40話 継続雇用と学歴補完
――“信用”は静かに積み上がる
雇用契約の更新通知
三ヶ月目の終わり。
作業責任者に呼ばれた。
「ジャック君、来月からも来られる?」
それだけだった。
更新理由も、面談もない。
だがその一言は――
“問題がなかった”という証明だった。
「はい、お願いします」
それだけで、
ジャックの立場は一段上がった。
・短期雇用 → 継続雇用
・履歴に「更新」の文字が入る
それは制度上、
**「信用が途切れていない」**ことを意味する。
(……効くな)
異世界の称号より、
この一行の方が、今は重い。
現場での変化
二ヶ月目に入る頃には、
指示が少し変わった。
「このライン、任せていい?」
新人が入ると、
横に立たされる。
「ここ、こうやると早い」
誰も疑問に思わない。
ジャックは
**“そこにいるのが普通の人間”**になりつつあった。
夜の学び直し
仕事帰り。
ジャックは小さな机に向かう。
通信制の教材。
高卒認定対応。
・国語
・数学
・英語
・社会
(……やっぱり知ってるな)
だが、
点を取ることが目的ではない。
・受講履歴
・修了見込み
・在籍証明
それが欲しい。
提出物は期限厳守。
質問は最小限。
目立たないが、確実。
相談員の一言
月一の面談。
「正直に言いますね」
相談員は資料を見ながら言った。
「今のあなた、
“身元不明”とはもう呼べません」
「働いている
学んでいる
更新されている」
「これ、役所が一番好きな人間像です」
ジャックは少しだけ笑った。
(……なるほど)
“空白”が“履歴”に変わる瞬間
半年が経った。
ジャックの経歴は、こうなる。
・継続雇用(6ヶ月)
・勤務評価:安定
・通信制在籍中
・高卒認定試験:受験予定
誰が見ても、
「事情はあるが、立て直している若者」
それ以上でも以下でもない。
だが、それで十分だった。
ジャックの決意
(力で証明する世界は、向こうにある) (ここは、紙で証明する世界だ)
この世界のルールを、
ようやく完全に理解した。




