の話し声だった。
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