30話 国籍・戸籍問題――最大の社会的リスク
異世界で得た力は、武器ではない。
だが同時に、**使えば即座に正体が露見する“爆弾”**でもあった。
ジャックは理解していた。
「問題は“使うか使わないか”じゃない
“どう認識されるか”だ」
突然現れる「身元不明の少年」
帰還した瞬間、ジャックはこう定義される。
戸籍なし
国籍なし
履歴なし
この状態は、社会において
犯罪よりも、異常よりも、扱いづらい。
「存在していない人間は
守られもしないし
信じられもしない」
最大の社会的リスクは「説明不能」
力を使うこと自体が危険なのではない。
危険なのは――
説明がつかない形で結果だけが残ること。
偶然にしては出来すぎている
技術としては再現性がない
だが事実として“起きている”
「奇跡は歓迎されるが
理由のない奇跡は恐れられる」
異世界転生者という言葉の破壊力
「異世界から来ました」
この一言で、
社会的立場は即座に確定する。
妄想
虚言
危険思想
要監視対象
「否定されるんじゃない
“分類”される」
分類された時点で、
個人としての交渉権は消える。
ジャックが選んだ現実的解
力は使う。
だが――
個人能力として見せない
再現不能な奇跡として残さない
常に「既存技術・既存理論」の延長に置く
「魔法を見せるんじゃない
“そういう技術があった”と思わせる」
それが、
社会と衝突しない唯一の使い方だった。
戸籍・国籍の再定義
戸籍とは、
過去を証明するものではない。
「未来に対して
責任を負わせるための制度だ」
だから必要なのは、
出自の説明ではなく――
今後、何者として扱うかの合意。
帰還前、最終確認
ジャックは静かに整理する。
力は隠さない
だが正体は明かさない
結果は残す
だが原因は社会側に委ねる
「俺が証明すべきなのは
正しさじゃない」
「危険ではない、という事実だけだ」
帰還前の独白
「世界を救うより難しいのは
社会に受け入れられることだ」
「だからこそ
力は“切り札”じゃない」
「――交渉材料だ」
そうしてジャックは、
世界線を越える準備を整える。
次に越えるのは、
空間でも時間でもない。
社会という、最も硬い壁だった




