第15話 狼の仔
種族天賦発動:転生の胎生苗
二本目の枝にある胎盤が成長を始め、膨大なMPがそこへ流れ込んでいくのを感じる。
僕は瞑想に集中し、このプロセスを加速させ、幼体をもっと成熟させようと試みた。
ついに、微細な血管が張り巡らされた果実が成熟し、枝から零れ落ちた。
ノーザンフォレストウルフの幼体 Lv1
HP 28/28 MP 6/6
スキル:追跡 Lv1
僕は、四つ目の身体に意識を割かなければならなくなった。
四つの意識、四つの視点、四つの身体の感覚……。
自分の意識がオーバーロード寸前なのが分かる。
苗木の本体は一時的に無視し、
後で休眠状態に入れなければ。
今は、動くことのできる三つの分身に集中するしかない。
産まれたばかりの狼の仔はすでに立ち上がり、目も開いている。
天性の「追跡」能力は、
今の状況で大きな助けになるはずだ。
鹿の時よりも、
多くのリソースを費やして育んだのだから。
自分でへその緒を噛み切り、
羊水を舐めとり、胎盤を飲み込む。
血の味が口の中で弾けた――
嫌悪感ではない。本能的な食欲だ。
これが狼の、野生の性か。
飢えを感じ、母乳を渇望すると同時に、
肉を咀嚼できることも理解している。
この身体は小鹿よりも成熟し、
天導虫よりも複雑だ。
四肢に力が漲っていく。
追跡スキル発動
地面の匂いを嗅ぎ、ハイランドスピアホーン、エルフ、そして人間の臭いを捉えた。
狼の仔が胎盤を処理している間に、
僕は懸命にMPを回復させた。
あと4ポイントあれば、
もう一房のバナナを実らせることができる。
ようやく4ポイントが貯まり、
バナナが落ちたのを確認して、
苗木を休眠状態に移行させた。
僕は意識を狼に集中させ、
そのバナナを咥えて、すぐさま駆け出した。
待っていろ、今行くぞ!
エルフの村は、苗木のあった場所よりもさらに下流、山麓の扇状地の末端に位置していた。
風調雨順の時は水が得やすく、農業に適した場所だが、災害は何世代にもわたる油断の後にやってくる。
水はここまで押し寄せ、
そしてここに停滞していた。
最初に天導虫を放った時に気づいていた。
村の最も低い場所、
周囲を泥水に囲まれた屋根の上に、
三人の子供が取り残されていることに。
チミダリとアガサは村の縁まで辿り着いたが、一面の泥水を前にして、どこに足を踏み出すべきか途方に暮れていた。
産まれたばかりの小鹿である僕も、
目の前の光景には恐怖を感じる。
だが、この身体は僕の本体ではない。
彼らよりは無茶をする余裕がある。
僕は意を決して、柔らかい泥の中へと跳び込んだ。
悪臭を放つ泥濘が全身を飲み込もうとする。必死に頭を上げ、呼吸を確保する。
だが、一メートルを超える泥の深さ。
その圧力は水よりも遥かに強く、
肺が圧迫されて息苦しい。
チミダリが泥をかき分け、
僕をひょいと抱き上げた。
僕の頭が出ているのを見て、
彼は少し安心したように泥の中へと入ってきた。
アガサもまた、よろめきながら続いてくる。
僕とは違い、
彼らにはたった一つの命しかない。
なんと勇気のある二人だろう。
天導虫に導かれ、
彼らは三人の子供がいる屋根の近くまで辿り着いた。
「アガサ!」
子供たちの中で一番年上の、
十二、三歳ほどに見える少女が、
驚喜の声を上げた。
「ガディリ!」
アガサは困難を極める泥地をかき分け、
軒下から彼らへ手を伸ばした。
「あんな高い場所まで、
どうやって登ったんだ?」
チミダリが困惑したように見上げる。
天導虫の視点では大した高さには見えなかったが、人間や鹿の視点では、そこは絶望的なほどに高い。
ガディリは涙を堪え、
僕には理解できない言語を必死に紡いだ。
「彼女の兄さんと、あの子たちの両親が……
子供たちを屋根へ押し上げた後、
行方が分からなくなったそうよ」
アガサが沈痛な面持ちで言った。
洪水が押し寄せたあの瞬間を、
僕は天導虫の目で確かに見ていた。
一組の夫婦。夫の肩に妻が乗り、
もう一人の若い男が子供を抱きかかえて妻へと手渡す。
そうして次々と、
三人の子供を屋根へと送り届けていた。
その直後、激流が襲いかかり、
その三人は……。
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