67話 水面下の下準備
東京の夜。
ジャックは、
モニターに映るチャートを眺めていた。
有名企業。
誰もが知っている名前。
ニュースに出ない日はない。
(……もう十分だ)
ひたすら買い続けた。
目立たないように。
欲を出さずに。
未来予測で見えていたのは、
数ヶ月後に起きる「揺らぎ」。
致命傷にはならないが、
TOBを打てば主導権を握れる瞬間。
ここを逃せば、
二度と同じ条件は来ない。
投資顧問会社
重厚な会議室。
向かいに座るのは、
表に出るプロたち。
「……率直に言います」
顧問の一人が言う。
「個人がここまで仕込むのは異例です」
「ですが、
条件は整っています」
資料が並ぶ。
取得比率。
資金計画。
市場への影響。
想定される反発。
そして――
名前の扱い。
「ご本人は、
表に出ない、でよろしいですね?」
ジャックは、即答する。
「はい」
「今は」
「理由は?」
少し考えてから、答えた。
「今はまだ、名前に意味がないからです」
嘘じゃない。
表に出れば、
配信も、生活も、全部変わる。
今は――
違う。
下準備
水面下で、交渉が進む。
主要株主。
機関投資家。
慎重な根回し。
敵を作らない。
無理をしない。
潰すTOBではない。
抱き込むTOBだ。
市場は、まだ静か。
だが、
内部では空気が変わり始めている。
その日
記者会見。
テレビカメラ。
フラッシュ。
マイクの列。
前に立つのは、
投資顧問会社の代表。
「本日、
当社は◯◯社に対し
株式公開買付け(TOB)を開始します」
ざわつく会場。
「主導する投資家は?」
代表は、落ち着いて答える。
「詳細は非公開ですが、
長期的視点を持つ
国内投資家です」
名前は出ない。
顔も出ない。
だが――
市場は理解する。
これは、
覚悟を決めた“本物”の動きだと。
ジャックは
東京の自室。
配信もしていない。
誰とも話していない。
ただ、
ニュースを見ている。
(……始まったな)
胸は、静かだ。
恐怖もない。
高揚もない。
ただ一つ、確かな感覚。
(もう、戻れない)
だが、それでいい。
前世の自分が、
一度も踏み出せなかった場所。
今度は、
自分の意思で立っている
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