64話 家族会議 ― 最終確認
夜は深かった。
だが、この卓に集まっている者たちは、
眠りを後回しにすることを選んだ者たちだ。
父。
母。
そして、男ばかりの三兄弟。
この場にお義姉さん達の姿はない
ジャックへの配慮である
だが、
家族である理由は、確かにここに揃っていた。
口を開いたのは、ジャックだった。
「次にいつ戻れるかは、分からない」
曖昧に濁さない。
希望も足さない。
事実だけを、置く。
長兄は視線を伏せ、
次兄は短く息を吐く。
母は、何も言わずに聞いていた。
「それでも」
ジャックは続ける。
「必ず戻る。
家族だからだ」
母が、ここで初めて頷いた。
「ええ」
短いが、
揺るぎのない肯定。
「帰ってくる子を、
待たない親はいないわ」
それ以上は言わない。
言葉を足さない強さだった。
父が、場を進める。
「次に持ち帰るものだが」
「具体的な物は決めない」
長兄が即座に続く。
「こちらで再現できるかどうか。
それが最優先だ」
一度きりの奇跡は、
辺境を救わない。
次兄が、現実的に切る。
「道具でも、素材でもいい。
だが、壊れても直せるもの」
「人の手で、
続けられるものだ」
完成品ではなく、
仕組みが見えるもの。
母が、静かに補足する。
「作る人が、
誇りを持てるものがいいわね」
「便利でも、
人を使い捨てるものは要らない」
それは、
暮らしを守る者の視点だった。
父がまとめる。
「飢えを減らすもの。
手間を減らすもの。
時間を生むもの」
「余った時間は、
畑にも、鍛錬にも、
次の世代にも回せる」
辺境伯としての判断。
だが、
家長としての願いでもある。
最後に、
全員の視線がジャックへ向く。
父が言った。
「お前に頼むのは、
買い物じゃない」
「見てこい」
どう作られているのか。
なぜ成り立っているのか。
こちらで再現できるか。
母が、少し柔らかく言う。
「無理はしないで」
「持ち帰れなくても、
覚えて帰ればいい」
「それも、立派なお土産よ」
ジャックは、
短く頷いた。
「分かった」
それで、この家は十分だった。
席を立つ前、
父が言う。
「帰れなくなることは、
考えなくていい」
母が続ける。
「帰る場所は、
ちゃんと守っておくから」
約束ではない。
前提だ。
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