第9話 時空より生まれる枝
時空魔法は、万能ではない。
それは三歳になった今、はっきりと理解していた。
(万能に見えるだけで、処理が重すぎる)
時間と空間を同時に扱う魔法は、理論上は最上位だ。
だが実際には、燃費が悪く、制御が難しい。
だからこそ――分解する。
時空魔法の分解思考
俺は、時空魔法を一つの完成品として扱うのをやめた。
時間要素
空間要素
座標固定
対象認識
魔力変換効率
(これ、まとめる必要ないな)
そう気づいた瞬間、世界の見え方が変わった。
まず切り離したのは――空間。
空間魔法との出会い
位置。
距離。
容積。
時間を固定し、空間だけを操作する。
ほんの一瞬、視界が歪む。
手元にあった木片が――消えた。
正確には、消失ではない。
(折り畳んだな)
空間を圧縮し、不可視領域へ退避させた。
意識を戻すと、木片は元の位置に戻る。
(燃費が、段違いにいい)
時空魔法の十分の一以下の魔力で、同等の成果。
この瞬間、確信した。
空間魔法は、独立した体系として成立する。
そして、イベントリー
次に試したのは、さらに危険な仮説。
(空間が折り畳めるなら、“持てる”のでは?)
魔法陣を使わず、イメージのみで構築。
条件は三つ。
自分にのみ紐づく
時間変化を受けない
外部干渉を遮断
――成功した。
視界の端に、半透明の表示が浮かぶ。
【イベントリー:空間収納】
容量:小
安定度:高
魔力消費:極小
(……これは、革命だろ)
物理的重量を無視し、持ち運び可能。
腐敗も劣化も起きない。
この世界の物流、軍事、生活、すべてを変え得る。
(絶対に、他人に知られるな)
俺は即座に封印レベルを引き上げた。
現在のステータス
念のため、今の自分を客観視する。
意識を集中し、ステータスを表示した。
名前:ジャック・フォン・キルヒアイス
年齢:3歳
魔力量:???(測定上限突破)
魔力回復速度:極大
魔力制御:極大
習得魔法
・時空魔法(制限付き)
・空間魔法
・イベントリー(固有派生)
スキル
・完全記憶
・構造理解
・魔力循環制御
称号
・転生者
・観測者
・例外存在
表示を消す。
(三歳児に、これは過剰戦力だな)
だが、後悔はない。
俺の最終目標は変わらない。
時空を超え、元の世界へ帰ること。
そのためなら――
この世界の魔法体系そのものを、作り替えてやる。
それだけの力が、
すでに俺の中にはあった。




