69話 TOBの結果
結果は、数字で出た。
想定取得率――クリア。
市場の反応――過熱せず、冷静。
資金繰り――余力を残したまま完遂。
借り入れは、なし。
信用を切り売りする必要も、なかった。
(……上出来だ)
ジャックは、淡々とレポートを閉じた。
勝負は勝負だが、
これは“殴り合い”じゃない。
会社を壊さず、握る。
その目的は、果たされた。
経営には口を出さない
次に考えるのは、
「これから、どう関わるか」。
未来予測で見た限り――
今の経営陣は、悪くない。
判断は遅いが、誠実。
数字も見ている。
社員を切り捨てるタイプでもない。
(なら、任せる)
ジャックは、
経営に直接口を出さない選択をする。
株主としての立場は持つ。
だが、前に出ない。
圧をかけるのは、
本当に必要なときだけでいい。
兄の顔が浮かぶ
そこで、
ふと、兄の顔が浮かんだ。
現場を知っている。
人を見る目がある。
派手さはないが、嘘が嫌い。
何より――
金の匂いに酔わない。
(社外取締役、
向いてるな)
形式だけの飾りじゃない。
経営陣に対する“安全弁”。
内部の論理に飲み込まれず、
株主の理屈にも引っ張られすぎない。
ちょうどいい距離。
兄に話す前の独白
夜。
ジャックは、
東京の部屋で一人考える。
(……説明、どうするか)
未来予測の話はしない。
異世界の話も、しない。
言うのは、
今ある事実だけ。
・株を取得した
・経営には口を出さない
・会社を長く続けたい
・そのための役割を頼みたい
それで、十分だ。
兄は、
理由よりも「覚悟」を見る人だ。
静かな決意
「これで、
会社は会社として生きる」
自分のためじゃない。
社長のためだけでもない。
社員のため。
兄のため。
そして――
未来のため。
前世では、
何も守れなかった。
今世では、
奪わず、壊さず、
立場で守る。
ジャックは、
スマホを手に取る。
まだ、電話はしない。
(もう少しだけ、
整理してからだ)
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