第7話 子供なのに異常な成長速度
異変に最初に気づいたのは、乳母だった。
「……坊ちゃま、首が据わるの、早すぎません?」
独り言のようなその言葉は、しかし確実に周囲へ波紋を広げた。
俺は生後数か月で寝返りを打ち、半年を待たずに座り、周囲を観察していた。
泣くのは必要な時だけ。
眠るのも、回復効率を考えてのこと。
(意識がある分、無駄な動きが一切ない)
赤子としては、あまりにも合理的すぎた。
視線が増える
父フォニアジークは、最初は笑っていた。
「三男は丈夫そうだな。それでいい」
だが、剣の稽古を終えた後、ふと俺を見る目が変わった。
観察する目。
値踏みに近い目。
(辺境伯は、無能を許さない)
それは冷酷さではなく、責任の裏返しだった。
数字が示す異常
俺は内心でステータスを確認する。
年齢に対して――
魔力:29
回復速度:わずかに上昇
(早すぎる)
貴族の子でも、十代で三十を超えれば優秀とされる。
それを俺は、遊び半分で超えようとしていた。
(……これは目立つ)
抑えきれない差
兄ジルフォニアは優秀だ。
ロンドフェストも努力家だ。
それでも、差は少しずつ開いていく。
言葉を覚える速度。
状況把握の速さ。
視線の意味を読む力。
兄たちは「賢い弟」として笑っていたが、ある日ロンドフェストがぽつりと呟いた。
「……ジャック、お前、何考えてるか分からない時がある」
子供の直感ほど、鋭いものはない。
そして、誰かが気づく
屋敷を訪れた魔術師が、俺を見て足を止めた。
「……この子、魔力の“流れ”が見える」
その一言で、空気が変わる。
(来たか)
異常な成長は、必ず誰かの目に留まる。
隠し続けることはできない。
だが、恐れはなかった。
(なら、立場で守るだけだ)
辺境伯家の三男。
価値があると示せば、簡単には切られない。
小さな拳を握る。
赤子の体。
だが思考はすでに――
戦略を組む段階に入っていた。
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