第24話 救済という名の恐怖
王都に届いた追加報告は、会議室を凍りつかせた。
「……敵軍一万五千、全員生存」
その一言に、貴族たちがざわめく。
「生存だと?」 「補給が断たれたはずでは?」 「結界に閉じ込められているのだろう?」
報告官は乾いた喉を鳴らし、続けた。
「結界内にて、水と食料が“供給されている”模様です」 「負傷者には治療も施されている可能性があります」
沈黙。
そして、誰かが呟いた。
「……人道措置、だと?」
老臣の一人が額に手を当てた。
「違う……それは“慈悲”ではない」 「生かされているのだ」
王は玉座で静かに目を閉じる。
(殺さず、逃がさず、飢えさせず) (ただ、存在を掌握する……)
「まるで……」
王の側近が言葉を継いだ。
「神の裁定ですな」
一方その頃――
敵国・グランツェル王国。
王城は、恐怖に満ちていた。
「馬鹿な……一万五千が、消えただと!?」 「しかも全滅ではないだと!?」
将軍たちの声が荒れる。
生存の報が、希望ではなく絶望として広がっていた。
「逃げられず、殺されず、ただ閉じ込められている……」 「それは敗北以上の屈辱だ」
魔導長が震える声で告げる。
「結界は……解析不能」 「国家魔導陣を百並べても、再現不可能です」
その場にいた貴族が叫ぶ。
「そんな相手と、どう戦えと言うのだ!」
沈黙の中、若い将軍が口を開いた。
「……侵攻を命じたのは、誰だ?」
空気が変わる。
「いや、王命だ」 「だが、進言したのは誰だ?」
責任の矛先が、少しずつずれ始める。
「最初から無謀だったのでは?」 「辺境伯領が“危険”だという噂は……」
そのとき、密偵からの追加報告が届いた。
「結界を張った存在は……少年」 「十歳前後の、金髪の子供とのこと」
爆笑が起こり――
そして、すぐに消えた。
「……子供?」 「いや……それが本当なら……」
恐怖が、形を持った。
「化け物だ」 「いや、神だ」 「いや……」
誰も、正しい言葉を見つけられなかった。
一方その頃。
張本人であるジャックは、屋敷の一室で薬瓶を並べていた。
「結界内、環境は安定……っと」 「水質良好、栄養も問題なし」
淡々とした声。
「これで死なれたら後味悪いし」
それだけの理由だった。
彼は知らない。
自分の“配慮”が、
王国を揺らし、
敵国を分断し、
世界の常識を壊し始めていることを。
ジャックは瓶を一本持ち上げ、首を傾げる。
「次は……精神安定用の薬もいるかな?」
――その一言が、
どれほどの恐怖を生むかも知らずに。
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