31話 帰還して思う、国籍の重さ
この世界の空気は、異世界よりもずっと重かった。
重力の話じゃない。
人が人として存在するための条件が、あまりにも多い。
ジャックは帰還して、真っ先にそれを思い知った。
国籍は「権利」ではなく「前提」
異世界では、力があれば役割があった。
名前があれば立場があった。
生まれがどこであれ、存在していること自体が当然だった。
だが、こちらでは違う。
「国籍があるから、話を聞いてもらえる」
「戸籍があるから、守られる」
逆ではない。
「それが無ければ
そもそも“人として扱われない”」
それは冷たい現実だったが、
同時に合理的でもあった。
名前だけでは足りない世界
名乗ることはできる。
だが、証明できない。
学歴がない
履歴がない
家族関係もない
「誰かが保証してくれなければ
俺は“ただの主張”でしかない」
力があっても、
知識があっても、
制度の外にいる限り、発言権はゼロだった。
国籍が意味する責任
国籍を得るということは、
守られることと同時に――
法に縛られる
義務を負う
行動の自由を制限される
「便利な身分証じゃない
一生背負う“所属”だ」
それを軽く考える人間が多いことも、
逆に、持たない者の不利も、
両方が見えてしまった。
異世界で得た力との対比
「力があっても
所属がなければ使えない」
「所属があれば
力がなくても守られる」
この非対称さに、
ジャックは皮肉を感じつつも、否定はしなかった。
「だからこそ
社会は回っている」
ジャックの結論
国籍は、
ゴールではない。
「これは
スタートラインだ」
自由になるために必要なのではなく、
責任を負う資格を得るためのもの。
だからこそ――
中途半端な形では受け取らない。
「貰うんじゃない
引き受けるんだ」
「世界を越えるより
国籍一つの方が重いな」
「でも……
だからこそ意味がある」
彼はまだ、どこの国の人間でもない。
だが、もう無所属のままでいいとは思っていなかった。




