42話 高卒認定 合格通知が届く日
――紙一枚が世界を変える
ポストに入っていた一通の封筒。
白く、無機質で、感情のない見た目。
差出人を見た瞬間、
ジャックの足が止まった。
高等学校卒業程度認定試験
封を切る指先が、わずかに震える。
合格
文字はそれだけだった。
祝辞も、感情もない。
だが――
この二文字は、これまで積み上げたすべてを
「正しい」と証明する力を持っていた。
「……通ったか」
独り言が漏れる。
異世界で魔法を極めた時より、
この瞬間の方が、ずっと現実的で、ずっと重かった。
相談員が“本気”になる瞬間
その日のうちに、相談員へ連絡を入れた。
「合格しました」
一拍の沈黙のあと、返ってきた声は明らかに違った。
「……確認できました」
「では、次の段階に進みましょう」
“おめでとう”ではない。
“支援します”でもない。
「進みましょう」
それは対等な立場の言葉だった。
面談室。
机の上には、これまでの履歴が整然と並べられる。
・継続雇用
・生活記録
・学習履歴
・高卒認定 合格証
「これで、あなたは」
相談員は一度、言葉を選んでから続けた。
「社会的に説明がつく人間になりました」
「役所は“不幸な人”を助ける場所ではありません」
「制度に合致する人間を処理する場所です」
ジャックは静かに頷いた。
(なるほど……そういうことか)
正社員内定
――立場が変わる通知
数日後。
職場の事務所に呼ばれた。
机の上に置かれた一枚の書類。
正社員採用通知書
条件は現実的で、派手ではない。
だが、そこに書かれている内容は明確だった。
・期間の定めなし
・社会保険加入
・雇用主による身元保証
「君、続けられるよな?」
責任者は、確認するように言った。
「はい」
その一言で、
ジャックは“暫定的な存在”から外れた。
役所の態度が一変する
再び役所。
同じ建物、同じ窓口。
だが、対応はまるで別物だった。
書類を確認した職員が、顔を上げる。
「正社員……確認できました」
「では、こちらへどうぞ」
通されたのは、
以前の“相談ブース”ではない。
正式手続き用の窓口。
呼び方も変わる。
「あなたの場合は――」
「この条件で進めます――」
もはや、
「例外」でも「要支援者」でもなかった。
(……ここまで来たか)
ジャックは内心で、静かにそう思った。
静かな確信
帰り道。
夕暮れの街を歩きながら、ジャックは考える。
魔法は使っていない。
力も見せていない。
それでも――
この世界に居場所が生まれた。
(制度ってのは、
ちゃんと“積んだ者”を見るんだな)
次に進む準備は、整った。




