閑話 リスナーとして活動再開
ジャックは今日も、リスナーだった。
名乗る名前は変えない。
元の名前のまま。
枠を渡り歩き、いわゆる“枠周り”。
ただし、足取りは軽い。
数字は相変わらず右肩上がり。
チャートを見るまでもない。
少しくらい使っても、桁が変わらない位置まで来ていた。
――昔なら考えられない感覚だ。
次に入った枠。
画面に映る顔を見た瞬間、ジャックは指を止める。
「……あ」
懐かしい。
間違いなく、知っている配信者。
かつて同じ時間帯で、
一緒に数字に一喜一憂して、
伸び悩みを愚痴り合った顔。
向こうは、気づかない。
今の自分を知るはずがない。
だからこそ――
挨拶は、言葉じゃない。
高価なギフト。
派手すぎない。
でも、空気が一瞬止まる額。
画面にエフェクトが走る。
「えっ……!?
○○◯さん!?
ちょ、久しぶり……あの○○◯さん!?」
配信者は一瞬言葉を失って、
それから深く頭を下げた。
「おつ!」
いつもの挨拶
「またくるね」
ジャックは、短く打つ。
ずっと見てただけ
今日は通りすがり
嘘ではない。
“通りすがり”のリスナー。
ただ、それだけ。
ギフトを投げ終え、
静かに枠を出る。
次の枠へ。
また次へ。
「おつ!」
でも確かに“影響だけ”を残していく。
かつて支えられた世界に、
今度は支える側として触れていく。
名前は変わらない。
立場だけが変わった。
そして、数字はまた増える。
金は道具だ。
執着を手放すための、ただの手段。
ジャックはもう知っている。
――
この世界でも、
自分はやり直せる。




