第3話 神のひと風吹けば
体の上でアブラムシが繁殖していく。
一匹、また一匹。
三匹産んだところで、親虫は動きを止めた。
四つの刺すような口器が、
一斉に僕の茎に突き刺さる。
彼ら一家は、
恩知らずにも僕の「血液」を啜り始めた。
再生の苗 Lv 1
HP 95 / 100 MP 20 / 20
「……私に助けを求めないのかい?」
メフィストが同情を誘うような目で僕を見ている。
乗ってはいけない。
一度でも彼に頼れば、得るものより失うものの方が遥かに多くなる。
悪魔は僕の沈黙を読み取った。
彼は礼儀正しく微笑み、静かに僕の傍らに佇んでいる。
再生の苗 Lv 1
HP 96 / 100 MP 20 / 20
どうやら、HPは自然回復するらしい。
光合成をしているおかげだろうか。
再生の苗 Lv 1
HP 97 / 100 MP 20 / 20
これくらいなら、
すぐに深刻な影響は出ないはずだ。
メフィストは何も言わず、ただ微笑んでいる。
かつては人間、今は植物。
僕の時間感覚は、
まだこの体に馴染みきっていない。
太陽が三度昇り、三度沈んだ。
その間に奴らは三度繁殖した。
地球のアブラムシは、
これほど増えるのが早かっただろうか?
今や僕の体には六十匹以上のムシが、
隙間なくびっしりと取り憑いている。
再生の苗 Lv 1
HP 54 / 100 MP 20 / 20
「本当に、私に縋りたいことは何もないのか?」
メフィストの声に、
少しだけ苛立ちが混じり始めた。
HP 55 / 100
HP 43 / 100
彼は分かっていない。
今の僕を無欲無求にしたのは、彼自身だ。
樹木は生を求めるが、死を恐れはしない。
「見てごらん、
その無惨に黄ばんだ葉を!」
彼は僕の……右の手のひらだろうか?
葉を優しく撫でた。
指先が僕の体の上を軽くなぞる。
アブラムシ Lv 1 HP 0 / 1
アブラムシ Lv 1 HP 0 / 1
……。
十数匹のアブラムシが死んだ。
新しいメッセージが浮かぶ。
経験値:13 / 32
「見たかい?
指一本で君を救ってやれるのだよ!」
悪魔は得意げに笑った。
HP 47 / 100
体力の減少傾向が、回復へと転じる。
その時、一陣の風が吹き抜け、
多くのアブラムシを吹き飛ばした。
HP 77 / 100
「ヤハウェめ!
それはルール違反だぞ!」
メフィストが天に向かって怒声を上げた。
だが、そんなに怒る必要はない。
吹き飛ばされたそばから、残ったアブラムシが再び繁殖を始めたのを僕は見ていた。
HP 66 / 100
体力の推移が再びマイナスへ。
「おやおや、強欲な小虫どもだ。
君を逃がすつもりはないらしいな?」
気分屋の悪魔は、再び忍耐を取り戻した。
HP 57 / 100
「見てごらん。
あの偽善者の老いぼれが垂れ流した
数秒の憐れみも、
今や引っ込んでしまった。」
HP 48 / 100
「私なら助けられる……君がこの賭けに乗ると、約束さえすればね。」
HP 39 / 100
そうだ。
僕はまだ何も約束していない。
僕の魂はまだ自由だ。
HP 27 / 100
メフィストが失言に気づいたように顔をしかめた。
まるで指し手を間違えた棋士のような表情だ。
HP 22 / 100
アブラムシ、頑張れ……!
あと数分もすれば、
この煩わしい詐欺師からおさらばできる。
HP 14 / 100
一度死んで得た新しい命だが、
未練なんてこれっぽっちもない。
HP 8 / 100
ヤハウェさん、あんたのことはよく知らないけど、さっきのはありがとう。
HP 4 / 100
奇妙な気分だ。
死をこれほど待ち遠しく思うなんて。
HP 2 / 100
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