41話 高卒認定試験当日
――紙一枚で決まる未来
試験会場の空気は、重かった。
誰もが静かで、
だが内側では焦りが渦巻いている。
ジャックも例外ではなかった。
(落ちたら終わりだな)
この世界において、
「学歴がない」は
説明できない過去を意味する。
それは危険だ。
鉛筆を握る指に、
わずかな汗が滲む。
問題が配られる。
――読める。
――解ける。
だが、安心はできない。
(“できる”と“通る”は違う)
時間配分。
記述の書き方。
マークのずれ。
凡ミスひとつで、
すべてが無になる。
試験終了の合図が鳴った瞬間、
ジャックは深く息を吐いた。
(……やれることは、やった)
それだけだった。
役所との正式な接触
――制度の核心
数日後。
相談員に呼ばれ、役所の一室に通される。
机の上には、
彼のこれまでの記録。
・雇用契約(更新済)
・在籍証明
・高卒認定 受験証明
相談員は静かに言った。
「いいですか、ここからが“本題”です」
「国籍問題って、
実は“国籍そのもの”より――」
一拍置く。
「身分の連続性が重要なんです」
ジャックは黙って聞く。
「あなたは突然現れた“謎の人物”じゃない」
「働いて、学んで、更新されている」
「つまり――
“社会に参加し続けている人”です」
書類を一枚差し出す。
「これが、制度の抜け穴であり、核心」
そこにはこう書かれていた。
『一定期間、継続して国内で就労・就学し、
身元確認が可能な者』
「この条件を満たせば、
“仮の身分”が“正式な立場”に昇格します」
ジャックは、初めて確信した。
(……届く)
雇用先からの推薦
――想定外の言葉
その日の夕方。
職場で呼び止められた。
「ジャック君、ちょっといい?」
事務所。
責任者と、もう一人。
「君さ、
真面目すぎるくらい真面目だよ」
軽い笑い。
「で、単刀直入に聞く」
「――正社員、考えない?」
一瞬、言葉が出なかった。
正社員。
それは、
この世界での**“居場所”**を意味する。
・長期雇用
・社会保険
・身分の安定
(……ここまで来たのか)
「まだ若いし、
学びながらでも構わない」
「うちは“続ける人”を評価する」
ジャックは、静かに頭を下げた。
「……前向きに、考えさせてください」
三つが繋がる夜
その夜。
部屋で一人、天井を見る。
・試験
・制度
・雇用
すべてが、
魔法なしで繋がった。
(この世界は、
積み上げた者を無視しない)
それは、
異世界では学べなかった真理だった。
前世では生まれてから国籍、就労、なんて当たり前過ぎて考えたことも無かったな
過去を振り返り家族のありがたさを感じるジャックなのでした。




