48話 弟の遺品に触れる
――符号しすぎて、逆に怖い――
物置の奥。
埃をかぶった段ボール箱に、
マジックで殴り書きされた文字。
「配信関係」
開ける気はなかった。
今日は、たまたまだ。
配信者としての弟
中から出てきたのは、
古いノートPCと、
何枚かの紙。
紙は、
弟の字だった。
乱雑で、
でも妙に几帳面な文字。
配信者名
そこには、
はっきりと書かれていた。
配信者名
登録していたサイト
サブアカウント
俺は、それを覚えている。
弟が、
恥ずかしそうに、
それでも少し誇らしげに
教えてきた名前だ。
投稿内容
紙には、
箇条書きでメモが続いていた。
・画像配信中心
・顔出しなし
・夜中に更新
・反応があると嬉しい
・過疎枠だけどやめられない
……全部、合っている。
本人以外が書くには、
あまりに生々しい。
暗証番号
そして、
最後の一行。
「この番号で入れる」
馬鹿げている。
試す必要なんてない。
……なのに。
ログイン
画面が切り替わる。
見覚えのあるレイアウト。
弟が何度も愚痴っていた、
あのサイト。
ログイン、成功。
残っていたもの
最後の投稿。
画像一枚。
短い文章。
「今日も特に何もないけど
生きてる」
投稿日――
亡くなる、数日前。
胸が、
ぎゅっと締め付けられた。
理性の崩壊しかけ
偶然?
調べた?
盗み見た?
どれも、
説明としては成り立つ。
でも。
全部、紙に書いてあった通り。
一文字も違わず。
順番すら同じ。
怖さの正体
信じたいんじゃない。
むしろ――
信じたら、
自分が壊れる気がする。
弟が「帰ってきた」なら、
じゃあ俺は
何年、何を悔やんできたんだ?
兄の手が震える
ノートPCを閉じる。
紙を、
元の箱に戻す。
蓋を閉めても、
頭の中は閉じられない。
終わりに
兄は、
段ボールの前に座り込む。
「……符号しすぎだろ」
「こんなの、
信じろって言われてるみたいじゃないか」
誰に向けた言葉でもない。
ただ、
恐怖の吐露だった。




