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後悔ばかりの男の逆転人生  作者: れんれん


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53話 投資先を増やす、株を持つ意味

ジャックはいつも通り働いていた。

特別なことは何もない。

書類を整え、確認し、

時間になれば片付ける。

未来予測で巨額の資産を動かしている男が、

いまは一社員として、

黙々と机に向かっている。

「お疲れさん」

背後から、社長の声がした。

「今日はここまででいいぞ」

軽い調子の、

どこにでもある労いの言葉。

ジャックは小さく頭を下げる。

「ありがとうございます」

そのやり取りが、

なぜか少しだけ胸に残った。

(……これが、普通か)

誰かに雇われ、

仕事をして、

成果を出し、

対価を受け取る。

当たり前で、

取り立てて語ることもない関係。

だが、

かつて身分すらなかった自分にとって、

それは奇跡のような日常だった。

帰り道、

スマホで資産状況を確認する。

数字は、今日も増えている。

一極集中だった投資先は、

すでに分散され始めていた。

株。

債券。

指数連動。

一部は長期保有前提。

未来予測がある以上、

短期で稼ぐことはいくらでもできる。

だが、

ジャックはあえて

株を「持つ」側に回っていた。

株を持つということは、

単なる金儲けじゃない。

会社の一部を、

社会の一部を、

静かに引き受けることだ。

潰れれば、損をする。

成長すれば、共に伸びる。

責任は小さい。

だが、ゼロではない。

(投機じゃなく、参加だ)

かつて、

お金に振り回されていた人生。

今度は、

お金と同じ地面に立つと決めた。

増やすために使う。

だが、

支配されないために分ける。

未来を知っていても、

未来に全賭けはしない。

それが、

この世界で生きるということだ。

社長の「お疲れさん」が、

頭の中でふと蘇る。

あの一言は、

評価でも、警戒でもない。

ただの、

同じ時間を過ごした者への挨拶。

ジャックは歩きながら、

小さく息を吐いた。

(……悪くない)

資産は増えていく。

投資先も増えていく。

だが、

自分の居場所も、

確かにここにある。

株を持つ意味は、

未来を当てることじゃない。

この世界に、

「関係者」として立つこと。

ジャックは、

そう結論づけた。

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